学園設定(補完)

□逆3Z−その1
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Act.4


坂田銀時はテーブルに置いた携帯電話をじっと見つめていた。

電話番号を教えてからすでに5日が経過していて、もしかして土方からかけてきてくれるかも、と期待してみたがそれは無駄に終わった。

土方の立場から考えると生徒にそういう意味での電話なんか出来ないだろうし、向こうも銀時からの電話を待ってるのかもしれない。

このままじゃ新年の挨拶が最初の電話になってしまう。

『俺は、先生と一緒に新年を迎えたいんだぁぁああ!』

気合を入れて携帯電話を手に取ると、登録してあった土方の番号を押した。

数回のコール音のあと、電話に出た土方の声は久し振りで一気に気分が高潮する。

「はい」

「先生っ…俺、です」

「うん」

急に敬語になった銀時が可笑しかったのか、電話の向こうで土方が小さく笑っている感じだった。

「…あの、さ………一緒に二年参り行かね?」

「二年参り?お前んなもん行ってんのか?」

「………じゃなくて、先生と行きたいんだけど」

「んー………めんどい」

断言した土方に、銀時は見えてないのでがっくりと項垂れる。

『頑張って電話したの分かってんじゃん。デートのお誘いじゃん。なのに“めんどい”って』

だがここで諦めてしまっては、“新年を2人で迎える”夢が断たれてしまう。

「…じゃ、じゃあ…」

「お前んちで鍋なら行ってもいい」

何か良い案がないかと考えている間に、土方の方から提案された。

「! お、大晦日!?」

「二年参りは大晦日だろう、普通」

「うん!じゃあ買い物も一緒に行って材料選ばね?」

「そうだな」

順調に進む計画に、銀時はハッと気が付く。

『もしかして先生は夜じゃなく昼間のつもりだったりして。そしたら夜には帰っちゃって、やっぱり年越しは一緒にいられないかも!』

そう思ってちょっとドキドキしながら時間を確認した。

「な、何時にする?」

「んー…大晦日だし夕方は混むのか?少し遅いほうがいいかな」

『夜でした!』

2人とも大晦日のスーパーに行ったことがないので良く分からないから、少し遅い7時に決めた。

鍋なら切って煮るだけだし、夕食は遅いほうが大晦日的に盛り上がりそうだ。



予想通り7時のスーパーは人が少なめだった。

それでも誰か知り合いに会わないかと思案したためか、

「……先生……眼鏡っ……」

「コンタクトだよ……学校では使わないけど……変か?」

「ううんっ、可愛いですっ!!」

「………アホか」

土方はいつもの野暮ったい眼鏡ではなくコンタクトを着けているようで、銀時が一目惚れした可愛い土方が可愛い私服で隣に立っている。

変装(?)のためだけかと思われたが、銀時に可愛いと断言されてそっぽを向いた頬が少し赤いから、それだけじゃなかったのかもしれない。

「なんで学校でしねーの?可愛いのに」

「面倒なんだよ。手入れも、お前みてーなこと言うやつも」

素顔の土方はいつもより少し童顔で、確かに俺“以外”に可愛いという奴がいるのは面倒だな、と銀時は勝手に解釈。

普段着けないというのは本当らしく、時々慣れないコンタクトに目を瞬かせている。可愛い顔が見えなくなるのは残念だけれど、部屋に戻ったら眼鏡にしたほうがいいようだ。


カートにカゴを乗せて、野菜売り場から順に回りながら材料を決めた。

余計なものを入れようとする銀時と、それを阻止しようとする土方でキャッキャと騒ぎながら買い物できるのが楽しかった。

その間も、銀時には悩んでいることがある。

こんな時間だけれど念のため、鍋が終わっても先生に帰られないためには、という方法だ。

帰る手段はいろいろあるので、土方が帰りたくないと思える方法を考えていると、缶ビールが山積みにされているのが見えた。

『これだ!』

「先生、ビール……」

6本入りの缶ビールのパックに手を出そうとしたら、その手をビシッと叩かれた。

「未成年だろうが」

超速攻で真面目な土方の言いっぷりに、銀時はわざとらしく落ち込んで見せる。

「…“先生飲む?”って聞くつもりだったのに……未成年って、どうせ自分は酒も煙草もやってたくせに…大人ってずるい」

銀時の言うことに反論できない土方は、ごまかすように銀時が取ろうとしたビールとは違う銘柄のパックを手に取った。

「………俺はこっちのほうが好きなんだよ」

酒を飲んだらもう帰らないだろうと、銀時は笑って、

「1つのでいいの?足りんの?」

そう言うので、土方はちょっと考えてもう1パックカゴに入れる。ああは言ったものの、きっと銀時も飲むことになるんだろうと思ったからだ。


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