原作設定(補完)

□その14
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#136

作成:2015/10/13




土方十四郎は私服姿でかぶき町を微妙な足取りで歩いていた。

連日の勤務を見かねた近藤に急な休みを言い渡され、屯所にいると仕事しちゃうだろう、と追い出されたのだ。

以前だったらどうやって時間を潰そうか悩んでいた土方だったが、今は行く場所が出来ていた。

もう一月近くちゃんと会えていない。正直会いたいと思っているし、会いたいと思われているはずだという自惚れもある。

そのためついつい早くなってしまう足取りに、そんな自分に気付いて“別に急いでねーし”とゆっくり歩いてみたり、を繰り返していた。

そんな土方に助け舟。

「土方さん、こんにちは」

そう声をかけてきたのは新八で、

「んんんん、んんんんんんっ」

酢昆布を咥えたままの神楽はたぶん憎たらしいことを言っているはずだ。

ガキ共と一緒なら万事屋に行きやすいと、内心ホッとする土方。

「…おう」

「土方さん、お休みですかっ?」

土方からの返事と同時に、新八が嬉しそうな顔で詰め寄ってくる。

「あ?」

「休みだったらうちに来ませんかっ」

元々そのつもりだったのだが、諸手で歓迎されてしまうと何か裏があるのかと勘ぐってしまうのは職業病だ。

子供相手に余計な心配だと思うのだが怪訝そうな顔をしている土方に、新八はちょっと照れくさそうに言った。

「あの……銀さんがずっと元気なくて……土方さんに会いたいみたいなんですよね」

言うほうも照れてしまうが、それを聞かされた土方はもっと照れる。

「んんっ、んんんんんんっ」

赤くなる土方に、神楽が憎たらしい顔で憎たらしいことを言った……たぶん。



そんなわけで早速万事屋に連れてこられた土方は、

「こっそり入ってきてくださいね。きっと超喜びます」

と言われたので、普段どおりに元気良く帰宅した二人に続いて黙って中へ入った。

「銀さん、ただいま〜」

「……おーう……」

やる気のない銀時の声に、新八が土方を見て“ほらね、こんな調子です”という顔で笑っている。

子供たちにからかわれているのは恥ずかしいが、こんな銀時を見るのは初めてで嬉しいとも思えた。

こっそりリビングを覗くと、背中を向けているのでどんな表情をしているのかは分からないが、ソファの背もたれにぐったりと頭をのせ長く深いため息をつき、全身で元気なさをアピールしている銀時。

そして、

「土方に会いてーなー」

ぼそっと呟かれたりしたら、胸がきゅーーっと締め付けられても仕方ない。

見慣れているのか微笑の新八と見飽きているのか苦悶の神楽に見送られながら、土方はそっと中に入った。

子供らに見られているせいもあって究極のツンデレを披露しようとしたとき、

「あー……あいつのピーーッをピーーッして、ピーーッとかするとピーーッってなるピーーッをさらにピーーッして、ピーーッったらピーーッしちゃったり?」

“一部自主規制しております”と注意書きしなければならないようなエロ用語を連発する銀時に、土方は凍りついた。

背後の二人がきっと居たたまれないような顔をしてるだろうから振り向くことも出来ず、

「そしたらピーーッとかピーーッをしてやったらよろこ……」

まだとんでもない独り言を続けようとする銀時めがけ、全力全開渾身の力で真剣を振り下ろしてやった。

「おうわぁぁああ!!」

本気の殺気に気付いた銀時が避けるので、ソファにめり込んだ刀を抜いてさらに斬り付ける。

「ちょ、おまっ、いきなり何してんのぉぉ!」

「てめーを殺して俺も死ぬっ!」

「ええぇぇっ、超熱烈!!だけどちょっと落ち着いてっ!話せば分かるからっ!」

「うるせぇぇええ!!死ねコラァァァ!!!」

「ぎゃぁぁぁああああ!!」

背後で銀時の断末魔を聞きながら、ため息をついて台所へ向かう新八と神楽だった。



 おわり




イチャイチャの後はこんなんです。ある意味イチャイチャだけどね……ね?(笑)
似たような話を書いている気もしますが、どの話も似たようなものなので許してあげてください。


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