原作設定(補完)
□その12
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#119 2015/08/20
坂田銀時は走っていた。
老体に鞭打って、ここ最近ではないぐらい一生懸命走った。
「誰が老体だぁぁ!!俺はまだぴちぴちのにじゅう……って、誰にツッコんでんだ俺はぁぁああ!!」
無意識で何かにツッコミを入れてしまうほど、一目散に走っていた。
今日は久々の……本当〜〜〜〜〜〜にっ、久々に土方とのデートの日。
仕事仕事仕事でちっとも約束が取れない土方から電話してきてくれたのに、バイクで行こうと油断していたらよりにもよってこんな大事なときにエンジンがかからなかったのだ。
もちろん直している暇などないので、そこから猛ダッシュ。
約束の時間からすでに10分経過している。着く頃には20分になるだろう。
たった20分ぐらいで大袈裟な、と思うかもしれないが、付き合い始めた頃に言われていたのだ。
「俺は時間にルーズなのは嫌いだ。10分遅れたら帰るからな」
「大丈夫ですぅ、銀さんデートのときは30分前に行動する人だからねっ」
「それはそれで逆にルーズだけどな(笑)」
自信いっぱいに言い切ったしそれを守ってきたのだが、今朝乗ったばかりのバイクが故障してるなんて予測できるはずもない。
遅れたことがないので土方が本当に10分しか待っててくれないかどうか分からないが、あの生真面目な土方のことだからあり得そうだ。
約束から18分経過した待ち合わせ場所。
荒く息を付き、汗を拭いながら辺りを見渡したが、土方の姿はなかった。
「…はぁ、はぁ……まじでか……はぁ…」
有言実行の土方らしいとは思うが、
『久し振りなのに……もうちょっと待って俺の顔を見たいとか思わねーんですかアノヤロー…』
がっくりとうな垂れた銀時の背中に声がかけられた。
「遅刻だぞコラァ」
勢い良く振り返ると、銀時の初めての遅刻ににまにまと笑う土方が立っていた。
「30分前行動はどうしたんだよ」
「……な、なんで居んの……」
「あ?」
「…じゃない……どこ行ってたんですか」
「ああ。煙草吸いてーのにここ禁煙でよ。あそこの喫煙所で吸ってた」
土方の指差すほうを見たら、小さい喫煙コーナーが設置されていて、そこからこの場所は丸見えだ。
猛ダッシュで走ってきた銀時を見ていたからこその“にまにま”らしい。
「……くっ……違うからね、30分前に来てたんだけど、最近運動不足だからマラソンでもしようかなって走り出したら、もう誰にも俺を止められないってんで時間過ぎちゃっただけだからね」
「どんな言い訳だよ。30分前にも居なかった……あ……」
思わず言ってしまい、失敗したという顔でそっぽを向く土方。
30分前に銀時が居なかったことを知っているということは、土方も30分前から居たということになる。
いつも約束の時間前に来ている銀時に合わせたのか、少しでも早く会いたいと思ってくれたのか、会いたいから遅刻しても待っててくれたのか。
聞きたいことがいっぱいあったが、真っ赤になってる土方を見れば想像がついた。
「…遅刻して笑ってんじゃねーよ」
嬉しそうに笑う銀時に、土方が精一杯の文句を言ってくるが、それも可愛いくさえある。
「うん。すげーーー待たせてごめんな」
「……ふん……」
今日は遅刻した48分分、ちやほやしてあげようと思う銀時だった。
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即席っす、短いっす、申し訳ないっす(笑)
内容もベタだしねぇ……でも、銀土なら何をやっても良い!
可愛いなぁ、銀土。