原作設定(補完)
□その11
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苛立たしげに副長室に戻ってきた土方は、刀を置き、気を落ち着かせるために煙草を一本吸ってから、プレーヤーの前に座る。
聴いてはいけないものが録音されている気がするが、聴かないわけにはいかない。
ディスクをセットして再生ボタンを押した。
ご丁寧に必要な部分だけ取り出してくれたらしく、万事屋に乱入するところから始まり、そして、
“てめー……なんで俺と寝てんだっ!?”
『ぎゃぁぁぁぁあああああああ!!!』
声にならない叫び声を上げて土方は頭を抱えて畳に額を激突させた。
「な、なななな、なぁぁぁ?」
“そりゃあ最初はお互い酔った勢いだったかもしれねーけど、その後も続けてんのはなんでだっ!?てめーは貧乏だろうけど、寝る相手ぐらいいくらでもいんだろうがっ!何で俺だっ!!”
「……さ、最悪だ……」
沖田、それに他に隊士がいただろうし、万事屋では神楽の声も聞こえていた。
みんなの前で2人の関係をバラした上に、銀時を問い詰めるようなマネをして困らせてしまった。
なぜそんなことをしてしまったのかは分かっている。
もうずっと、身体だけを繋ぐ関係が嫌だと思っていたからだ。
それが銀時を好きだからなのだと気付いて、でも伝えることができなくて、それなのに銀時が関係を続けている理由が気になって。
大した理由があるはずもない。その証拠に、
“ったく、勘弁してくれ”
溜め息とともに銀時がついた呟きが、土方の胸に突き刺さる。
銀時は普段どおりの顔をしていたけれど、このことを知ってしまった以上、土方が普段どおりでいられない。
みんなにも知られてしまい銀時はこのまま身体だけの関係を続ける気はないだろう。
スピーカーからは長い沈黙が続いていて、沈む気持ちで停止ボタンを押そうとしたとき、
“ぷふふっ、ホント、おもしれーよな、コイツ”
銀時の楽しげな声が流れてきた。
「ぷふふっ、ホント、おもしれーよな、コイツ」
乱入してきてから寝てしまうまでの一連の行動を思い浮かべ、銀時は思わず笑ってしまった。
だらしなく口を開けて寝ている土方も、酔っ払ってくだを巻いてる土方も、真選組で鬼と呼ばれて戦う土方も、そして割り切ったような顔をして自分に抱かれている土方も、全てが愛おしい。
「……本当に覚えてんだろうな。覚えてなかったらプッ○ンプリン10個だからなっ」
身体を起し、そっと頬に触れた指先を滑らせる。
「…なんで、って……んなの……」
いつも寝ているときにしか気持ちを込めて触れることができない。
「……好きだからに決まってんだろ……」
寝ているのだから反応するはずがないと分かっていても、そう言葉にするのにドキドキしてしまった銀時。
案の定動かない土方を、再度横になってぎゅーっと抱き締めた。
「あ〜〜っ、もう、超可愛いっ!このまま添い寝だけとか、マジ鬼ですかコノヤロー」
苦しくてうなされるようにしかめた顔も可愛いなと思いながら、やっぱりこういうのも悪くないかな、と訂正して眠りについた。
「………っ………」
嬉しすぎて泣きそうになるのを我慢したら息もできなくなり、土方は顔を伏せたまま苦しげに顔を歪める。
声だけで分かるぐらい優しい声で、土方がずっと欲しかった言葉をくれた。
『…あの…バカ………録音されてることも知らねーで……』
あんな言い方をしても、朝になって土方が覚えていなかったことにホッとしていたはずだ。
土方は身体を起し、停止ボタンを押してから立ち上がった。
「……会いに…行かねーと……」
土方の気持ちを伝えるため……というよりも、謝罪しに。
『録音されてて、しかも総悟が聞いてて…いずれ屯所中に広まるって知ったら、いくらアイツでも怒る!!』
自分がそんなことをされたらドン引きして嫌いになるかもしれない。
落ち込みそうになるのをグッと我慢して、仕事を放り出して行くことはできない性分だったため、とりあえず隊服に着替えた。
隊士たちの前に出るのは針のムシロかもしれないが、それは自業自得なので気合を入れて無視すると決めた。
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