原作設定(補完)

□その14
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#139

作成:2015/10/18




鬼の副長と呼ばれる土方十四郎を抱いた。それは本当に酔った勢いでしかなかったんだけどね。

アイツにそんな気持ちを感じたことはなかったし、むしろどちらかと言えば嫌いだったと思う。

人の顔をみればいつも眉間にシワを寄せて不機嫌そうなツラするしさー。俺がそんなに悪いことしましたかね?

そんなアイツが俺のいきつけの居酒屋にフラッと立ち寄ったのは二月ぐらい前。

俺も酔ってたし、アイツもすでに飲んでいたのかずっと笑ってた。

そんな顔を見るのも、言い合いにならずに会話するのも初めてで、物珍しくて興味が湧いた。

………だからってよりにもよってムラムラきちゃうとか、さすがに俺もないなーって思ったんだけどさ。

なのに、いちかばちか誘ってみたらアイツもノッてきちゃって?いや、乗ったのは俺なんだけど(笑)

男相手にデキんのかって心配したけど、アイツがあんなにエロイ顔するからさー。いやー、酒の力ってこえーなー。

その後も関係を続けてきたのは偏に、気持ち良かったからだ。

ただそれだけ。性欲を満たすためにお互いを利用しているだけの関係。

キスも、抱き締めあうこともない。優しくもしなかった。

金で買わなくても女に不自由してなさそうなアイツと違って、俺は正直定期的にそういう相手がいるのは助かるしさ。

それだけ………なのに。

アイツが仕事で超忙しくて会うのは久し振りだったせいか、その日は興奮してアイツの顔がいつもよりエロく見えた。

だから思わず、甘い息と声を吐く口を塞いでみたくなった。

そしたらアイツごっさ驚いた顔しちゃってさ。いや、ちゅーぐらい……したってよくね?

その後は今まで以上に盛り上がっちゃって。アイツもしっかりとしがみ付いてきたりするもんだから、その腕の熱さに胸の中になんか、こう、湧いてくるものがあるわけで。

次に会うときにどんな顔をしたらいいんだ、なんて心配までしちゃったのに、さっぱり会えなくなった。




「……今日も来ねーか」

3杯目の中ジョッキを空けて銀時は呟いた。

今日の昼間、町中で会ったときにはいつもと同じように不機嫌な顔をしていたし、関係を持った後もそうだった。

忙しそうにも見えなかったので今日こそは来るかと思ったのに、銀時はまた肩透かしを食わされたことになる。

「こっちはそろそろ限界だってのに……」

あの日あんな熱い時間を過ごしてしまったせいで土方に触れたくて仕方がない自分に、銀時は戸惑っていた。

会えばその理由が分かると思っているのに、土方が会おうとしてくれない。

終わらせたがっているならそれでもいいはずだ。“それだけの関係”なら。

だが銀時は、翌日、幸い一人で見回りしていた土方の前に立ちはだかり、

「ちょっと話があるんですけど」

土方に負けない不機嫌な顔でそう詰め寄ってみた。

「……俺はねー」

「うん。でも土方くんの意見は聞いてねーから」

「……知るか」

銀時を無視して立ち去ろうとする肩を掴んだら、その手を叩き落とされた。

「触んなっ!!」

泣きそうな顔だと思った。もちろんそんなことはないし怖い顔で銀時を睨んでいるが、銀時の胸は罪悪感でちくりと痛む。

土方が大きな声を出したせいで、周りの者達の注目を集めてしまった。

「……ここで話されたくないなら、場所変えませんかね?」

「………」

眉間に深いシワを刻んだ土方は不服そうな顔で、目立たない路地に向かった銀時の後に着いて来る。


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