原作設定(補完)
□その10
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#92 2015/07/02
真選組屯所、副長室。
「やっぱり自分が一番だな〜」
土方十四郎はしみじみしながら寝転んで煙草を吸った。
万事屋の坂田銀時と魂が入れ替わった身体を取り戻し、他のやつらもなんとか元に戻してやっと落ち着いてきたところだ。
吸って吐いて吸って吐いてを繰り返していくうちに、だんだん現実が戻ってきて、現実逃避をしていても仕方ないと身体を起す。
目の前の文机には大量の書類。それを処理し始めてすでに一日が経過していたが、一向に減る気配がない。
それもそのはず。
「副長、追加です」
山崎がそう言って書類の山を机に置いた。処理する以上の新しい書類が届くので減らないのだ。
銀時が放置していた書類、一連のいざこざでひそかに対処しなければならない書類、それが全部土方に回ってきていた。
「………」
八つ当たりで山崎を無視し、次の書類を手に取り目を通して眉間にシワを寄せる。
経費として申請した書類だが、購入品一覧に『貸衣装代、使い捨てカメラ代、写真現像・焼き増し出し代』と記入してあった。
潜入捜査などで必要なこともあるから品名として不自然なところはないが、眉間のシワの原因は、どれも通常よりかなり高い金額だ。
書き終った書類を提出するために整理している山崎に聞いてみた。
「おい、なんだコレ。なんに使った?」
「それは先週、副長が重要任務だって……ハッ」
「……それは俺じゃねぇ」
「…坂田副長でしたね」
「そんなヤツはこの世界にいねぇ」
書類をぐしゃりと握り締めた拳を震わせる。
銀時が使ったというのなら、その“重要任務”を想像するのは簡単だった。
夜、万事屋へやってきた土方は無言でずかずか中へ入り、きょとんとしている2人(新八は帰宅済み)にかまわず銀時に近づくと、座っている椅子ごと蹴り倒した。
当然床に転がった銀時が起き上がって文句を言おうとする前に、机の引き出しを次々開けて“銀さんの宝物 開けたら殺す”と書かれた箱を取り出す。
「ぁぁああ!それはっ!」
箱の中には大量の写真。
セーラー服、ナース、エプロン、猫耳、ゴスロリ………の衣装を着こんでグラビアモデル並みのポーズを決めている、土方十四郎の写真だ。
「てめぇ……変態かぁぁあああ!!」
「写真だけ見たら変態はお前…」
それが事実だけにムカついて、思い切り頭を殴りつけてやった。
つまり、銀時は土方十四郎の身体に入っているのを利用して、貸衣装でお好みの服を調達し、使い捨てカメラで自撮り、現像した上、お気に入りを焼き増ししたのだ。しかも真選組の金で。
これだけのせくすぃぽーずを自分でやって自分で撮ったかと思うとなかなか哀れではあるが、見た目が土方な以上、これをこの世に残しておくわけにはいかない。
土方は大きめの箱を机の上にドンと置いた。箱からは家庭用電動シュレッダー(1980円税別)。
「まさか……土方っ!」
それを見て土方がやろうとしていることに気が付いた銀時が、いつになく真面目な顔で立ち上がった。
土方は素早く懐から酢昆布の小箱を取り出し放り投げ、
「神楽っ」
と言うと、ソファで正座してた神楽が目にも止まらぬ速さでそれをキャッチし、開けて食べ、銀時の後ろに回りこんで腕を掴んで締め上げた。
「ちょっとぉぉ、神楽ちゃんっ!?」
「条件反射アル」
入れ替わりのときにすっかり手懐けられてしまったのが身に沁みて残っているようだ。
神楽の馬鹿力に銀時が敵うはずもなく、動きを封じられてしまった目の前でシュレッダーはコンセントに繋がれ、
「やめろ………やめろぉぉおおお!!」
別の漫画みたいなシリアス顔で叫んだ銀時を無視して、土方は写真を掴むとシュレッダーに挿入。
ガリガリガリッと無常な音をたてて写真は木っ端微塵にされていく。
「ぎゃぁぁああっ、鬼ぃぃぃいいい!!」
我が身の汚点が次々と粉砕されていくのが楽しそうな土方に、銀時は血の涙を流し(ててもおかしくない気持ちで)懇願する。
「ちょっ、おまっ! 少しぐらい残してくれたっていいだろうがっ!」
無駄な叫びかと思われたが、土方はそれを聞いてピタリと手を止める。
そして嬉しそうな顔をする銀時に、シュレッダーの上部を指差し、
「こんな機能もあるんだぞ、すげーな」
“ネガ挿入口”と書かれた小さい枠の中に、“銀さんの宝物”に入っていた現像後のネガを突っ込んだ。
「!!!!!!!」
ジグソーパズルをするのは到底不可能なぐらいに細かくされていく夢と希望の結晶。
銀時の声にならない叫び声が響き渡る。
翌朝、新八が出勤してくると、土方の置き土産のシュレッダー抱いて燃え尽きる銀時が居た。
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アニメ2クール目のOP初見でテンションの上がったため、
魂入れ替わり閑話を書いてしまいました(笑)
銀さんならこのぐらいやってそうだよね、超嬉しそうに。
だから他の方とネタ的にはカブルでしょうが、いいんです(笑)