原作設定(補完)

□その13
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#127  2015/09/08


万事屋のデスクで頬杖をつき、銀時は深い溜め息を付いた。

明後日のほうを向きながら物思いに耽る銀時を見慣れているせいか、新八も神楽も気に掛ける様子はない。



思い浮かべるのは土方のこと。

お互いの努力と妥協で付き合うことになって一ヶ月。

一月前までは、どうしたら付き合えるかと悩んでいた。

付き合ってからは、笑っても怒っても可愛いなぁと思い出してはにやけてみたり。

そして一ヶ月経った今は……苦悩していた。

二人のときは楽しそうにしてるし、イチャイチャしてる時ははエロいし、眠るときもぎゅーっとしてくる土方だったが、なぜか外で会うと眉間にシワを寄せて不機嫌そうな顔をしている。

たまたま機嫌が悪いのかと思っていたが、いつも、いつも、いつも、そんな顔で話もあまりしない。

そのギャップに戸惑って何かあるのかと聞いてみたかったが、二人きりのときは笑って側にいてくれるのでできなくなってしまうのだ。



そんなある日。

『もしかして……昔流行った“多重人格”!? 俺を好きな土方と、俺を嫌いな土方が居るのかも……』

隣ですやすや眠っている土方を見つめ、そんなことを考えてしまった銀時の背中につめたい汗が流れ落ちる。

『人目が気になるっていうから二人きりで会うのはいつもここ(万事屋)でだし……外で会ったときはいつも目を合わせない……ってことは、ここに居るときだけが俺の土方だったりなんかしたりしますかもしかして……』

素っ気無い土方を見るたびに胸が痛むことを思い出し、どんどんネガティブになっていく銀時。

『じゃあ、いつか、“あっち”の土方がここに来て“嫌いだ”って言い出したらどーしようぅぅ』

一緒にいると楽しくて幸せな分、“嫌い”と言われるのは辛いな、と枕に頭を沈め目をつぶると切ない溜め息をついた。



銀時が寝息を立て始めたころ、土方は目を開けてきゅっと唇を噛んだ。



一度考えてしまった“嫌な想像”はなかなか抜けないもので、銀時が暗い顔をしていることが増えた。

「銀さん、今日は散歩に行かないんですか?」

「……んー……」

ずっと毎日楽しそうに散歩に出かけていた銀時が、いつもの時間になってもでかけないことを新八が不思議がる。

なかなか会えない土方に、少しだけでも会えるチャンスが市中見廻りのときだと言っていたはずなのに、気が乗らないようだ。

「…なぁ、ぱっつぁん…」

「はい?」

「土方くんってさぁ……俺のこと好きだと思うか?」

突然の質問に、内心『ああ、幸せボケが進行している。そんな話を僕に聞くなんて。神楽ちゃんがいなくて良かった』と思いながら新八は答えてやる。

「……思いますけど……」

「なんで?」

「……えー……楽しそうだし……優しいし……」

「ここに来たときだけなー」

「え? ここだけじゃないですよ」

銀時がパッと顔を上げる。さっきまでの暗い顔が晴れていた。

「どこでっ」

「普通に外で。たまに買ってくる団子は土方さんが買ってくれて……って、これは内緒だったんだ」

金のない(給料未払いの所為で貧乏な)新八が、たまーにおやつだと団子を持ってきたがそんな理由があったようだ。

「まじでか」

「はい。だから土方さんって銀さんが好きなんだなーって………ゴホンッ。こんなこと僕に言わせないでくださいよっ」

照れて部屋を出て行く新八にそんなことを言われ、銀時の不安がすーっと引いていく。

その途端すごく土方に会いたくなってしまった。

「ぱっつぁん、散歩に行ってくる!」

そう言って元気に出て行く銀時に、新八はやれやれと溜め息を付いた。



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