原作設定(補完)
□その12
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#118 2015/08/19
「てめーが好きだ」
「………あ?………」
「月曜日、ここで、この時間に待ってるから返事聞かせてくれ……来なかったら諦める。じゃあなっ」
「………え?………」
目を覚ますと、目の前には見慣れた天井、身体を包むせんべい布団の感触。
銀時はむっくりと身体を起し、現状を考察してみた。
「………俺の部屋…布団…寝巻き………夢?……ですよねぇ………」
“てめーが好きだ”
頭の中で、リアルにくっきりはっきり繰り返されるその言葉に、銀時は両手で顔を覆って叫んだ。
「ぐあぁぁ!超恥ずかしっ!なに?妄想?願望? アイツが俺のこと好きとか、ありえないっつーのっ。いくら最近ちょっとアイツ可愛くね?…なんて思ったからって、そのまま夢に出てくるとか、中2じゃねぇんだからさぁ、やめてよ、銀さんもう大人だしっ!……でも、アイツ最近ちょっと変わったよな……ギスギスしてねーし、話かけてきたりするし……いやいやいやいや、期待はしてないよ?してねーけど、もしかして…」
そのとき、襖が両方にバーンと開け放たれる。そこには仁王立ちの神楽。
「うるせーアル!!」
「うわぁっ!!おお、驚かせるんじゃありませんよコノヤロー」
「起きたんなら早くご飯食べてくださいよ。今日は依頼が入ってるんですから」
「……はいはい……」
従業員だけど子供に注意されてしまい、銀時は妄想を終えてしぶしぶ布団から立ち上がった。
もっさもっさと朝食を食べていると、新八がチラチラをこちらを見ているのに気付く。
「どした?」
「い、いいえっ」
様子がおかしかったが、新八はいつもどこかおかしいのでそれ以上気にするのはやめた。
それからも、例の夢は繰り返し銀時の頭の中に現れ、なかなか忘れることができないでいた。
普段憎まれ口しかきかない土方が、あんな恥ずかしがるような泣きたくなるような顔をするなんて…
…自分の想像力の逞しさに頭が痛くなる。
『あれですか?俺はアイツにあんなふうに言って貰いたいとか、あんな顔して欲しいとか思ってるんですかね?………ぎゃぁぁああ!!恥ずかしすぎるっ、アイツに会ったらどんな顔すればいいんですかっ!』
そう苦悩していたが、なぜかちっとも土方に遭遇しない。いつもだったら探さなくても見つけることができるのに。
「なにキョロキョロしてるアルか」
「あ〜?………なんでもねーよ」
会ったら会ったでうろたえるくせに、会えないとなると寂しくなる。銀時は小さく溜め息をついた。
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