学園設定(補完)
□逆3Z−その1
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風呂から上がった土方は、そのまま冷蔵庫からビールを2本持って戻ってきた。
銀時の隣に座り、空けたビールを手渡してくれる。
土方からは風呂上りの良い匂いがしてるが、二人の間にイチャイチャしにくい隙間を開けられてしまったので、銀時も諦めざるを得なかった。
2人のことについてお互いが触れないまま、テレビや学校の話で時間は過ぎていく。
気が付くともう0時近くで、土方が空き缶を手に取り立ち上がりながら言った。
「そろそろ寝るか」
「…じゃ、俺ここで寝るから。なにか……」
このままこのソファで寝ようと思うが時期的にまだ寒いので、毛布か何か借りようとした銀時の言葉を土方が遮る。
「なんでだ?」
「…え…」
銀時をじっと見つめる瞳は、分かってないわけでもなく、恍けてるわけでもない。
照れたり赤くなったり銀時に「可愛い」と言われる土方じゃなく、みんな分かっている大人の顔で言う。
「一緒にベッドで寝たらいいだろ」
しかし銀時も一度諦めたものを素直に喜ぶことができなくて眉を寄せて言った。
「……無理……」
「なんで」
「……一緒になんて寝れない……我慢できねーし……」
土方の口からちゃんとした承諾が欲しくてそう言ったのに、返ってきたのは驚愕の言葉。
「今更だろ。準備万端のくせに」
「………え…あ? なんでっ…」
「レシート見た。金払おうと思って」
にやっと笑った土方に、銀時の顔がみるみる赤くなる。タイミング的にレシートを見れたのは銀時が風呂に入ってるときだ。
あれからずっと銀時の(いろんな意味で)“切ない気持ち”を分かっていて焦らしていたらしい。
「……せ、せんせぇぇっ……」
恨みがましい銀時の視線と声に、土方は小さく笑いながら背中を向けて寝室へ歩き出す。
遅れてその後を追う一歩ごとに悔しい気持ちは冷めていって、銀時はずっと不安で確かめたかったことがあったことを思い出していた。
このまま抱いてうやむやにしたくなかった。それが大人の関係なのかもしれないが、銀時の時間は5年前で止まっているのだから。
寝室の扉の前で立ち止まったまま動かない銀時に、察した土方が戻ってくる。
「…先生……俺、聞きたいことがある……」
「…うん…」
『なんで俺を置いて行ったの?』訊ねても、事故で居なくなった家族と同じく、答える人は居なかった。
「…5年前……先生が俺のために姿消したこと分かってた。でも…1人でいると…ときどき、なんだけど……ホントに俺がいらなくなったんじゃないかって……俺のこと鬱陶しかったんじゃないかって……何度も考えた」
だけど家族と違って土方は生きていて、居場所も知っていて、教師になれば会いに行ける。やり直して幸せになることを想像できる。
「……辛いのに、どうしても嫌いになれなくて……」
呼びかけたら笑ってくれる夢ばかり見ていた。
「……ずっと…ずっと、好きだった」
土方が見ていた夢も、ようやく目の前に戻ってきた。
「先生……もう一度俺と…付き合ってくれる?」
「………まえ……」
「え?」
「……もう名前で呼んでいい」
卒業式の翌日、銀時が妄想して床を転げていたとおり、土方は恥ずかしそうにそう言ってくれる。
練習や心の中では万全だったのに何度かつまずきながら、やっと本人の前で呼ぶことができた。
「……十四郎……」
ふわりと土方の腕が銀時の首に回り、
「銀時……俺も、ずっと好きだったよ」
耳元でそう囁かれ、泣きたいぐらい嬉しくて銀時も土方の背中に腕を回して抱き締める。
昼間学校で“懐かしさ”だけで抱き合ったときとは違う、“愛しくて”熱い身体。
土方が次の行為を求めて頬に唇で触れるから、少し身体を離し引き寄せられるように唇を重ねた。
5年分の想いを交わす。
余談、「買い物が無駄にならなくて良かった」と言ったら十四郎に蹴られた。
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はわぁぁぁぁ、ようやく終わったぁぁぁぁ。
なんつー長いモノを書いてんでしょ、おかしいな。
漫画でなんか絶対描けなかったよコレ、描けるわけないよコレ(笑)
いえ、他の作家さんの話よりは断然短いんですけどねコレ。
実はおまけみたいな短いネタがいくつかあるんですが、
今はこの達成感の余韻を味わいたいのでここで終わりとします(笑)
いつか追加できたらいいな、という感じで。