学園設定(補完)
□同級生−その1
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#20
作成:2016/03/11
3月14日、月曜日。昼休みの教室には甘い香りが漂っていた。
一月前に“クラス女子より(はーと)”とお仕着せなチョコを貰った男子が、お金を出し合いケーキを買ってきてお返しをしたためだ。
「ちぇっ、俺の分も買ってくれたっていいのに」
それを羨ましそうに見ていた銀時に、幼馴染の三バカがからかうように話しかけてくる。
「そういうのはちゃんと金を出してから言うものだ」
「出しましたぁ、300円も!」
「俺たちは500円出してんだよ」
「俺にはその200円が貴重なんだよっ!」
「相変わらず貧乏じゃのう。……じゃったら、例のチョコへの御返しはどうしたがか?」
“例のチョコ”とは、2月14日に銀時の机に入っていたゴ○ィバのチョコのことだ。
高校生……ましてや銀時に贈られたものとして分不相応な品物に、クラスが騒然となったものだった。
結局“何かの間違い”であると証明されなかったため銀時の物になったのだが、お返ししようにも相手が分からない。
「俺は銀時宛だとまだ信じてねーし」
「俺宛ですぅぅ。義理チョコしか貰えなかったからってひがむなチビ」
「んだと、てめーだって……」
「落ち着け、高杉。あれは“おそらく銀時だろう”ということで話がついていただろう」
「そうじゃ。バレンタインの前に金時が“このチョコうまそー”と雑誌を見て言っておったじゃろうが」
「もしそうだったら、それを聞いてたのはこのクラスの女子ってことになるじゃねーか」
高杉がそう言ったので四人は、集まってキャッキャとケーキを食べている女子たちを見回す。
銀時にゴ○ィバのチョコを贈るような物好きを探し当てようとする三人に、銀時は溜め息をつきつつ言った。
「ないないない。あれはなぁ、ごっさ可愛い子が俺に対する秘めた恋心を込めたチョコなんだよ。うちのクラスの女子にそんな奥ゆかしいヤツがいるかっ」
「……それもそうか……」
納得する三人に、その話が聞えていた女子が数名怖い顔をして銀時に詰め寄って来る。
「あらいやだ。私たちにも選ぶ権利があるわよ」
「そうアル!そんなこと言ってると来年はチョコ上げないアルヨ!」
四人が一緒に窓際で怒られているとき、廊下側の一番後ろの席に座っていた土方のところへ一際大きな声が掛けられた。
「トシぃぃ!お待たせっ、道場行こうぜっ!」
両手にいっぱいのパンを買った近藤にそう言われ、土方は弁当の鞄を持って立ち上がる。昼食を食べてから軽く運動するのが彼らの日課だった。
騒がしい声を背中に聞きながら教室を出る。
そして放課後。部活が終わって着替えている土方に、
「トシぃ、明日の数学の小テストってどこが範囲だった?」
おおよそそんなことを気にしなさそうな近藤が聞いてきた。先の中間試験で赤点を取ってしまったために最近は真面目にやっているのだ。
「ああ、それは…………あれ?……」
剣道部の主将が赤点では示しがつかないと協力的な土方だったが、確認しようと鞄を開けて首を捻る。
数学の教科書が入っていない。授業が終わってすぐに入れたはずだったのに。
「どした?教室に忘れてきたか?」
「……かもしれねー。取ってくるから先に行っててくれ」
そう言って土方は教室へ向かった。
うっすらとした夕陽の明るさがあるので電気も点けずに中に入り、机の中に手を入れる。そこには教科書の感触があった。
おかしいなと思いつつ取り出そうと引っ張ったら、何かずっしりとした重りが付いてくる。
教科書の上にはお徳用サイズのマヨネーズがビニール袋のまま乗っていた。
『マヨ!』
病的なマヨラーの土方だったが、いくらなんでもお徳用のマヨを学校にストックはしない。
マヨネーズを手に取ってみると、そこには“WhiteDay”と書かれた白いシールが貼ってあった。
その意味を理解した途端、土方の頬がかーっと熱くなる。
差出人の名前はないけれど、それが誰からなのかすぐに分かった。男の土方がバレンタインにチョコを贈った相手は一人だけだから。
1年のとき仲良くなった銀時とは、2年になってそれぞれの幼馴染が同じクラスになったことでグループが別れてしまった。
離れてみて気付いたのは銀時を友達以上の意味で好きだったということ。
だが告白することなんてできない。せめてもと、銀時が食べたいと言ってたチョコを買ってこっそり机に忍ばせた。
“あれはなぁ、ごっさ可愛い子が俺に対する秘めた恋心を込めたチョコなんだよ”
昼休みに銀時が言っていたことを思い出して更に真っ赤になる。
チョコの贈り主が分かっていてお返しも用意した上で、聞えるようにあんなことを言ったに違いなかった。
「……ちくしょう……」
悔しさと嬉しさをごちゃ混ぜにしたような気持ちを抱えて、土方は文句を言ってやろうと携帯を手に取るのだった。
おわり
即席。なので適当。すみません。
なーんかもっとこう盛り上げられなかったのかなぁ……ねぇ?(笑)