原作設定(補完)
□その12
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#116 2015/08/17
万事屋で貧しい昼食を食べているとき、テレビのニュース番組に見慣れた制服が映っていた。
「あ、真選組。……ターミナル近くでテロみたいですね」
「あ、そ」
興味なさそうな返事をしたが、銀時の目はテレビ画面をじっと見つめてある姿を探してしまう。
だいぶ離れたところに立ち入り禁止のロープが張られているらしく、記者もカメラも近づくことができないようだったが、最近のカメラは性能がいいのだろう。グッと拡大されて忙しく動いている真選組を映していた。
そんな中、隊士たちに指示を出す真選組副長を捉えた映像が出た途端、銀時の胸にはもやっとしたものが浮かんで眉を寄せる。
いつでもどこでも、顔を合わせては嫌味ばかり言ってくるこの男が、銀時は気になって仕方がない。
“だぶん気に入らなくてムカつくんだろう”とずっと思ってきたのだが……。
「あ、土方さん」
画面を見た新八がそう言ったので、銀時はドキリとした。
「やっぱりイケメンですよね〜」
「あ?」
「土方さんですよ。この前、歩いてるところ見かけたんですけど、女の人たちが見つめたり振り返ったりしてて」
「銀さんのほうがイケメンだから」
「はいはい。ちょっと怖いというか、近寄りがたいタイプだから声はかけないみたいですけどね、モテる顔なんだなぁって」
「……たいしたことねーだろ」
「そうですか?よく見ると綺麗な顔してるんですよ」
「新八、キモイアル」
「一般的な意見だから!」
神楽と新八がギャーギャーと言い合っているのが、銀時の耳には入らなくなった。
“女にもモテるからって綺麗はねーだろ。メガネの度が合わなくなったんじゃねーの”
それを確かめられるほどには鮮明じゃないテレビ画面を見ながら、銀時の胸にまたもやもやが湧き上がる。
数日後、団子片手に町を歩いていると、ばったり土方に遭遇した。
「……相変わらず暇そーだな……」
「暇じゃないですぅ。労働の合間の休憩だっつーの」
「どうせ、前回の仕事と、次回の仕事の合間とか言うんだろ」
「うぐっ」
図星で反論できなくなった銀時に、土方は勝ち誇ったような笑みを浮かべる。
そのとき、先日新八に言われたことを思い出した銀時は、それを確かめたくなってしまった。
笑った顔をこんな間近で見るのは初めてだ。そして銀時にじっと見つめられていることに気付いて、しかめる顔。
時間にしたら短いものだったが、カメラで連写したように表情の1つ1つが胸のもやもやの上に落ちてくる。
“あれ? なんで俺ドキドキしてんですかね、これ”
「んだコラァ」
「…………いやいやいやいや、ねーから、ありえねーから」
そう言って眉間を押さえ、理解しがたい心の変化に戸惑いながら立ち去る銀時を、土方は怪訝そうな目で見送った。
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