原作設定(補完)

□その11
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一週間後。

息を吐きながら副長室の畳に倒れ込む土方。

掻き集めたら副長室に山を築いていた書類も、ようやく早急分が処理できて先が見えてきた。

その合間に、諸々のスケジュールを調整し、気の抜けた隊士たち(主に総悟)に気合を入れ、関係各所に謝罪に回ったりしている。

さすがに見回りには行けなかったので、あの日以来銀時にも会えていない。

天井をじっと見つめ、『近けーな』なんてあの4日間を思い出し、身体を起し携帯を手に取った。


「はいはい、万事屋銀ちゃん」

「俺だ」

「多串くんっ!仕事終わったか?」

「まだだ。…ガキ共は?」

「居ませんよ〜。なんですか、会いたいの我慢してる俺はそっちのけで、新八と神楽に何の用ですかぁ?」

誰も居ない部屋で電話片手に喜んだり拗ねたり忙しい銀時だったが、

「……今から行く」

土方がそれだけ言って電話を切ると、ぱーっと顔を輝かせて慌てて部屋の掃除に取り掛かった。


そんな銀時の様子を想像して土方もちょっと嬉しくなり、今夜は仕事をここまでにして出かける支度をする。

私服に着替えて刀を腰に差そうとして、ようやく刀がないことに気が付いた。

こんな大事なものを忘れてしまうほど忙しかったとはいえ、武士の魂と常に言っている土方らしからぬ失態だ。

そうして、よくよく考えてみれば小さくなっていた頃から持っていなかったような気がする。

土方はそのまま部屋を出た。


30分後、階段を上ってくる静かな足音に反応して銀時が玄関に飛び出して行くと、扉が開いたと同時に抱き付こうとして片腕でブロックされた。

「てめー…他のやつだったらどうすんだっ」

「俺が多串くんと間違うわけないでしょーがっ」

「だ、だからって、こんなとこで……」

ようやく賑わい始めたかぶき町。メインストリートはすぐそこで人目が気になるらしい。

反論しようとする土方の身体を片手で引き寄せると、もう片手で扉を閉める。

音が途切れた玄関で、何日ぶりなのか忘れてしまうほど久し振りの土方の身体を強く抱き締めた。

4日間一緒にいたのにほとんど触れられず(自業自得)、4日目には土方から少しの温もりだけ与えられてまた会えず。

銀時の寂しさと嬉しさが伝わってきたのか、土方も背中に手を回すが、それは逃げられないようにするためでもあった。

「俺の刀しらねーか?」

ぎくりと銀時の身体が強張った。知っているらしい。

「し、しし、知りませんよ」

「………」

「多串くん、最初から持ってなかったんじゃ」

「………」

「………」

「………」

「……知ってます」

無駄な足掻きをする銀時を無言で責め勝った土方は、うな垂れて奥の部屋に行って戻ってきた手ぶらの銀時が、

「はい」

と差し出した手のひらに、つまようじぐらいの大きさの、刀の鞘らしきもの、そして二つに折れた刀らしきものが乗っているのを見つめる。

細かいところは良く見えないが、おそらく土方の愛刀の成れの果てだろう。

「………」

「お、俺が折ったんじゃねーよ?ほら、多串くんが大槌Zで殴られるとき、刀を抜いて向けたじゃん?そんときに、そのままポッキリと……」

「………」

「一緒に小さくなったんだけど……こりゃ出せねーなって……お、俺のせいじゃないよね?」

「………」

「多串く〜ん」

「………」

「………」

「………」

「……俺のせいです」

しゅんとしてしまう銀時に、内心笑いながら土方は言ってやる。

「弁償な」

「ええぇぇえええ!! な、なんぼほどするんですか?」

「○○○万」

「無理ぃぃいいいい!!俺なんてにーきゅっぱをさらに分割で買ってんのにっ」

ワタワタしながらも、そこで銀時は何か閃いたらしい。にぃ〜っと嬉しそうに笑って、

「分かった。身体で払うから」

そんなことを言い出す。これから2人で何をしようとしているのかを踏まえての閃きだった。

しかしそれに言い負かされるような土方ではない。

「…てめーじゃあ、単価が安そうだしな」

「おまっ、銀さんの破動砲は……」

「一生かかっても払いきれるかどうか」

そう言って浮かべた土方の笑みに、言葉の意味を察した銀時がちょっと顔を赤くしながら答えてやる。

「……しょ、しょうがねー……一生かかって払ってやらぁ」

刀一本で一生縛られてくれる気らしい銀時に、良い買い物をしたなと思う土方だった。




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