学園設定(補完)
□逆3Z−その1
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「…やっぱりこっちがいいな…」
「ん?」
「二年参りじゃなくて、二年えっち…いてっ」
ベッドの中でふざけたことを言う銀時の頬をつねったあと、酒も残っていたせいか土方はすぐに静かな寝息を立て始める。
その寝顔を見ながら湿った身体を抱き締めて、銀時は現状をかみ締めた。
『先生は可愛いし、エロいし、面白いし……ホント、先生と付き合えて幸せだなぁ……』
そのまま目を閉じた銀時は、少ししてバチッと目を開けた。
『…あれ……付き合ってるんだよね?…確かに“付き合って”とは言ってないけど……えっちもしたし……こんなのもう付き合ってる…よな?』
腕の中の土方を見つめて、どんどん自信のなくなっていく銀時だった。
翌日は、実にだらだらとしたお正月を過ごした。
お節と銀時の作った雑煮を食べていたら、
「明日は友達と新年会だから今日は帰る」
と言い出した土方を慌てて引き止める。
昨夜湧き上がった疑問を解決しないことには、帰すわけにはいかないのだ。
このままさりげなく「付き合ってるよね?」と聞けばいいだけなのに、一晩悶々と考えている間に、否定されたらどうしようと恐怖心が沸いてしまったのだ。
「あ、あのさっ……や、やっぱり初詣行きたいなっ」
「混んでるだろ」
「明日の朝に行かね?朝なら空いてるかもしれねーし…だから、もう一晩……」
躊躇うようにそう言った銀時が寂しがっているように見えて、土方は小さく息をついて笑う。
「分かった。じゃあ明日にする」
土方が自分のわがままに答えてくれるだけですごく嬉しい。たとえ付き合ってなくてもこのままでいいんじゃないか。
そんなことを考えながら、銀時は結局聞くことができないでしまった。
早朝の神社は人気が少なく、その分寒さが素肌に突き刺すように痛い。
賽銭箱にお金を入れて、手を合わせて目を閉じている土方を見てから、銀時も同じように目を閉じた。
昨日からずっと悩み続けている事を、念入りに神頼みしてみる。
銀時があまりにも真剣に長いことお祈りしているので、神社の階段を降りながら土方は聞いてみた。
「何をお願いしたんだ?」
そう言われて咄嗟にどんな言い訳をしようかと考えたが、今なら一番聞きたいことを聞けるんじゃないかと銀時は思った。
「……先生と付き合えますように、って」
うつむき加減にそう言いにくそうに応えた銀時は、昨日帰ると言った土方を引き止めた時と同じ顔をしている。
土方もようやく気がついた。
確かに“付き合う”という明確な言葉はなかったが、クリスマスイブからそのつもりだった自分。
たぶん銀時もそう思っていたのだろうが、言っていないことに気付いたら不安になってしまったのだろう。
おそらく今も、何も言わないでいる土方にぐるぐるいろんなことを考えているだろう銀時に、少し尖った声で言ってやった。
「……お前、他にも付き合いたい先生がいるのか」
至極遠回しな、それでも自分に向けられた確かなモノに、銀時が笑う。
その笑顔が泣き出しそうだと思った瞬間、銀時はパッと顔を上げて叫んだ。
「あっ!お願いはもう叶ってたから、他のに替えてもらってくる!」
「出来るかぁぁ!」
引き返そうとする銀時が、あまりにもいつもの銀時だったので、土方はやっぱり可愛くないと思うのだった。
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後回しにしようと思っていたんですが、
ネタメモ見てたら書そうな気がしたので続きになりました(笑)
付き合う編ですね。
Act.5、6にも続くんですが、両方短いです。
もうAct.1で決着がついてる話なので、全部閑話みたいなもんです(笑)
初詣とか行かないので変なところがあっても流してください。
文章も長くしたくなくて頑張って減らしてるんですが、
やっぱり微妙に長くてうざかったらごめんなさい…。