原作設定(補完)
□その10
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翌日談
机に山積みの書類の中から急ぎのものだけを片付けて、土方はぷらりと屯所を出てきた。
『…べ、別にアイツのことが気になったわけじゃねーから。やりすぎちまったかな、なんて思ってねーから…』
と見事なツンデレを発揮しつつ足はかぶき町へ向かい、その途中で新八と神楽に遭遇する。
「土方さん、こんにちは。昨日は銀さんがすみませんでした」
神楽から事情を聞いた新八が先手必勝で謝ってくるので、土方も一緒に居ない銀時のことを素直に聞くことができた。
「……アイツ、どうしてる?」
「朝になったら真っ白に燃え尽きてました」
「銀さん、元から真っ白アル」
「言葉のアヤだよ。今日は依頼が入ってたので、今は仕事に行ってます」
「………へえ。ずいぶん立ち直りはえーな」
「あはははは。そりゃあ、銀さんだって大人なんですから、いつまでも引きずっては……」
万事屋でまだヘコんでるんじゃないかとの予想を裏切られた土方の呟きに、新八が動揺しながら乾いた笑いで言い訳をするが、神楽がそれを台無しにしてくれる。
「まだ他にもあるアル」
「!!?」
「神楽ちゃんっ!!」
「銀ちゃんの部屋からも不気味な笑い声が聞こえてたね」
心底嫌そうな顔の神楽と、年頃の男として銀時の気持ちも分かるし宝物を守ってやりたいと思う新八。
昨夜の銀時の慌てっぷりに、写真はあれで全部なのだろうと思い込んでしまったが、どうやらそうではないらしい。
『まだあんなモノが他にも?』
そう思うと土方の顔に黒い影がおちる。
「……おい……」
「いえっ、あのっ、そのっ、もしかしたらまだ写真があるんじゃないかな〜なんてことは言いませんよっ、絶対っ」
「言ってるアル」
「………家に帰るんだろ。送ってやる」
「そんなっ、お忙しい土方さんにそんなお手間はっ!なんのおもてなしもできませんしっ!」
「遠慮すんな。茶ぁの一杯でも出してくれりゃあいい」
うすら笑う土方の申し出を、断る勇気は新八にはなかった。
万事屋に到着するやいなや、ズカズカと中に入りながら土方が聞いてくる。
「どこだ?」
「……え〜と……」
「言わねーんなら、片っ端から引っ掻き回すぞ」
そうなれば片付けるのは当然新八なわけで。
「……銀さん、大事なものはタンスの一番下の引き出しに隠します」
素直に白状した新八に言われたとおり和室へ入りタンスの引き出しを開けると、いつも着ている白い着物が何着も入っていた。
それを引っ張り出してみると、着物の間から小さくて薄目の箱が出てくる。
箱には“真・銀さんの宝物”と書いてあった。隠している割には自己主張の激しい箱だ。
昨日の写真に写っていたおぞましい自分の姿を思い出し、眉間に深いシワを刻むと乱暴に箱を開けた。
中から出てきたのは想像に反して、隊服、いつもの私服を着た土方の写真だった。
数枚“昭和のアイドル”的なキメポーズをしているものがあったが、後は全て、笑ったり、拗ねたり、照れたり。なんでもない普通の写真だ。
しっかりカメラ目線でアップだし、銀時が撮ったものには間違いない。
「………っ………」
昨日、懇願する銀時を無視して全ての写真を粉砕したのは、もちろんあんなモノを残すわけにいかないせいでもあったが、写真を見て頭に血が上ったからだった。
あんな女が着る服を着て女がしてみせるポーズで……やっぱり女のほうがいいんじゃないかとムカついて……。
なのに、大事に別な場所に隠した写真は、いつもの土方ばかりだった。
どんな気持ちでこの写真を撮ったのか、思い浮かべると胸が熱い。
「…あの…バカ……」
そう呟いて、土方は近くにあったペンやハサミの入った筆立てを掴んだ。
夕方になり、帰宅した銀時を土下座の新八が迎えた。その隣で神楽も渋々正座している。
「すいまっせんっでしたぁ!」
「……何が? 謝ってもすまないことだってあるからね」
「それが……今日、土方さんに会いまして……神楽ちゃんがまだ写真があるってバラシちゃって……」
「はぁぁぁあああ!?なにしてくれちゃってんのぉぉおおお!!」
「バラシしたのは新八アル」
「元はと言えば神楽ちゃんが…」
2人の責任の押し付け合いは放置して、銀時は和室に駆け込んで行く。
引き出しを開けると着物が適当に突っ込んであり、その上には大事な箱が置いてあった。
慌てて開けて中身を確認すると、写真は無事だし、枚数もちゃんと合っている。
「何ともなってねーぞ」
「あれ?だって土方さん、怒って帰って行きましたよ」
ほっとする銀時に、襖の向こうからこっそり覗いた新八が答えた。
『なんだ?』と思いつつ写真を裏返してみると、そこには……
“バーカ”
“バーカ!”
“バーカ!!”
“バーカ!!!”
そう一枚一枚に殴り書きのメッセージが残されていた。
写真を見て顔を真っ赤にしている土方が目に浮かぶ。
『照れ隠しですかコノヤロー』
昨日あんなに怒らせてしまって次に会えるのはいつになるのか心配していたが、この分なら早く会ってくれそうだと嬉しそうに笑った。
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あれだけじゃ銀さんがあんまりなので、仕事中に考えました!
銀さんっ、可愛いっ!!(笑)
やっぱり普通の土方が好きなんだよ、そうなんだよ。