原作設定(補完)

□その12
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真選組屯所へ戻ると、勝手に帰ってきてしまったのが近藤さんにバレていて、帰宅早々に怒られた。

「トシィ!お前はホントに、勝手ばかりしてぇ!迎えに行ったのに居なかったから驚いただろうがっ!」

「…なんてあんたがわざわざ迎えに来るんだよ」

「当然でしょーっ、大事なうちの子なんだからねっ!」

「んだ、そりゃ(笑)」

俺が笑ったので近藤さんも嬉しそうに笑う。その後ろに隊士勢ぞろいでお出迎えだ。

「副長っ、おかえりなさいっ」

「……おう、ただいま」

みんな俺を待っていてくれて、迎えてくれる。

「ちっ、もう帰ってきやがった(小声) 土方さん、無事でなによりですぜぃ(嘘笑顔)」

こいつを除いては。いや、もっといるかもしれない、たぶん。

でも、ここが俺の居場所だ。俺はここがあればいい。

「心配かけて済まねぇ、もう大丈夫だ。溜まった書類も今から片付けるからよ」

「ゆっくりでかまわねーんだぞ。………催促されてるけど」

「ダメだろうが(笑) 十分休んだんだから、なんてことねーよ」

「そうですぜ、近藤さん。書類片付けるぐれーしか能がねーんだから寝る間を惜しんでやりやがれ、土方ぁ」

「んだとコラァ!総悟っ!!」

みんなの笑い声を背中に受けながら、逃げていく総悟を追いかけてみたがあっという間に見失ってしまった。

しぶしぶ副長室に戻って、案の定山積みになった書類を見て一瞬頭が痛くなる。

でも、今はこの山を処理していくことに没頭していたい。

そしたら余計なことを何も考えずに済むだろうから。




「はぁぁぁああ」

畳に寝転んで思い切り背伸びをしてみた。そこから見える風景は、3日前よりたいぶ拓けている。

総悟に言われたからじゃないが、寝る間を惜しんで書類整理に没頭してきた。

寝るとまた“幸せな夢”を見そうで怖い。白い後姿を追いかけたくなる。

「……っ……」

頭を振ってそれを追い払うとまた書類に向かった。

手に入らない物を、入ったと思い込んでいた物を、無くして落ち込むなんて……バカみてーだ。




一週間過ぎたが、気分は最悪だった。

眠れないし、煙草の量は増えるし、食事も味がしない。イライラが募っていく。

だから、つい……

「それからな、昨日のテロ未遂事件を受けてターミナルから巡回の要請が来てるんだ。申し訳ねーんだが頼む」

「……4番隊と6番隊が日勤、1番隊と7番隊が夜勤」

「ええっ!!」

「…なんだ…」

「土方さん、1番隊は昨日も夜勤だったんですがね」

「そうですよっ、これから休んだって夜勤なんか…」

「うるせぇっ!!だったら文句なんかで時間使うんじゃねぇっ!!」

「………」

不穏な空気の中、会議が終わると近藤さんが困ったような声で話しかけてきた。

「どーした、トシ。まだどっか調子悪ぃか?」

「………すまねぇ……大丈夫だから……」

隊士たちにやつあたりするとか、近藤さんに心配かけるとか、どこまで情けねぇんだ、俺は。

俺が落ち込んでいるのが分かって、近藤さんは笑う。

「まぁ、退院してからずっと働き詰めだからな。今から明日まで休め」

「大丈夫だって……仕事していてーんだ」

「休養も必要だっていつも言ってるでしょうっ、もう、この子はっ」

「おかーさんかよ(笑)」

「遊びに行ってきたらどうだ?」

「あ?…別に遊びに行くとこなんて……」

「ここしばらく非番によく出かけてたもんな。そこで息抜きできてたんだろう」

近藤さんの言葉に胸がざわつく。

「……出かけてた?……」

「おう。俺も連れて行けって言っても連れてってくれないしぃ。俺に隠し事かぁ?」

「………あんたはあの女のところに行くだけでいっぱいいっぱいだろうが……」

「だはははっ、そうなんだけどさぁ!」

「……分かった。今日はもう休ませてもらうよ……」

「おう。ゆっくり休めよ」

会議室を出て、駆け出したい衝動を抑えながら副長室へ戻った。
どういうことだ?

非番の日に出かけたり、夜に出かけて外泊したり……確かに覚えはある。

だけど、それは全部、万事屋と一緒だった記憶だ。他の行先に心当たりがない。

万事屋とのことが夢だというのなら、俺はどこに行ってたんだ?

副長室に戻って、すぐに机の中や、押入れの中を引っ掻き回した。

何か無いのか……俺の行動を証明する何かが。

そして、タンスの中から一枚の薄い封筒を見つけた。何の変哲もないただの茶封筒。

中からは数枚のレシートやチケットが出てきて……それに見覚えがあった。

昼間、ファミレス、2名。コーヒーと、パフェ3杯。

夜、飲み屋、2名。甘い系のつまみと、大量の酒。いつの間にか飲み比べになってしまい、2人とも朝まで記憶がなかった。

昼間、映画、アニキの映画に一緒に行く口実が欲しくて、タダ券を貰ったと嘘をついた。

2人で過ごした時間の“半分”分の証拠。

それを握り締め部屋を出た。



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