原作設定(補完)

□その11
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#108  2015/08/04


ある日の午後、万事屋に玄関チャイムの音が鳴り響く。

「はいは〜い、と」

新八が居ないので銀時が、めずらしく足取り軽く応対に出る。

なぜめずらしいかと言うと、昨日貰った依頼料で溜まった家賃……の半分を払ったため、取立てはしばらくないと踏んでいるからだ。

「ご用件は…………あ?」

依頼者向けのうさんくさい笑みで玄関を開けるが、そこには誰も居なかった。

玄関から首だけ出して左右を見回すが、やっぱり誰も居ない。

「……いたずらかよ。いまどきピンポンダッシュって……」

ブツブツ言いながら銀時は中へ戻って行った。



翌日の午前中、再び万事屋に玄関チャイムの音が鳴り響く。

「……新八ぃ……は、まだか」

遅い朝食を食べ終わり、神楽が元気に遊びに出かけた静かな万事屋には銀時しか居なかった。

ぼりぼりと尻を掻きながらのんびり歩いて玄関を開けると、

「はいはー………あ?」

そこには誰も姿も無く、首だけ出して左右を見回すが……居ない。

「またかよ。なんですか、流行ですか」

わざわざ靴を履いていたずらの主を探すのはめんどうだと中へ戻ろうとしたとき、ふわんと知った香りが鼻を掠める。

「……んー?……」

しかし気のせいだろうと扉を閉めた。



さらに翌日の午後、三度万事屋に玄関チャイムの音が鳴り響く。

「は〜い………あ」

新八が出ようとするのを手で止めて、銀時が玄関に向かうと靴を手に持ち、扉を開けたが今日もそこには誰も居ない。

「あ〜〜?またかよぉ、どこの悪ガキですかぁ」

不満そうな声を上げて、後ろ手に扉を閉めると裸足のままこっそり建物の陰から階段を覗く。

そこには私服の土方が挙動不審な背中を見せて立っていた。

『やっぱり』

昨日の香りは土方の吸ってる煙草だと、後になって気が付いたのだ。

扉が閉まったことで油断しているのか、しょんぼりとしている背中に声をかけた。

「真選組の悪ガキじゃん」

「!!!!!」

身体を硬直させて慌てて振り返った土方は、にやにや笑っている銀時にからかわれているんだと即座に認識して眉間にシワを寄せる。

「どした? なんかあったのか?」

からかいはしたものの土方が何の理由もなしに万事屋をうろうろするはずがないと思っているので、そう訊ねる銀時に、

「ちがっ……………こ、これ…貰ったからお前にやろうと思って……」

土方は一瞬焦り、それから顔を赤くしながらおずおずと一枚の紙切れを差し出した。

そこには、甘味好きなら誰でも知っている大きなケーキ専門店の“食べ放題招待券”と書かれている。

「ん? あっ、ケーキ食い放題っ」

「こ、このあいだの任務で、巻き込まれたやつがそこの関係者だったとかで……救助のお礼にって、みんなにくれて……」

「へえ。ヤロウばっかりの真選組にケーキ食い放題ねぇ」

「や、みんな以外と楽しそうに行ってきたみてーだ」

「で? お前は行かねーの?」

「あ?お、俺は……甘いもん、嫌いだし…………おめーみてーな貧乏人はどうせ行けねーだろーからくれてやろーと思ってっ」

言い訳をするように最後はちょっと偉そうに振舞った土方に、銀時はチケットをもう一度見てから、持っていた靴を履いた。

チケットには“2名様まで”と書かれている。

「……お前さ、私服なんだから非番だろ。一緒行こうぜ」

「あ?だから俺は……」

「甘くないケーキもあるって。な?」

そう言って銀時が笑うので、土方はそれ以上何も言わずに着いて行った。



20分後、そのケーキ専門店に着くと、大きなガラス窓から店内の様子を見ることが出来たが、平日なのでびっちりというほどではなかったが見渡す限りの女、女、女。

「………女ばっかじゃねーか」

「ケーキだからね」

「……俺はいい、帰る。てめーは一人でも平気だろ」

ファミレスで一人でチョコパフェを食べられる銀時と違い、土方はこんな店に入ったこともないのだ。

「え〜、2名様なのにぃ、もったいねーじゃん」

「そのへんの女誘って行ったらいいじゃねーか」

帰ろうとする土方を銀時は引き止めるが、つい口をついて余計な言葉で言い返してしまう。

銀時の笑みに悲しみが混じった気がした。

「……マジで言ってんの?」

「……っ……」

言わなくてはいけないときには言えない土方に、

「……ま、いいけどさ〜」

銀時は呆れたようにそう言って、土方の意見に添うようにキョロキョロっと辺りを見回した。

土方は顔を背け、心の中で呟く。口に出せない自分が情けない。

『…いいわけねーだろっ』

そして、そんな土方を視界の隅で確認した銀時は満足げに笑う。

素直になれない土方も、そんな自分が嫌だと思っている土方も、銀時にはついついからかったりいじめたりしたくなるぐらい可愛くて仕方がないのだ。

「やっぱ無理」

落ち込む土方の腕を掴んで店内に入って行こうとする。

「ちょ……おいっ……」

「チケット渡すのに毎日ピンポンダッシュしちまうお前が一番可愛いわ」

「き、昨日と一昨日のは俺じゃねぇぇ!! ………あ………」

「ぶははっ」

知ってるということは白状したようなもので、真っ赤になる土方に、やっぱり可愛いなと嬉しくなってしまう銀時だった。





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あー………暑くて何も考えられません。
なのでついつい簡単な原作設定に手を出してしまいます(笑)
土方が可愛いなぁと思ってる銀さん、が好きです。
あえて二人の関係がどこまで進んでるのか書きませんでしたが、
どこでもイケるかな?(笑)


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