原作設定(補完)

□その11
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#110  2015/08/06


かぶき町を疲れた顔で土方は歩いていた。

長い連続勤務で心身ともに疲れ果て、一緒に来たはずの沖田が居ないことにも気付かない有様だった。

それでも、本来副長自ら出て来なくていい現場にフラフラやってきたのは、少しでもいいから“疲れを癒す元”に会えないかと思ったから。

『……逆に疲れるときもあるけどな……』

自分でツッコミを入れて小さく笑ったとき、右側の路地から延びた腕に掴まれてそのまま引っ張り込まれた。

「!!!?」

油断していた後悔と緊張が走るが、腕を掴んでいる背中に白いもふもふを見つけてホッと息を付く。

「ちょ……万事屋っ……」

会えたことが嬉しいのに喜ぶ間もなくどんどん奥へ入っていく銀時に、何か様子がおかしいと声をかけようとしたら、突き当りの壁に背中を強く押し付けられる。

「痛っ……おいっ」

不満を言おうとした口はそのまま塞がれた。

乱暴に繰り返されるキスは、後頭部を左手でしっかりと掴まれているので反らせず、身体も足も固定されていて動かない。

唯一動く手で押したり叩いたりしてみたのだが効果がなく、本気で殴れば分からないが銀時相手にそんなことはしたくない。

「……んんっ………っ………ふっ……」

かろうじて細く呼吸はできているものの、手にも身体にもだんだん力が入らなくなってきた。

それが分かっているのか、銀時の土方の首筋とか背中とか弱いところをなぞるので余計に力が抜ける。

『久し振りだってのに……このバカっ、アホっ、エロガッパっ!!』

土方の心の中の悪態が聞こえたのか、銀時の唇は離れたものの、そのままぎゅーっと抱き締められた。

足りない酸素を急いで補いながら、

「……はっ……はぁ……っ……な、なにを……」

怒気を含む土方の声に、銀時はすかさず言い訳を挟んだ。

「俺のせいじゃねーしっ……デートをたて続けにキャンセルキャンセルキャンセルキャンセルキャンセルで、銀さんもう我慢の限界なんですけどっ!」

限界さが伝わってくるような呟きに、心当たりがある土方は何もいえなくなった。

『……さすがに5回連続キャンセル(フォローなし)はマズかったか……だからって……この状況……………まさか、ここで!?』

銀時の暴走振りに、ここのまま突っ走り兼ねないと焦る土方だったが、

「…や……だからって……」

「だーけーどっ………お前の嫌がることも困ることもしませんっ、銀さん大人だからねっ!」

とても大人とは思えないような拗ねっぷりだが、土方は“我慢”してくれているのが嬉しかった。

「だから、早急に時間をとってください、お願いします」

「……遅く…なるかもしれねーけど…電話する………今日……」

上手く行けば夜までには片付くかもしれない。本当はこんなヘトヘトな状態で会いたくはなかったのだが(会えばもっとヘトヘトになるから)仕方がないようだ。

土方のすまなそうな声に、暴走したことを反省したのか銀時の返事はか細かった。

「……うん。ありがと」

『礼言われた……そんなに?』

土方が内心で笑って一件落着したのに、銀時は抱きついたまま離れようとしない。

土方もなんとなく離れ難いなと思って抵抗せずにいると、胸のポケットに入れてあった携帯が鳴った。

「……俺だ…………あー…ちょっと。すぐ行く」

かぶき町を巡回している隊士から居場所を確認する電話にそう答えると、ようやく銀時が身体を離す。

「仕事の邪魔してゴメン」

土方が忙しいのも大変なのも分かっているのに、姿を見たらぷつんと切れてしまった自分が情けなくて恥ずかしい。

しょぼんとした銀時に、

「……いい。それより……」

腕を掴んで立ち位置を入れ替わり、今度は銀時の背中を壁に押し当てると、土方から唇を重ねた。

さっきみたいな強引なものじゃない優しいキスを何度も繰り返す。

嬉しくなった銀時が再度暴走するまえに身体を離すと、

「夜までおとなしく我慢して待ってろよ」

そう言って笑うと、ひらりと背中を向けて路地を出て行った。

どこまでも男前な土方に、めまいがして銀時はそのまま地面に座り込み、がっくりとうな垂れる。

「よけい我慢できなくなんだろコノヤロー」

力なく呟く銀時だった。






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イチャイチャしただけの話でしたっ。
すみません、ヘタレなのでそのまま勢いでやっちゃったりとかしません(笑)
オチに、「今日も無理」ってのは可哀相なので、
ちゃんと会って、もっとイチャイチャしてればいいなと思います。


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