原作設定(補完)

□その13
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#121  2015/08/30



「待てコラァ!!」

そう怒鳴りながら土方が追いかけているのは、真選組が先ほど一斉突入した過激攘夷党の潜伏場所から逃げ出した志士の一人だ。

土方が最初に気付いたので先頭で追いかけることになってしまったが、ここ数日の激務と睡眠不足、日頃の不摂生(マヨと煙草)のおかげで、足が重い。

そじわじわと開いていく距離に、舌打ちしながら土方は走った。

組織の連絡係を務める者で、今後のことを考えるとどうしても捕まえておきたい。

しかし相手も追いつかれないことを察したのか、ひらりと狭い路地に方向を変えた。

『ちっ。このままじゃ逃げられ……』

そう思ったとき、路地の奥から声が聞えた。

「うわぁっ!!」

「邪魔だっ!どけっ!!」

どうやら路地に人が居てぶつかったらしい。その人には悪いがそこで足止めしてくれたら追いつける。

そう思いながら急いで駆けつけ路地へと曲がるが、

「おまっ、人にぶつかってきておいてその言い草はないんじゃねーですか?」

その言い草と声、そして目に飛び込んできた銀髪と奇抜ないでたち。

「これ何日ぶりの糖分だったと思ってんだっ、弁償しやがれっ!」

「うるさいっ!!離せっ!!」

銀時が見下ろした地面には団子が散乱し、その手はしっかりとぶつかってきた男の腕を掴んでいた。

「腐れ天パー!!その手離すなぁぁ!!」

「あ?」

土方の声に銀時が顔を上げた瞬間、手が緩んだのか男は腕を振り払って逃げ出した。

「離すなって言ってんだろうがぁぁ!!」

そう怒鳴ったものの、距離が縮んだのは正直助かる。男が動揺している間に追いつけるかもしれない。

銀時の脇を駆け抜けようとしたとき、グイッと背中が引っ張られた。

見ると不機嫌そうな顔をした銀時が、土方の隊服を掴んでいた。

「てめーっ!何してんだっ!!」

「俺の糖分ダメになったのはお前が追っかけてた所為なんだろうがっ、なのにその言い草はなんですかぁ?」

「今はそれどころじゃねぇぇ!!」

「知るかっ!!それよりコレ、弁償して貰おうじゃねーかっ」

銀時が隊服を掴んだまま地面にしゃがんで、落ちた団子を拾おうとしたので、

「いいからっ、どけっ!!」

銀時を引き剥がそうと土方は苛立たしげに丁度手元にあった頭をグイッと押した。

「!!!?」

その瞬間、衝撃が走る。

ピタリと立ち止まり信じられないという顔で自分を見つめたまま頭を掴んでいる土方に、銀時が眉間にシワを寄せた。

「なんだよっ!おまっ、離……」

「副長っ!!」

銀時が文句を言おうとしたとき、遅れて追いついてきた隊士が土方の姿を見て叫んだ。

その声に我に返った土方は銀時の頭から手を離し、そのまま路地の奥に向かって走り出す。男はだいぶ離れてしまって追いつけそうにない。

「コラァ!!俺の糖分んんん!!」

怒鳴る銀時の声を聞きながら、土方は胸がざわつくのを感じた。



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