原作設定(補完)

□その14
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#137

作成:2015/10/14




その日、真選組のほとんどの隊が出動する大掛かりな捕物があった。

過激攘夷党が組んで各地で一斉のテロ行為があるという噂から、そのための集会が行われるという情報が入ったのだ。

あるホテルの大ホール、多くの攘夷志士が集まったのを確認した真選組は、静かに全ての出入り口を固める。

そして近藤の号令を合図に一気になだれ込んだ。

「御用改めである!!神妙に………あれ?……」

たくさんのテーブルの上にはたった今まで宴でも開いていたような形跡を残したまま、そこに攘夷志士の姿はなかった。

「なんでぃ、こりゃあ」

「総悟っ、気ぃ抜くな!各隊ごとにすみずみまで……」

血気溢れる隊士たちが無人のホールに拍子抜けするのを、土方が嗜めて次の指示を出そうとしたとき、

「ふははははっ、幕府の狗共っ!!まんまと我らの罠に引っかかったな!」

ホールの奥、ステージの上部へ上がる階段で男が数名、高笑いしながらそう叫んだ。

『まあ、状況からみてそうだろうなぁ』と思える真選組のほうが冷静で、勝ち誇って踏ん反り返る志士を白けた目で見つめる。

「そうか。それで他の連中はどこへ行ったんだ?」

なんて近藤がのん気に会話をしている間に、土方が志士に気付かれないようにステージを包囲する合図を出す。

「教えるかぁ!」

「そう言わずに教えてくれよ〜、頼むよ〜」

「聞いたってムダだっ!お前らは全員ここで死ぬんだからな」

そう言って志士は一本のスプレー缶を取り出し、上部のボタンを押したあと、隊士たちが集まる中央を越え入り口付近へ放り投げた。

そこにはワザとらしいほどの“ドクロマーク”が描かれており、

「!! 全員下がれぇぇ!!」

近藤が叫ぶと同時にスプレー缶から白い気体が噴き出し、出入り口を覆っていく。

「ははははっ!死ね、幕府の狗めっ!!」

志士たちがステージの奥へ姿を消し、その捨て台詞からこの白い気体が毒物だと想定するなら、退路を塞がれた自分たちにできることは1つだ。

土方が懐からリモコンを取り出しボタンを押すと、窓という窓のシャッターが下り、全ての出入り口がロックされた。

やるべきことは、この毒物を外へ漏らさないこと。



外で待機していた隊士たちも室内の異変を察するが閉ざされたドアは開かない。

山崎の携帯が鳴り出し、土方の名前が表示されていたため即座に通話を押した。

「副長っ!!一体何が……」

『…山崎……扉は開けるな……薬物班を呼んで……中を調査………ぐっ……』

「副長っ!!?副長っ!!」

どれだけ呼んでもそれきり土方の応答はなかった。

山崎は歯を食いしばると頭をフルに使って考えた。土方が言いたかったこと、したいこと。いつも側にいた自分なら想像することができるはずだ。

真選組の薬物班を呼んで中の空気を調べ、異常がないと分かるまでこのホールを封鎖する。

これは真選組の一大事なのだから。





数時間後。

「………それで?俺たちになんの用ですかぁ?」

やる気のない死んだ魚のような目でそう言ったのは万事屋の坂田銀時。

山崎からの緊急の依頼だと呼び出されたホテルの大ホールでそう言われ、

「……あのぅ……そのー……」

山崎は困ったような顔で、どこから説明しようかと言葉を探しているようだ。

「見て見て銀ちゃん、ごっさかわいいアル!」

待ちくたびれたのか、そう楽しげな声を上げた神楽が地面にしゃがみ、指差した先には大量の猫、猫、猫。

「なんですか、これ。猫集会ですか?」

「ホテルを借りるなんてリッチな猫どもだな」

新八と銀時がそれを見ながら笑っているので、山崎が申し訳なさそうに話し出した。

「…それが、実は…」

出動からホールの閉鎖までを簡単に説明したあと、薬物班が調査して出た結果、アレは地球語で“猫にな〜る”というとってもベタな名前の天人製品と判明したと言った。

「………つまり………」

「……これ全部……」

「真選組の連中?」

万事屋が猫たちをじーーっと見つめそう呟くと、しばらくの間ホールは静まり返ったが、

「ぶはははははははははっ!!!」

大爆笑に包まれる。

「ぎゃははははっ!不様アルなっ!!」

「だ、だめだよ……そんなに笑っちゃ……ぷふふふふっ」

いつまでも笑いの止まらない万事屋たちに、猫化した隊士たちは悔しくても反論できない自分たちに苦虫を噛み潰すのだった。



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