原作設定(補完)

□その10
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#94  2015/07/05


「ぶへっくしょんっ!!」

自分のくしゃみで目を覚ました銀時は、うすぼんやり明るい天井を見つめた。

窓のほうが若干明るいということは、まだ陽が上りきらない早朝のようだ。

そのせいかやたら寒くて身体を縮め、『あれ?』と違和感に気付く。

場所こそ布団の上だったが銀時はマッパで身体を覆う物は何もなく、早朝の冷えた空気が容赦なく銀時の体を冷やしていた。

チラリと視線を横に向けると、そこには土方の姿。

昨夜は非番を前に土方が泊まりに来て当然イチャイチャしたわけなので、銀時がマッパなのも土方が居るのにも問題はない。

静かな寝息をたて、布団を身体にぐるっと絡めてぬくぬく幸せそうな顔の土方にきゅんとしながら、銀時はもう一度大きなくしゃみをした。



ピピピッという電子音に、銀時が脇の下に挟んだ体温計を取り出し、

『うげ。39.2度』

だからこんなに頭がグラグラしているのかと納得していると、横からぬっと出てきた手に体温計を取り上げられる。

布団の横に正座した土方が、表示を確認してしょんぼりと肩を落とした。

2人でかけていた布団を独り占めして寝てしまったせいで、銀時に風邪を引かせてしまったことに落ち込んでいるようだ。

「あ〜〜……大丈夫だから……」

「……ん……」

本気ですまなそうな顔をする土方に、『うわっ、可愛いっ』などと考えているのだからそこまで落ち込む必要はないのだが、そうなる理由がもう1つあった。

今日は、先週から開催されている“マヨリン博覧会”に行く予定だったのだ。

某マヨネーズ会社の歴史とマヨリングッズとマヨネーズ料理が満載の、マヨネーズ好きにはたまらない期間限定の催しらしい。

銀時にはもちろん毛ほどの興味もなかったが、告知ポスターを握り締め目を輝かせながら懇願する土方に逆らうことができるはずもなく。

それでも、土方がずっと楽しみにしていたのを知っていたので、銀時も最初は熱をごまかして行こうと思っていた。

だが出発するまえに見破られ、布団に押し込められた上での現状。

可哀相なぐらいガッカリしている土方に、打開策を提案してやる。

「もうすぐ新八らが来るから、あいつらと一緒に行って来いよ」

「あ?だけど…」

「大丈夫だよ。帰りにうまいもんでもたらふく食わしてやるって言えば、喜んで着いていくから」

「………」

最近では新八と神楽とも仲良くしていることが多いので、そうなれば喜ぶかと思ったのに土方の暗い顔色はまだ晴れない。

そうしているうちに2人が帰ってきてその話をすると、スポンサーが土方となれば断る理由もないので早速出かけることになった。
神楽が急かす中、

「……万事屋……」

土方が心配そうに顔を覗き込んでいるから、銀時は笑ってやる。

「大丈夫ですぅ。いってらっさい」

「……うん…いってくる」

三人が出かけて静かになった万事屋で、銀時はようやく深い溜め息をついた。

マヨネーズに囲まれて嬉しそうな土方はさぞかし可愛いだろうな、とそれを見れなかったのを残念に思いながら目を閉じる。



どのぐらい眠っただろうか。ふと目を覚ました銀時は、頭がひどく重く息が苦しいことに気が付いた。

寝ていれば治ると思っていたのだが、どうやら悪化しているようで身体が動かない。

喉が渇いているのに枕元にあるはずの水を取ることもできそうになかった。

『…あ〜……しまったなぁ……』

こんなところを帰ってきた土方が見たら、またしょんぼりしてしまうのに。

「……ひじ…かた……」

「ん?」

銀時の小さな呟きに答えて、土方は布団の脇に座り洗面器の水で冷やしたタオルを銀時の額に乗せた。

驚く銀時は、三人が帰ってくる時間なのだろうかと思ったが、窓から差し込む日差しは夕方には見えない。

「…もう…帰ってきた…のか?」
そう聞くと土方は、眉間にしわを寄せて不機嫌そうな顔になり、言った。

「…てめーが一緒じゃなきゃ…意味がねー…だろーが…」

その顔は今日何度も見ていた。マヨリンに会いに行けないからでも、銀時を置いていくのが心配だったからでもない。

土方だって、一緒に出かけて楽しそうにしてくれる銀時を見たかったのだ。

「…アイツらは?」

「うまいもんたらふく食えって金だけ渡してきた」

喜んですっ飛んで行く神楽と、慌てて追いかける新八の姿が目に浮かぶ。

笑おうとして喉が渇いていてむせる銀時に、土方は歩狩汗を手に取った。

「ホラ………飲めるか?」

「…………無理…」

土方の前なのだから気合を入れて頑張ってみたら動けないこともなかったのだが、さっきからずっと土方が可愛いので甘えてみたくなる。

歩狩汗を開けて土方は自分の口に含むと、寝たままの銀時の口に運んで唇を重ねた。

少しずつ、何度も繰り返し、ようやく喉が潤った銀時が笑う。

「……風邪、移るぞ……」

「俺はそんなにヤワじゃねー」

銀時が動けないので、土方は隣に寝転んでぎゅっと抱き締めてやる。

布団越しなので感触も体温も全く感じられないが、銀時は嬉しそうに笑った。

「終わる前になんとか非番ねじ込んで、仕方ねーから連れて行きやがれコノヤロー」

「それまでに治して一緒に行きやがれコラァ」

大変な思いもしたし、大変な思いもさせたけれど、やっぱり2人で一緒にいるのがいいなと思う二人だった。





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これは出来たてホヤホヤのネタです。
昨夜寝るときになんか風邪っぽいなぁと思いながら考えたので、
メモもないし、冒頭だけであとは全然決まってないしで、
すげー時間がかかってしまいました……。
でもちゃんとイチャイチャできたからいいやっ。




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