原作設定(補完)

□その14
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「土方く〜ん、いい子だから出ておいで〜」

猫撫で声で銀時が呼びかけるが、猫になっていても騙されてくれなかった。

これで本当に元に戻ったらみんなの前で告白するようなものだから、土方としては余計に出て行けないと思っているはずだ。

なので銀時としても、恥ずかしいのを我慢して最期の手段に出るしかない。

「出てこないと、銀さんと土方くんのラブラブメモリーを1つづつ喋っちゃうよ〜」

全然恥ずかしそうじゃなく、むしろ楽しそうにそう言い出す銀時。

それでもやっぱり出てこないので、銀時は仕方ないなぁという顔で話し出した。

「じゃあ、ひと〜つ。先週の非番に万事屋に来て酒を飲んだら気分良く盛り上がっちゃって、そのままソファで抜かずのさん…」

言い終わる前に一匹の黒猫が飛び出してきた。

「にゃにゃにゃぁぁああああ!!」(訳:1つ目から何とんでもねー話してんだコラァ!!)

銀時の顔面に猫パンチを叩き込んでやろうと思ったのだが、それこそ銀時の思う壺で、しかもリーチの差がある。

手が届く前に腹を両手でガシッと掴まれ、

「つ・か・ま・え・た」

にや〜〜っと笑った銀時にそのままぎゅーっと抱き締められた。

その途端にぼふんと真っ白な煙が立ち上り、それが消えたときには超嬉しそうな銀時に抱えられた、超不満そうな土方の姿。

「……あ、戻った……」

新八は陸奥からの情報通りに元に戻れたことに驚いていたが、銀時にとって大事なことはそこじゃなかった。

目の前には土方の腹があったのでスリスリしながら、

「やっぱりおめー俺が好きなんだなっ」

銀時が嬉しそうにそう呟き、土方は尻あたりを抱えられているので地面に着かない足をじたばた動かして、

「全然好きじゃねーわぁぁああ!!」

真っ赤になりながらそう叫んだ。いろんな点からみても、全然説得力がない主張だった。

新八は二人を無視して陸奥に報告する。

「いま試したら一人戻ったんで、その“欠陥品”みたいです。…でも好きな人がいない人はやっぱり解毒剤待たなきゃならないですよね?」

『そうじゃな。どっちかが好きならいいらしいんじゃが』

「え?そうなんですか?」

「粗悪品じゃからな、いい加減なもんぜよ』

陸奥の話を聞いてショックだったのは銀時だった。どっちかが好き、でいいなら話は違ってくる。

「ちょっ、それじゃ土方くんが俺を好きじゃなくても戻っちゃうじゃんんんん」

そう嘆くが、それは“銀時が土方を好き”だから戻ったという告白のようなもので、抱き締められたままの土方が満更でもない顔をしていた。

が、のん気に喜んでいる場合じゃないことと、“どっちかが好きなら”という条件から思いついたことがあるらしい。

油断している銀時の腕を外して逃げ出すと、猫たちの前に膝をつき茶色の猫(近藤)に手を差し出す。

「近藤さん」

そして猫を抱き上げると、銀時がしたようにぎゅっと抱き締めた。立ち上る白煙、そして元に戻る近藤。

「トシぃぃ!!ありがと〜〜っ!!」

「ええぇぇぇええ!なにそれ、土方くんんんん!?」

銀時の叫びは無視し、土方は白猫(沖田)を無理矢理捕まえてまた抱き締める。元に戻った沖田は複雑そうな顔をしていた。

「ちょっ、土方くん、どういうことですかコノヤロー!」

「どうもこうも、俺はこいつら(真選組)が大好きだからな」

そう自信満々に言い切った土方に、猫達は目を潤ませ、

「ふにゃにゃにゃにゃぁぁああああんん」(訳:俺たちも副長が大好きですぅぅぅ)

次々にそう叫んでいるが当然通じない。それでも土方は嬉しそうに笑って、隊士たちの名前を一人づつ呼びながら抱き締めて戻していく。

それを見ていた近藤が、

「おお、じゃあ俺でもいけんじゃねーか?俺もみんな大好きだぞっ!さあ、こいっ!!」

両手を広げて猫達にそう言うが、猫達は“抱っこされるなら副長が良い”と思っているのか誰も寄ってこなかった。

ふて腐れて拗ねている銀時の隣で、近藤までしょんぼりと膝を抱えてしまった。



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