原作設定(補完)
□その12
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おまけの閑話(初チューの話?)
土方は悩んでいた。
ずっと好きだった銀時に酔った勢いで告白してしまい、拒絶されるかと思ったら理解してくれて、あり得ないことに受け入れられてから半月。
犬猿の仲から友達、友達から恋人へと奇跡的に進化したものの、その先へ進めないでいた。
この場合“その先”とは、いわゆる恋人同士のスキンシップというやつで、銀時は土方に触れてこようとはしないのだ。
ふざけた調子で抱きついたりあちこちに触ったりはするのだが、それとこれとは違うのは触れられている自分がよく分かる。
吸っていた煙草を、山盛りになっている灰皿の隙間に押し付けて深く息を吐いた。
こんなことばかり考えている自分が情けなかった。
悩むぐらいなら自分から行動したらいい。素面では無理でもまた酔った勢いで……。
「〜〜〜〜〜っ!!!!」
想像しただけで恥ずかしさの限界を突破してしまったのか、土方は床を転がり回った。
『できるわけねぇぇええ!!んなキャラじゃねーんだよっ、自分からせま……迫るとかっ』
ガバッと起き上がり、急いで煙草に火を着けるとスパスパと吸い込んで気を落ち着かせる。
落ち着きすぎて、落ち込んでしまったり。
『…嫌がられたらどうすんだよ…アイツは同情して俺の気持ちに答えてみただけかもしれねーだろ…やっぱり男相手に気持ち悪いと思ってんのかもしれねーし…』
落ち込みすぎて、むかついてきたり。
『…だいたい、告白してからこっち、積極的だったのはアイツのほうだったろうが。そのままの勢いでガッと来てくれたらいいだけなのに、アイツらしくねーだろーがっ』
そしてまた恥ずかしくなったり。
『だからっ、ガッと来られたって無理だろっ! アイツと……したりとか……無理無理無理ぃぃいい!!』
忙しい毎日の中、部屋に戻って一人になるとそんなことばかり考えてしまい、土方は余計に疲れていた。
「すげー疲れた顔してんな」
久し振りの非番に、ファミレスの向かいの席で銀時がそう言って笑う。
「……大丈夫だ……」
コーヒーにマヨを入れて一気に飲み干すが、土方の気分は晴れなかった。
今は昼間だし人目もあるから余計に銀時は触れてこないだろう。
そんなことを考えてしまった自分に土方が落ち込んでいると、銀時がいたって普通に切り出してきた。
「な、今日は家に来ねーか?」
そう言われて土方の心臓は跳ねた。付き合ってから家に呼ばれたのは初めてだし、
「…が、ガキ共に何て説明すんだよ…」
「今日は神楽がお妙んとこに行ったから、今は二人とも居ねーよ」
誰も居ない家ともなれば、そういうシチュエーションにもっていく絶好の場所だ。
必死に顔には出さないように押さえて、土方は素っ気無く答える。
「……別に……いいけど……」
「んじゃ、決まり」
3つのパフェをキレイに食べ終えていた銀時が立ち上がるので、土方もそれに続いた。
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