原作設定(補完)

□その11
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「あ、腹減っただろ?飯、食ってみるか?」

そう言われてようやく腹が減っていることに気が付いた。

銀時が出してくれた飯は、当然何もかもが大きい。

前もって用意してくれたのだろう。針のようなものを切って作った箸と、子供のおもちゃで使われる皿に小さく切った食べ物がのっている。

ドキドキしながら食べてみたら、食感は悪いが味は変わらなかった。

「どうだ?食える?」

「うん。………あ、マヨ」

「……はいはい」

そう言って銀時が持ってきたマヨは通常サイズなのに、超巨大ボトルに入った大量の夢のような品物になっていた。

目を輝かせている土方に銀時はやれやれと思いながら、皿にほんの少〜〜しだけマヨを落としてくれるが、それだけで土方スペシャルが作れるぐらいの量だ。

「マヨ食べ放題っ」

「いやいや、身体に悪いかもしれねーだろ、ちょっとは制限……」

銀時の話は聞こえてなさそうな土方に、深い溜め息をついた。

はじめて身体が小さくなって良かったと思う土方だった。




ご飯を食べて満腹になった土方は、久し振りの万事屋を見回した。

日めくりカレンダーは確かにあれから3日経過していることを示していたし、テレビは………テレビのモニターに大きな穴が開いた斬新なデザインに変わっている。

「おい…テレビは?」

「見てのとおり、神楽が定春と暴れて壊したんだよ」

「……買えよ」

「飢え死にしろってかぁぁ!!」

相変わらずの貧乏っぷりだ。この様子では新聞も贅沢品だろうし、敢えて聞くのをやめた。

銀時が台所で片づけをしているので、土方は一人でやることもやりたいこともなくて、ゴロリと寝転がってみる。

狭いと思っていた部屋なのに、この身体では東京ドームの真ん中にいるみたいだ。

『………煙草……吸いてぇな……』

そう思ったとき、胸のポケットによく知った感触があって、飛び起きて手を突っ込んでみると煙草と愛用のライターが出てきた。

自分で入れたのだから入っているのは当然だが、問題はサイズだ。

そこでようやく、そもそも自分が隊服を着ていることに気付いた。

「なぁ、何か飲む…」

「おい!」

片づけを終えた銀時が戻ると、寝起きのときと同じようにプチパニック状態で土方が叫ぶ。

「隊服着てんぞっ」

「……見ればわかりますけど」

「じゃねぇだろっ!身体が縮むっていう病気かなんかだってのはあり得るとして、隊服や煙草まで縮むもんか!?」

手のひらに載せた煙草とライターもぐいと差し出してやるが、どうやら銀時には小さすぎてよく見えないらしい。

テーブルの側まで来ると、ちょっと困ったような顔で笑う。

「それひっくるめて今調べてっからよ、あんま焦んなって」

土方を落ち着かせようとしてそう言ってくれているのは分かる。だけど……。

「…ずっとこのままだったらどうするんだよ」

口に出すのを我慢していた言葉がとうとう出てしまった。

土方が目が覚めてからまだ数時間だが、こんなことになってから3日も経過しているのだ。一時的なものでないとしたら、戻れない可能性もある。

だが銀時は相変わらずののん気そうな顔でふざけたことを言い出す。

「ずっと面倒みてやるよ。定春に比べたら食費も安ぃもんだしな」

「さだっ……ペットじゃねぇぇええ!!」

「ひひ。…お前がずっと側にいるんだから、俺は楽しいんですぅ」

そう言って銀時が指を差し出したので、土方は辛そうな顔をして両手でそれに触れた。

会いたいのをずっと我慢していたのは銀時も同じだった。だから側にいるだけで楽しいと言う。

「…エロいことなにもできねーだろ」

「いやん、多串くん、大胆発言(笑)…んー…じゃあ、俺も小さくなればできるんじゃね?早速、小さくなる方法を探して……」

「俺が戻る方法を先に探せよっ!」

土方がいつもの調子でツッコむと、銀時は嬉しそうに笑う。深刻にならないようにふざけたことばかり言うのは彼の優しさだ。

銀時の指に頬を何度か擦り寄らせる。それしかできないのがもどかしかった。

その時、

「おはようございま〜す」

そう言って玄関からドカドカと入ってくる足音。

おそらく新八だろうが、土方は咄嗟にこんな姿の自分を見せちゃいけない気がして右往左往していると、顔を出した新八は土方を見るなり嬉しそうな声を上げる。

「土方さん、良かった。起きたんですね」

「…あ?…」

「なんか分かったか?」

どうやら新八も協力者のようで、買い物袋を床に置きながら銀時の問いかけに難しい顔をした。

「いろいろ聞いて調べてみたんですけど、まだ……」

「そうか」

「あ、でも、ついでに真選組の様子を見てきましたよ」

土方が身を乗り出したので、新八は笑って教えてくれる。

「元気そうでした。……って、3日しか経ってないんだから当然ですけど、土方さんがいなくて大変そうでしたよ」

「……当然だ。俺が毎日どんだけ忙しいか思い知れってんだ」

新八の言葉に嬉しそうな顔をしてしまい、土方は慌てて憎たらしいセリフを付け加えるが、顔が赤いので説得力がない。

銀時が頭を掻きながら立ち上がった。

「そんじゃ、次は俺が別ルートから調べてみるか」

銀時のやる気とは裏腹に、土方が不安そうにしているのが見えたらしい。

「あ、僕が行きますから銀さんはここに居てください。土方さん一人じゃ寂しいだろうし」

「………………(はっ)寂しくねーわぁぁああああ!!!」

新八の気遣いに少しホッとしてしまってから、心外なことを言われたことに気付いた土方がやっぱり赤くなりながら叫んだ。




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