学園設定(補完)

□同級生−その1
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#12

作成:2015/12/22




クリスマスイブの夕方。

クラスメイト達が集まって盛り上がるカラオケBOXの大部屋で、不機嫌そうにしている生徒が一人居た。

眉間にシワを寄せた目の先には、銀髪天パーをもふもふ揺らしながら部屋を出て行く幼馴染の銀時。

音程の外れたアニソンを熱唱した後そそくさと帰ろうとする銀時を他の連中が問い詰め、

「銀時、もう帰るのか?まだいつものアレとかアレとか歌ってねーじゃねーか」

「また今度な〜」

「なんでぃ、ずいぶんご機嫌ですね。もしかしてデートですかぃ?」

「おまっ、今日は何だと思ってんの?」

「ええっ!?マジでデートなのかっ!?おい、銀時っ!」

「待ち合わせの時間だから、じゃ〜ね〜」

というやりとりがあって、楽しそうに部屋を出て行った。

土方はそれを聞いた途端に機嫌が悪くなり声に出さずに悪態をつく。

『なんだソレっ、聞いてねーぞ!あの腐れ天パー!!』

その様子を見た沖田がにやにや笑いながら近付いてきた。

「土方さ〜ん、旦那デートですって。聞いてなかったんですかぃ?」

見れば分かるくせにわざわざ聞いてくる沖田をせっかく無視したのに、近藤が無邪気に畳み掛けてくる。

「えっ、トシも知らない子か?お前ら仲良いのに知らないこともあるんだなぁ」

そう、小学校からの幼馴染で同じ高校に進むぐらい仲が良いのに、デートの話なんて聞いてなかった。

というか、好きな子がいることも聞いていない。“自分”以外。

10月10日の銀時の誕生日に「ずっと昔から好きだ」と言われてから、ドキドキしっぱなしだった自分がバカらしくなってくる。

『…そりゃあ、ちゃんと返事はしてねーんだけど……だからか?俺が何も言わないから、もう他の相手見つけたのかよ……はえーだろコラァ』

本当は、クリスマスに誘われるようだったらちゃんと返事をしようと思ってた。

なのにクラスのカラオケ大会に参加するというので、土方もしぶしぶ参加したのに、“デート”なんて理由で置いていかれるなんて。

いろいろ、いろいろ考えていたら、ムカついてきてしまった。

立ち上がった土方に、沖田が嬉しそうな顔で、

「どこ行くんですかぃ、土方さん」

と聞いてくるので、

「トイレ!」

そう言い返し、素早くコートと鞄を掴んで部屋を飛び出した。

ドアが閉まる間際に、

「旦那によろしく〜」

なんて言われたのですべてお見通しのようだ。

沖田にからかわれたことを苛立ちに加算され、乱暴な足取りで階段を下りて行く。

どこで待ち合わせなのかは分からないが、会う前に問い詰められるだろうか。じゃなければ会いたくもない“デートの相手”を見るハメになる。

『…チクショー……なんで、俺がこんな思いしなきゃならねーんだ!銀時のバ……』

心の中で怒鳴りながらカラオケBOXの入っているビルを出た瞬間、銀色のフワフワが視界の隅に入ってきた。

壁に背中を付けて寒そうに身体を縮めた銀時が、飛び出してきた土方の姿を見てにぃっと笑う。

「おせーよ」

そう言って土方に近付いてくると、手に持ったままのコートを取り羽織らせてくれる。

「……ま、待ち合わせじゃねーのかよ……」

「うん。待ってたよ」

土方が怒るのも驚くのもお見通しで、わざわざ“デート”などと言って出てきたようだ。

今度は悔しくなってむす〜っとする土方に、銀時はさらに嬉しそうに笑う。

「腹減った。何か食いに行こーぜ」

さっきもカラオケで色々食べていたくせにまだ食いたりないらしい銀時が、そう言って先に歩き出した。

銀時の思い通りになるのは癪に障るので、予定していた通り返事をして、これをちゃんと“デート”にしてやろうと思った。

「銀時っ……俺……」



 おわり



即席で考えたクリスマスネタ。まぁ、ありがちっす、はい。
あ、台詞で終わりにしたのはわざとだったんですが…半端に見えますね(笑)


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