学園設定(補完)

□逆3Z−その1
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登校したばかりの自分の席で銀時はしょんぼりとうなだれていた。

『無視されています』

あれ以来、登校、授業中、休憩中、下校、どの時間で見かけても目も合わない。

ついさっきも、無視されてると自覚しながらも頑張ってあいさつしたのに、路上で配ってるティッシュを受け取るぐらいのリズムで通り過ぎていかれた。

普通告白されたら少しぐらい意識するものじゃないだろうか。

『……まぁ、男子生徒に告白されたってキモイだけだよな。そりゃ無視するわ、するする』

理解して納得して諦めようと思うのに、顔を見るとまた好きだと思ってしまう。その繰り返しだった。

さんざん悩んで悩んで悩んで悩んで………銀時は開き直ることにした。


好きなものは好きなんだから諦めない!ずっと先生を見ていたい!でも無視されるのはへこむのでこっそりと!


ポジティブなんだかネガティブなんだか分からない状態で、銀時の作戦が始まった。

これ以来、登校、授業中、休憩中、下校、わざと土方の目に止まるように行動する。

この目立つ頭のせいでこそこそしても意味が無いので、銀時がいなくなったと油断したところを見つめる、なんとも情けない作戦だ。

けっして正面からは見れない(こっちも見つかるからだ)けど楽しかった。





2週間ほど見ていて気付いたのは、意外とよく笑うこと。

仕事は見た目通り真面目で早いし、新米で雑用もいろいろやらされているが卆なくこなしている。

そして体育教師の近藤と仲が良いようで、昼食や休憩を一緒にとったりしていた。

『……なんかあいつと一緒のときだけいつもより楽しそうだ……』

それが気に入らなくて、土方に気付かれないように細心の注意を払っていた銀時に隙が出た。

食堂で昼食をとっていたら、向かいに座る近藤が小声で言った。

「坂田ってお前のクラスだったよな、あの白い髪の」

近藤の口から出てくると思ってなかった名前だったので一瞬言葉に詰まったが、土方は平常心で答える。

「………そうだけど」

「なんかあったのか?あいつと」

「な、なんでだよ」

「最近よく見かけるんだよな、お前と一緒にいると」

「あ?」

「お前に見つからないようにしてるけど、俺からは見えちまうんだよ、あの頭だし」

「!?」

近藤は楽しそうにしているが、笑い事じゃない。土方は振り返ってみたが白い頭は見つけられなかった。

「あ〜あ、俺に気付かれたのに気付いて隠れちまった」

土方の慌てぶりをみて“何かあった”と確信して残念そうに言う近藤に、とても相談はできない。

『男子生徒に告白されて、それが本気みたいだったからずっと避けてるなんて言えねー』

最初はからかわれたのかとも思ったが、あのときの態度とあのあとの態度で本気なんだと気付いた。

だったらビシッと言って断ってしまえばいいのに、それもし難い理由がある。

第一に副担任を務めているクラスの生徒であること、第二に担任である巳厘野から頼まれた生徒であったことだ。

見た目、それに家庭の事情。高校にもなると家庭環境がどうか細かく詮索するようなことがないため、巳厘野も詳しく知らないようだが1人暮らしで保護者が祖母になっている。

一年間問題はなく逆にとても良い生徒だったらしいが、時折見せる寂しげな顔が気がかりだと言われていたのだ。

正直言えば、そんな生徒は面倒くさい。

巳厘野に懐いているならあまり関わらずに2年間やり過ごそうと思った早々に告白なんてされてしまい、避ける以外に思いつかなかった。

だいたい銀時だってあの時まで土方を意識していなかったはずで、告白も勢いだったのだからすぐ無かったことになるだろう。

実際に数日後にはこちらを見なくなったし、諦めたと思っていた。


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