原作設定(補完)

□その11
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#107  2015/08/02、03


乱暴に扉を叩く音で銀時は布団から飛び起きた。

時計を見ると0時を過ぎていて、舌打ちしながら向かうのは玄関。万事屋なんてものは24時間営業みたいなもので、こんなことも稀にある。

「はいはい、いま開け…」

そう言いながら玄関の鍵を開けると同時に飛び込んできたのは、

「万事屋ぁ、コラァ!生意気に鍵なんか閉めやがってっ!盗られるもんなんかねーだろっ!」

私服姿の土方十四郎だった。顔は真っ赤で足取りはふらふら目は虚ろ、完全に酔っ払っている。

「…土方? おま、それは警察官のセリフじゃねーよ」

珍しい、と言うか、こんな状態で初めての来訪に銀時が迷惑そうに呟くと、土方に胸倉を掴まれた。

「てめーに聞きてーことがあるっ」

酒臭い息が匂うほどの距離まで詰め寄られていると、背後の扉が開いて眠い目を擦りながら神楽が出てきた。

「何アルか〜…うるさくて眠れないアル」

「ほら、子供の安眠妨害してんじゃねーよ。聞きたいことってなんでしょうか?」

お互い酒癖の悪いことは知っているので、銀時が適当に合わせてみたのだが、

「てめー……なんで俺と寝てんだっ!?」

そう言われてさすがに驚いた。

「は……はあ? ちょ……」

「そりゃあ最初はお互い酔った勢いだったかもしれねーけど、その後も続けてんのはなんでだっ!?てめーは貧乏だろうけど、寝る相手ぐらいいくらでもいんだろうがっ!何で俺だっ!!」

「ひ、ひひ、土方ぁぁ!!」

あわあわしながら、喚く土方の口を塞いでみたが時すでに遅し。

神楽が冷め切った目で2人を見つめ、

「……うるさくすんじゃねーぞ、この腐れホモがっ……」

ヒロインに有るまじき辛辣なセリフを吐いて部屋(押入れ)に戻って行った。

口を塞がれたまま暴れる土方を押さえつけながら、銀時はがっくりと肩を落とす。

「ったく、何ぶっちゃけてくれちゃってんの、この子」

「ぶはっ!苦しいだろうがぁぁ!!てめー……」

「はいはいはい。また神楽に怒られるからこっち来なさいよ」

土方を引っ張ってリビングへ行くがここだとまだ神楽に聞こえるかもしれないので、和室のほうへ連れて行く。

敷かれた布団を見て土方が眉間にシワを寄せた。

「……やっぱりヤリてーだけかよ……」

「今、夜だからっ!普通に寝てただけだからっ!」

不名誉な誤解にすかさずツッコミを入れてみたが、土方はプイッとそっぽを向いてしまう。

『本当にヤッたろか、こいつっ』

ムッとしたものの、相手が酔っ払いだったことを思い出し、銀時は気を落ち着かせてから土方を布団の上に座らせた。

「で?なんなんですか、さっきのは」

「何って、そのままだろーがぁコラァ」

まだ酔いが醒めないようで身体をグラグラさせながら土方が唇を尖らせるので、銀時は溜め息を付きながら頭を掻く。

酔っ払いの暴走だったが土方の言っていることに間違いはない。酔った勢いで身体を重ね、その関係は今も続いていた。

だが、それに理由を持たせたくないのは土方のほうだと思っていた。

「……なんで、んなこと聞きてーんですか」

「変だろうが、なんで俺だよっ。女が好きなら普通に女を抱いとけよっ」

むーっと拗ねたような顔をしながらくだを巻く土方に、銀時は困ったように息をつく。

言わなきゃ納得してくれないような迫力があった。

「……別に教えたっていいけどよー……んなに酔ってたらどうせ覚えてねーだろーが」

「ああ!?真選組の智将と呼ばれる土方十四郎様をなめんなっ!酔ってようが寝てようが、ちゃんと覚えてるわぁ!!」

普段しない物言いでぐっと迫ってくる土方に真っ直ぐ見つめられて、銀時は一瞬言葉に詰まり、それからその肩を掴んでそのまま布団に突っ伏せさせた。

「ふがっ!なにすんだぁっ」

「うるせ」

あんな顔で見られたら言いたいことも言えなくなってしまう。

ぶーぶー文句を言っていた土方が大人しくなると、銀時は深呼吸を数回。

テンパって変なことを言ってしまわないように頭の中で整理し、いざと土方を見たら、

「……すー……すー……」

寝ていた。

「……そんなオチだろうと思いましたっ」

掛け布団をばさっとかけて隣に寝転がり深い溜め息。

「ったく、勘弁してくれ」



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