学園設定(補完)
□同級生−その1
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#9
作成:2015/10/08
「十四郎、明日暇か?」
ベッドに座って足をブラブラさせた銀時にそう聞かれて、ランドセルを机に置きながら十四郎は答える。
「明日は近藤さんたちと遊ぶ」
「ええぇぇぇ!?」
「……なんだよ、悪いのか」
非難がましい声を上げた銀時に十四郎は眉を寄せるが、負けじと言い返してくる銀時。
「あ、アイツラとはいつでも遊べんじゃん!」
「……お前とだっていつでも遊べるだろ」
マンションの隣室に坂田家が引っ越してきて半年。
挨拶に来たとき両親の後ろに隠れてモジモジしていた銀時に、母親が「うちのこはすごい人見知りなの。仲良くしてあげてね」と言うものだから、世話焼き気質の十四郎は使命感に燃えて仲良くなった。
おかげですっかり懐かれ、お互い両親共働きの鍵っ子のせいもあって家に帰ると一緒に遊んでいた。
唯一一緒じゃないのが、十四郎が小さいころから通っていた剣道の道場の日。銀時も誘ってみたのだが断られてしまったので仕方がない。
ぶすっとしている銀時に、一応聞いてみた。
「明日、なにかあるのかよ」
「……べ、別に……何もねーけどっ」
全然“何もない”言い方じゃなかったが、本人がそう言うので、
「あ、そ」
と十四郎は知らん振り。
すると銀時はますますふて腐れて、ベッドから飛び降りると、
「なんだよ、十四郎のばーかっ!豆腐の角に頭ぶつけて豆腐まみれになれっ!」
訳の分からない捨て台詞を吐いて部屋を出て行ってしまった。
「……まぁ、普通は豆腐まみれになるよな」
納得する十四郎だった。
暗くなった部屋に明かりを点けていると玄関のチャイムが鳴り、そこには銀時の母親が立っていた。
「こんばんは。あれ?うちの銀時来てないの?」
玄関に息子の靴がないのを見てそう言う。居るのが普通だったので、十四郎は昼間のことを話してやった。
「明日遊べないって言ったら捨て台詞吐いて帰った」
「あ〜〜……そっかぁ」
微妙な笑みを浮かべた母親には、銀時の不機嫌の理由が分かっているらしい。
「あのね、明日は銀時の誕生日で、土曜日だしどこかに出かけようかって話してたのに仕事で行けなくなっちゃってね……十四郎くんと遊ぶからいいって言ってたんだけど……」
すごく寂しいのに働く親の前で平気なフリをする。それは十四郎も同じだったから、銀時の気持ちがよく分かる。
「あ、気にしないでね。十四郎くんもお友達との約束優先してあげて。あ、これ、買いすぎちゃったから夕食にどうぞ、って伝えて」
そう言って持っていた揚げ物の良い匂いの袋を十四郎に渡し出て行こうとする母親を、
「…あの、おばさんっ」
呼び止めて内緒話をする十四郎だった。
翌朝。何度も謝りながら仕事に行く両親を見送り、銀時はソファに転がってテレビを点ける。
土曜日の昼間は何も面白い番組がなくて、テレビゲームを点けてみたがそれもすぐに飽きて消してしまった。
このマンションに引っ越してくるまでは一人遊びが普通だったのに、最近はずっと十四郎がいたから一人で遊ぶ方法を忘れてしまったみたいだ。
『誕生日なのに』
そう思って悲しくて涙が出そうになったとき、玄関のチャイムが鳴った。
一人で居るときはドアを開けない約束なので、扉の前で問いかけると、
「……はい?」
「俺〜、ドア開けろ〜」
十四郎の声が聞えて慌ててドアを開ける。
そこには両手いっぱいにいろいろ抱えた十四郎が立っていて、驚いている銀時にその内の1つを差し出す。
「ほらっ」
甘い匂いのする箱。
「……なんだよ。道場のやつらと遊ぶんじゃなかったのか」
嬉しいくせに昨日の不機嫌を引っ張ってそう言った銀時に、十四郎も口を尖らせて言い返してやった。
「おまえも誕生日ぐらい素直に言えよなっ。おばさんにお金貰ったからいろいろ買ってきたし、しょうがねーから遊んでやるよ」
飲み物、お菓子、お昼ご飯。それにケーキ。
十四郎が親と出かけて買ってきてくれたらしい物を受け取りながら、
「……別に頼んでねーし」
銀時はまだそんな強がりを言うので、
「あ、そ。じゃ、帰る…」
十四郎も素っ気無くそう言ってみるが、銀時が一瞬ものすごく寂しそうな顔をしたのを見逃さなかった。
家の中に入ってドアを閉め、
「…わけねーだろ、銀時のばーかっ」
昨日の仕返しにそう言ってやった。
ここで銀時が言い返せばまた喧嘩になってしまったかもしれないが、さっきまで一人ぼっちだったところに十四郎が来てくれて嬉しくて笑ってしまい、そのまま仲直りすることができた。
リビングのテーブルに銀時の好きな食べ物を全部並べた超豪華な二人きりの誕生日パーティ。
「銀時、誕生日おめでとうっ」
「ありがとう」
嬉しくてやっぱり涙が出そうになった銀時だった。
おわり
まさかの小学生の同級生ネタ!
当然ながら全然銀土じゃなくてごめんなさい。子供だからね、恋愛感情はまだってことで(笑)