学園設定(補完)
□3Z−その1
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#5 2015/05/12
昼休みの校舎裏。銀八は重い足取りで歩いていた。
最近校舎内で煙草の吸い殻の発見が増えているので、昼休みに教師が構内を巡回するようにとお達しがあったのだ。
『めんどくせーなぁ。ダメだダメだ言うから吸いたくなるんだろーよ、ガキどもも』
常日頃煙草をくわえ、生徒の見本にまったくなってない銀八なので、余計に乗り気がしない。
ポケットをぱたぱたと叩いてみたら、飴に棒が刺さった“ペロキャン”が入ってた。
面倒くさくても乗り気がしなくても、とりあえず給料分は働かないとならない。
紙を破って飴を口に入れると、
『俺だったらこのへんで…』
とやってきた裏庭の一角、壁と植木に隙間があって人通りも少ない校舎の影で、煙草を吸ってる土方に遭遇。
「……」
「……」
咄嗟のことで銀八も反応ができず、土方も煙草を隠せず、2人で固まってしまった。
スイッチを入れたのは背後から銀八を呼ぶ服部の声。
「坂田〜?」
銀八は土方から煙草を取り上げると、自分がくわえていた飴を土方の口に突っ込み、煙草は自分の口にくわえた。
間一髪、銀八が一吐きしたところで服部が顔を出す。
「あ、てめー、煙草の見回りに煙草吸う奴があるか………あ?土方?」
服部にも見つかったが、飴をくわえたまま土方はまだ動けないでいた。
すると銀八が服部の肩を叩きながら、
「まぁまぁ、そっとしといてやれよ。いつも“甘いものなんか食いません”みたいにカッコつけてるくせに、隠れ“ペロキャン”してんだから」
そう言って、ぷぷぷと笑う。
服部は土方が飴の棒をくわえているのを見て、呆れた顔をした。
「…お前……普通に食えよ」
そして銀八に誘導されるようにして2人で姿を消してから、土方は深く息を吐く。
最初に見つかったのが服部だったら完全にアウトだった。
土方としてもこんなところで吸いたくはなかったが、先週吸っているところを近藤に見つかり「煙草はダメだっ」と目を光らせていて、さっと吸ってさっと戻るつもりだったのだ。
銀八の適当さやいい加減さは苦手だったが、今回は助けられた…ことになるのだろう。
飴を口から出し、
『咄嗟とはいえ食ってた飴をくわえさせるか?』
と眉間に皺を寄せるが、捨てるのも今更かともう一度口に入れる。
「甘っ」
放課後、学校の門に立っている土方を見つけて銀八が声をかける。
「よう」
「……さっきは…どうも……」
あのあと教室で無視してくれたのは、こうやって待ち伏せするつもりだったからのようだ。
『真面目だなぁ』と思いながら、
「どういたしまして。もう見つかんなよな〜、俺がめんどくせーから」
やっぱり適当なことを言う銀八に、土方は新しく買ってきた“ペロキャン”を差し出した。
「……これ…返す」
それを見て、『やっぱり真面目だ』と笑って銀八はくわえていた煙草を手に持ち、渡す仕草をする。
「俺も返すか?」
「…いりません……じゃ」
土方は少し不機嫌そうな顔をして、そのまま走って帰ってしまった。
普段懐かない生徒の可愛いところを見せられてしまうと、『ガキは単純でいいなぁ』とさらに怒らせそうなことを考える銀八だった。
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短いです…“切っ掛け編”みたいなものだから…
かと言って続きがあるかといえばそうでもなくて(笑)
飴とタバコを交換するシーンが書きたかっただけです。てへ。