学園設定(補完)
□同級生−その1
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act.2
「じゃあ、みんなで“ハピバ・トシ カラオケパーチー”にしようぜ!」
そう近藤が提案したのは、GW直前の昼休み、土方の誕生日プレゼントを持ってきた女子達の間にピリピリした空気が流れ始めたからだった。
本当は当日に渡したかったけど、というセリフを皮切りに、当日に会いたい、私も、私も、と騒ぎ始め、近藤が部活だからと助け舟を出したら、じゃあ部活のあとに学校で少しだけでも、私も、私も、と言い出し、結果文頭のセリフになった。
『えええぇぇぇえええ!?』
と心で叫んだのは当事者である土方だけで、周りは一気に盛り上がりだした。
近藤がそんな提案をした理由は、その場を丸く治めるため、ともう一つあるのを知っている。
土方が“差し入れなら受け取る”と言い出してから、部活前後にも顔を出す女生徒が増え始めた。
今まで男臭かった部活風景が華やいで、浮き足立った野郎たちが『土方をダシにして女の子達とお近づきになりたい』と思い始めたのだ。
土方のファンにお近づきになってどうすると思えるが、事実、そうじゃない女生徒も増えている。
高校生活に潤いを求める仲間のために近藤は一肌脱いだのだった。
女生徒に同数の男子生徒となるとけっこうな人数になりそうなので、
「全員でカラオケとか無理じゃねーの」
という、土方のせめてもの抵抗は、
「大部屋、予約しやした」
携帯片手に沖田がにやりと笑って無駄にしてくれた。普段だらけているくせに、土方が嫌がりそうなことに対しては行動的なのだ。
目的はどうであれ“土方の誕生日を祝う”であるため断ることもできず決定してしまった。
5日。
部活は案の定ちっとも身に入らない状態で終わった。
ハメを外しすぎないように制服着用だけは譲らなかった土方のおかげで、地味なエヅラの集団がガヤガヤと移動を始める。
「あれ坂田じゃね?」
隣にいた近藤がそう言ったのでその視線の先に目をやる。
校舎の渡り廊下に白い髪の男子生徒が歩いていて、そんな目立つやつはアイツしかいない。
“なんでも屋”の部活動で登校していたのだろうか。
「最近お前ら仲良いよな?あいつも誘ってみようぜ」
「え…ちょっ…」
「お〜いっ、坂田ぁ!!」
銀時が足を止めてこっちを向いたので、土方は一瞬近藤を止めようとした手を握り締める。
「これからトシの誕生日パーチーでカラオケ行くんだけど、お前もどうだ〜っ?」
「…あ〜〜……俺はいいわ」
そう答えて軽く手を振ると校舎に入っていった銀時に、土方は少し複雑だった。
ほっとするのと同時に寂しいとも思ってる。
銀時と初めて話をしてから半年近くが過ぎていた。
女生徒から自分宛の手作りプレゼントが銀時の手作りだったと知り、それをパンや菓子の差し入れにしてくれと頼んだのは、たぶん銀時のためでもあった。
週に二度ぐらいお昼に待ち合わせ、差し入れの一部を銀時に提供するのは今でも続いている。
クラスも選択授業も違うから、銀時と会話するのはこのときぐらいのものだったが、土方はその時間がすごく楽しいと思い始めていた。
もっと仲良くなりたいんだと思う。
だったらメルアドでも交換して休日にでも遊べばいいのに、一風変わった出会い方をしてしまっただけに、銀時が友達関係を望んでいるのかも分からず何もできないでいた。
そんな風に悩んでいたから、急に一緒に遊ぶことになったら焦るし、断られてほっとしてる。
が、誕生日なのに何も言ってくれない、と寂しくも感じた。
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