学園設定(補完)

□同級生−その1
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#23

作成:2016/03/25




屋上から見下ろす校庭には、ごちゃごちゃと生徒達の塊が動いている。

卒業式を終えて“学校”という束縛から解放され、気が軽くなったような足取りだった。

それを見つめる銀時の気は重いまま。

胸のポケットの携帯が鳴り、届いたメールを確認する。

“話がある。今、どこだ?”

それをじっと見つめていると、今度は直接電話がかかってくるが通話ボタンは押せない。

しばらく着メロが続いたあと、切れて、またメールが届く。その繰り返しだった。

深い溜め息をついて携帯を胸ポケットに入れたと同時に、後頭部にパカーンと軽い音と強い衝撃。

振り返るとそこには、ついさっき貰った卒業証書を入れる筒を握った土方が立っていた。

「無視してんじゃねぇぇ!!」

先ほどから携帯を何度も鳴らしていた主が、怖い形相で直接乗り込んできたのだ。

「んなもんで殴るか?有り難味がねーな」

悪いのは銀時のほうだったが、小さく逆ギレして頭を擦りながら文句を言う。

それを無視し、土方はすぐさま本題に入ってきた。

「てめー、東京の学校行くってホントか!?」

やっぱりその話か、と銀時は不満そうな顔のまま心で呟く。

誰だバラしやがったの。黙って行くはずだったのに、と。

返事をしない銀時に、肯定ととった土方が眉を寄せる。怒りながらも悲しみを我慢しているような顔だった。

「……なんでだ」

お前の側に居たくないからだ、と銀時は思ったが口には出せない。

同じクラスになって仲良くなっていくうちに、“好きだ”と思う気持ちが“友情”でないことに割と早くに気が付いた。

そんな気持ちを隠し通してでも側に居たいと思って過ごしてきたが、これからは違う。

土方を追いかけて大学に進む学力も気力もなかった。

高校では部活に熱中し彼女をつくることもなかった土方も、大学に行けば可愛い同級生だの大人びた上級生だのに囲まれてすぐ彼女ができるだろう。

それを見たくない、知りたくもない。

だから逃げることにした。

限界だった。目の前で怒っている土方さえ、銀時には可愛く見えて仕方がない。

ムラムラしてぎゅーっと抱き締めたくなる前に、“友情”でない気持ちを知られる前に、逃げるしかなかった。

そう思い返答に躊躇う銀時だったが、その前になぜか土方がぎゅーっと密着していた。

抑えていた気持ちが我慢できず無意識に土方を抱き締めてしまった……わけではなく、抱き付いているのは土方のほうだ。

“友情”を超えた状況に驚かされたのは銀時のほうで、

「……ひ、土方?」

マヌケな声で名前を呼ぶと、さらに強く抱き付いた土方が切ない声で言った。

「卒業したら……てめーに言いたいことがあったのに……聞きたくないから逃げるのか?」

その声から、密着した身体から、伝わってくる“友情”でない気持ち。

勘違いじゃないのは分かる。それは銀時がずっと抑えていた気持ちと同じ物だったから。

「…気持ち悪いかもしれねーけど、俺は…」

逃げようとした銀時に対し男らしくはっきりと告白しようとする土方を、遮るように抱き締め返してやった。

そうされると思わなかった土方の身体が硬直するのが分かったが、ここで告白まで先を越されたらカッコ悪すぎるから、ソレぐらいは言わせて欲しい。

「土方、俺は…」

ずっとこうしたかった身体を抱き締めながら、ずっと言いたかったことをようやく言える。



 おわり



ありきたりな話で、いつもいつもすみません。
考えたときは、「うふふ、いい感じのが出来た」と思うのですが、書いてみるとありきたりな話しだなー、と。
まあ、私に斬新な話は期待しないでください(笑)

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