原作設定(補完)
□その12
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新八は沖田が置いていった依頼料を手にして目を輝かせている。久し振りの現金収入だ。
「銀さんっ、買い物行ってきていいですかっ?米っ、おかずっ」
「ああ……頼むわ」
「銀ちゃんっ、酢昆布も買っていいアルかっ」
「……2個だけな」
「キャホォォ!」
楽しげに出かけようとする二人に、銀時は追加注文。
「あ、あと、甘いもんと……マヨのでかいやつも」
「…はいっ。いってきます」
新八が嬉しそうに笑って出かけて行く。
2人が付き合っているのは知っていたが、二人とも人前でイチャイチャするようなタイプじゃないし、銀時も子供相手にへんなノロケを聞かせるようなこともなかったため、本当に付き合ってるのかな?と疑問だったからだ。
土方に優しい銀時を見れて新八が嬉しかったように、土方も嬉しかったらしい。
照れながら銀時に投げつけたに荷物を回収し、
「……着替える」
そう言って和室へ入り襖を閉めた。あんな成りでも着替えを見られるのは恥ずかしいのかと、銀時は小さく笑う。
数分後、出てきた土方は、子供用の着物から……いつもの着物に着替えて出てきた。当然、ぶかぶかずるずるだった。
「……なんですか、その格好」
「いつ戻るかわかんねーだろ」
ここに来るために沖田が用意した子供の着物では急に戻った時、漫画みたいに着物がビリビリになって“いや〜ん”というサービスショットになるはずもなく、あちこち締め付けられて大変なことになる。
理屈は分かるがあまりにも情けない格好なので、銀時は余分な部分を折りたたんだり、すぐ切れる輪ゴムで止めてたりしてやった。
そんな銀時を見つめながら、土方はときめく胸を必死で押さえた。こんな姿では何もできない。
変わらず不恰好ではあるが動きやすくはなったものの、土方はソファに座ってぼんやりするしかやることがなかった。
銀時はデスクのほうで今日発売のジャンプを読んでいるし、書類でも届けされるかなと思いながら必須アイテムがないことに気が付いた。
「煙草ねーか」
「やめとけよ」
「あ?」
「元に戻れなかったら20歳まで禁煙だぞ。予行練習で我慢しとけ」
「怖いこと言うなぁぁ!!」
どういう構造で子供になったのかは分からないが、子供の身体のせいか煙草が吸いたくてイライラするわけじゃない。
いつもの癖で手元口元が寂しいだけだが、それでも不満そうな顔をしている土方に、銀時がニヤニヤ笑って言った。
「それとも気持ち良いことする?」
「…やめとけよ。子供にしか興味なくなったらどうするんだ」
「おまえこそ、怖いこと言うなぁぁ!!」
少し早めの夕飯を四人+一匹で食べて、帰り際に新八が、
「銀さん…今日は神楽ちゃんいますからね」
「…どういう意味だよ」
と余計な心配で銀時を怒らせたり、子供は寝る時間ですよと神楽が部屋(押入れ)に戻る時に、
「銀ちゃん…それに手出したらポリゴンネ」
と怖いことを言って怒らせたりした。
そんなことを言われると、和室に2人分敷かれた布団が気恥ずかしくなってしまう。
「……寝るか……」
「ん」
おやすみの挨拶をして、電気を消して、それぞれ布団に入る。そんな普通の流れが落ち着かない。
『そういや、一緒にいるのに別々の布団で寝るのはじめてだな』
ひんやりとした布団で身体を包みながら、土方はそんなことを考えた。
普段は、ベッドが1つしかない宿や、万年床みたいな銀時の布団で、隣にはいつも銀時が居たから感じなかった寂しさ。
「万事屋」
「あ?」
「…そっち行っていいか?」
「……ん」
小さく笑って掛け布団を手で持ち上げると、土方がその隙間にするりと入り込んできたので、そのまま下ろした腕で抱き締めてやる。
この姿のせいか今日は一度も触れることがなかった銀時にようやく触れられて、土方は甘えるように身を寄せた。
久し振りに会うのに、昨日あんなことを言い合ったばかりなのに、会っても何もできない。
「……なあ」
「ん?」
「もし元に戻れなかったら…やってもいいぞ」
土方の怖い申し出に、銀時は笑い出す。
「ぶはははっ。や〜め〜ろ〜や〜っ」
「…だって…」
「子供にしか興味なくなったら困るから、お前が大きくなるまで待ってやるよ。大丈夫、どっかのつれない恋人のおかげで銀さんの息子、一人で遊ぶの得意だから」
今だくすくすと笑いながらそんなことを言う銀時に、土方は顔を見られないようにぎゅっと抱き付いた。
「…丁度よかったな」
「好きで得意になったわけじゃないですぅ。少しは反省しろや」
銀時をないがしろにしたからこんな目にあったのだろうか、と超ネガティブなことを考えながら土方は銀時に擦り寄る。
「……もう寝る」
「おやすみ」
土方が静かな寝息を立て始めたのを確認して、銀時は小さく息を付く。
茶化すように誤魔化したが、土方が真剣に言ってくれたのは分かっていた。
『つか、ホントに子供に興味ないからお誘いされてもできねーし。……土方だと思えばできんのか?……いやいやいや、それでもコレは無理だろ。あと5、6……7、8年ぐらい待たなきゃ……なげーな……早く戻んねーかな。お願い、神様、300円あげるから』
小さくて抱き心地の悪い身体を抱き締めて、銀時はそう願いながら眠った。
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