原作設定(補完)

□その13
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誰も居ない静かな部屋で銀時は、テレビを見たりジャンプを手に取ったり、落ち着かない様子だ。

時計の針はもうすぐ8時を差す。いつもならそろそろ土方が来る時間で、前回まではそれが楽しみで仕方がなかったのに。

『会いたいのに、会いたくない……なんだコレ、なんでこんなことになってんだ……』

嫌な感情に振り回せれて自分でもどうしていいのか分からない。

そのとき、玄関チャイムが鳴った。

銀時はゴクリと喉を鳴らしてツバを飲み、ソファから立ち上がると玄関へ向かう。

『どっちだ? どっちの土方が来たんだ?』

躊躇いながら鍵を外して扉を開けるとそこには私服姿の土方が立っていて、うつむき加減から上げた顔は口をきゅっと結んで銀時を睨むように見つめていた。

『昼間の土方っ!?とうとう来たっ!?』

某ホラー映画のテーマソングが頭をよぎる銀時に、怖い顔をしたままの土方が一歩詰め寄るから、銀時は思わず一歩下がる。

それを見た土方が目を歪ませ、

「てめー……別れてーのか?」

悲しそうとも口惜しそうとも言える表情でそう言った、と思ったら、

「別れてーなら思わせぶりな態度なんかじゃなくはっきり言ったらいいだろーがっ!溜め息付いたり、会いに来なくなったり、笑わなくなったり!おあいにく様っ!てめーの気持ちが変わろうと、俺は別れてやらねーけどなっ!!」

口に出したら怒りが増したらしく、鼻息荒く一気に捲くし立てた土方。

『あれ?』

銀時はきょとんとそれを見つめる。初めて昼間外で会う土方と、いつも万事屋で会う土方が繋がった。

「…土方くん?」

「なんだっ!!」

『あれぇ?』

歯を食いしばって銀時を睨む土方は、今まで見てきた楽しそうな土方とは違っているのに、疑うどころか可愛くさえ見えてきた。

今の土方になら、ずっと悩んでいたことが聞ける気がする。

「……土方こそ……外で会っても素っ気無かったじゃん」

「そ、それは………総悟が…」

「沖田君?」

付き合い始めたばかりのころに幸せボケで毎日機嫌の良い土方に、心底嫌そうな顔をした沖田が、

「旦那のこと思い出してんですかぃ。ニヤニヤすんのは気持ち悪ぃんでやめてくだせぇ」

と言われてしまい、まったく自覚のなかった土方はこの上なくショックで、これ以上そんな醜態は晒せないと常に顔が緩まないように力を入れていたらしい。

「…それだけ?…」

「それだけって、総悟はバカにするし、他の奴らも暖かく見守る的な生温い目で見るし、真選組副長としてのメンツってもんがあるだろーがっ!」

真っ赤になっている土方にとってはとても重大なことのようで、いったいどんな顔をしていたんだろうと見たくなった。

自分と一緒に居ることを、そんなに嬉しがっててくれるとは思っていなかったのだ。

そしてもう1つ嬉しいこと。

「つーか、俺のことアイツラに話してたんだ?」

銀時が嬉しそうな顔をしているので、土方は気まずそうに話してくれる。

「……いくらてめーに何度も助けられてても、桂と係わりがあるし得体が知れねーし、そんなてめーとコソコソ会ってたら…まずいだろーが」

きっと真面目な土方のことだから、会議の席で「万事屋と付き合ってる!」とか真っ赤になって報告したんじゃないかと思う。

そうなると、近藤がなんだか優しくなったのは“うちの可愛いトシをよろしく”的な父性愛で、隊士たちが睨んでくるのは“うちの副長をこんな馬の骨にぃぃ”的な憎悪だったのだと納得がいった。

桂と係わりがあって得体が知れないからこそ、誰にも言わず隠しているんじゃないかと思っていたから、よけいに嬉しくなる。

「……おまっ、うちと外と、ギャップありすぎじゃね?」

「ううう、うるせーっ!普段我慢してる分、ここに来ると力が抜けんだから、しょーがねーだろっ!」

笑っても怒っても楽しそうでも不機嫌そうでも、全部が銀時の好きな土方で、拗ねても腹を立ててもキレても、別れないと言ってくれたのが土方の銀時への気持ち。

拗ねる土方に腕を伸ばし、

「おめー……そんなに銀さんが好きですかコノヤロー」

「………悪ぃかコラァ!」

銀時がぎゅっと抱き締めると、土方も対抗してぎゅっと抱き付いてきてくれる。

『可愛い』

久しぶりの幸せをかみ締める銀時に、土方が抱き締める腕に力を込めた。

それは抱き締めるというより、捕獲されているような感じで、

「次はてめーの番だ」

「あ?」

逃げられないように銀時をがっしりと捕まえて、詰問する口調で言った。

「てめーはなんでずっと暗かったんだよ」

「……あー……たいしたことじゃねーから」

「どうたしたことじゃねーんだ」

「いや、ほんと、気にするほどじゃねーからおかまいなくぅ」

「てめーっ、俺には全部言わせといてズリーだろーがっ!!」

「大丈夫、お前のおかげで俺のも片付いたから」

「だからそれを言えって言ってんだろうがぁ!!」

「うん。大好きだよ」

「!!……っ……誤魔化すんじゃねー……」

真っ赤になって嬉し悔し顔の土方に、銀時は悩みも全部吹っ飛んで心から笑うことができた。






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はい、いつものバカップルのバカ話でした〜。
このオチにするために、前ページまでうだうだ書いていたんですが、
なんか…盛り上げすぎちゃってオチが急展開になりすぎかな…
がっかりしたらごめんなさい。
バカップルのバカ話が大好きなんです、はい(笑)


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