原作設定(補完)
□その11
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#106 2015/08/01
ふと目を覚ました土方は、何も着ていない状態で布団に寝ていることに気が付いた。
「……寒っ……」
自分を包む空気の冷たさに思わずそう呟いて掛け布団を手探りしていたら、後ろから手が伸びてきて抱き締められる。
寝惚けていた目はぱっちりと覚め、こんな近くに人がいたのに気配に気付かなかったことに衝撃を受けながら、土方は記憶を必死に辿った。
昨夜に酒を飲んだことは覚えてる。だけど覚えている限りはずっと一人だったはずだ。
部屋の様子からラブホのようだし、伸びてきた手をチラリと見たがゴツゴツした感じは男の手。
土方にとっては愉快な話ではないが、綺麗な顔立ちと細身の身体のせいか土方は男から“そういう意味”で良くモテた。
何かされてしまったのだろうかと思わず身体のあちこちに意識を向けるが違和感はない。
だが何も覚えていないし、この腕が誰のものなのか分からないので振り向けないでいると、
「ふっ。おめっ、なに緊張してんの」
聞き覚えのある声がすぐ後ろから聞こえた。
「…………万事…屋?」
「おう」
となると、この抱き締めている腕も銀時のものなのだろうと認識したら、急に心臓が暴走しだした。
銀時の腕も、背中に触れている肌の感触も、おそらく素肌なのだと思う。
『……まさか……』
銀時に対しての自分の気持ちを自覚しているからこそ、土方は動揺を隠せなかったが、
「な、何で」
「心配しねーでも、なんもしてねーよ」
銀時は苦笑気味にそう言って、経緯を説明してくれた。
「昨日飲んだことは覚えてっか?」
「……ああ……一人で……」
「俺に会ったときも一人だったよ。お前誰?って思えるぐらいにぐでんぐでんに酔っ払ってて…」
「………」
「俺の顔を見た途端からんできて…」
「………」
「ろれつの回んない早口で何か喚いたと思ったら…」
「………」
「ゲロゲロゲロ〜、っと」
『ぎゃぁぁぁあああああ!!!』
背中を向けているのだから見えないのに、土方は思わず赤面して顔を覆った。
吐くほど飲んだのなら記憶があるはずがない。
「そ…そそ、それで…?」
「んで、俺もお前もゲロまみれだし?このまま歩いて帰るわけにはいかねーだろって思ったらこのホテルが見えて」
「………」
「着物脱がせてベッドに放り込んだ途端お前はグーグー寝ちまうし、銀さんは服を洗って干して乾くのを待ってる間、寒いんで同衾させてもらったわけです」
よく見たら部屋の隅に二人分の着物が掛けられていた。
「す……すまねぇ……」
「いいえ。あ、宿代はお前の財布から出したから。ご宿泊にしたし、もう少し寝てれば」
そう言って銀時は布団をしっかりと掛けてくれた。
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