学園設定(補完)
□同級生−その1
17ページ/20ページ
#15
作成:2016/01/02
「じゃあ、終わったらお守り売り場の近くに集合ね〜」
元旦の昼過ぎ、クラスメイト達が初詣と合格祈願を兼ねて集まっていた。
思ったよりも人が多く一斉には賽銭箱まで行けそうにないため、バラけた後の集合場所を決めてそれぞれが人波に紛れて行く。
晴れてはいるが冷たい空気にマフラーで口元を隠しながら土方が列に並ぶと、ひょこひょことその隣に銀時がやって来て、
「土方くん、寒そうじゃね?」
家で着ていたジーンズとシャツ+パーカーの上にコートを羽織っただけの土方を見て顔をしかめる。
そう言う銀時は何枚着こんでいるのやら、身体はやたらもこもこして暖かそうだ。
同じクラスになって三回目の冬ともなれば、銀時が極端な寒がりだというのは分かっているので特にツッコミは入れなかった。
「……冬だからな」
「分かってんならもうちっと温かくすればいいのに」
言いながら銀時は服の中にもぞもぞと手を入れて、すでに熱々になっているのカイロを取り出して土方に差し出す。
「あげる」
「あ?いいよ、お前が使……って、どんだけ持ってんだぁぁ!」
次から次へと出て来るカイロに、やっぱりツッコミを入れてしまった。よく見るとうっすら汗をかいている。
「あ〜、暑かったぁ」
「バカじゃねーのお前」
「だって土方くんきっと寒そうなカッコで来ると思ったからさぁ」
カイロを手渡しながらしれっとそう言われ、土方はこれが自分のために用意されたものだと知った。
そうなれば遠慮するのも申し訳ないと、
「……じゃあ、使う……」
「どうぞ」
照れくさそうに言いながらごそごそと体のあちこちにカイロをしまう土方に、銀時は嬉しそうに笑った。
銀時の優しさも笑顔も、誰にでも向けられるものじゃない自分だけのものだと知っている。
遠まわしに“好きだ”と言われ、それを拒絶しないことで遠まわしに“好きだ”と答えたのは夏の終わり。
両方が遠まわしだったことで明確に付き合ってる的なことがないまま、そんなことにウツツを抜かしてる場合じゃない時期になってしまった。
15分ぐらいゆっくり進んでようやく賽銭箱の前まで来ると、土方は奮発して500円を投げ入れた。
“銀時と一緒に大学に合格できるよう”に願う。余裕の土方とは違い、銀時はかなりギリギリだった。
それでも同じ大学へ行きたいと言われたのが嬉しくて、ずっと一緒に勉強を頑張ってきたのだから叶って欲しい。
チラリと横を見ると銀時がまだ熱心に願い事をしているので、土方ももう一つささやかな願いを付け加えた。
『銀時ともうちょっと付き合ってるっぽい感じになれますように』
そんなことを願った自分に少し恥ずかしくなっていると、銀時のほうも終わったようで待ち合わせの場所に向かって歩き出す。
「なー、何お願いしたんだ?」
銀時が楽しそうに聞いてくるが、さっきの恥ずかしい願いのことは言えるわけがない。
「お、お前は何お願いしたんだよ」
「俺ぇ?俺はぁ、土方くんと一緒の大学に行けますように、と………あと…土方くんと、つ、付き合えますようにって」
真っ赤になりながら初めて“どうなりたいのか”を口にしてくれた銀時に、同じことを願っていたのが余計恥ずかしくなって土方は素っ気ない返事をしてしまう。
「……ね、願いごとは人に話すと叶わないんだぞ」
「ええぇぇええ!?まじでか!」
素直に信じて銀時はショックをうけてしょんぼりと肩を落とした。
その姿に土方は小さく笑うと、銀時の手をぎゅっと握り締める。驚いて顔を上げる銀時。
見つめ合って、なんて恥ずかしいことはできないので、土方は前を向いたまま照れくさそうに言ってやった。
「…でも、俺のほうが叶うから大丈夫だ……ふたつとも……」
始めは意味が分からなかったのかきょとんとしていた銀時も、土方も自分と同じことを願っていてくれたのだと気付いたようだ。
ぎゅっと握り返してくる銀時の手の暖かさに、ようやく土方が目を合わせると銀時は本当に嬉しそうに、
「今年……じゃない、これからもずっとよろしくな」
なんて言い出すから土方も優しく……できるわけもなく。
「大学に合格できたらな」
「おいぃぃ!!土方くんの願いは叶うって言ったじゃん!」
「お前が頑張らなきゃ神様だってどうしようもできねーよ」
「が、頑張るよっ、俺!」
「おう、頑張れ」
照れ隠しでツンデレる土方に強い使命感を持つ銀時に、俺も頑張ろうと思う土方だった。
おわり
クリスマスでやったばかりなので、正月ネタを全パターン考えるのは無理かと思ってたんですが、
なんとかなりそうなので書いてみました。
まあ、相変わらずありがちのたいしたことがない話ばかりですみません。
最初はチューぐらいする予定だったんですが……あれぇ?(笑)