原作設定(補完)

□その9
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数日後、ようやく時間が取れた土方は躊躇いながら万事屋にやって来た。

チャイム鳴らして待つと、ガラッと開いて銀時が出てくる。

いつもだったらここでぱーっと嬉しそうな顔をするのに、眉間にしわを寄せて溜め息をつき言った。

「…なにか御用ですかぁ…」

その落ち着いた言い方は冷たいほどで、本当に別れ話になるんじゃないかと土方の返事も暗くなってしまう。

「………話が…ある………」

「あっそ、どうぞ」

銀時はそっけなく答えて中へ入っていくので、土方は落ち込みながら後を追った。

正直、付き合うようになってから銀時にこんな扱いを受けたことはない。

どんなに会えなくても待たせても、笑って嬉しそうに迎えてくれる銀時に甘えていた報いだ。

どうしたら許してもらえるかなと考えていると、奥からひょっこりと新八が顔を出す。

「あ、土方さん、こんにちは」

そして難しい顔をしている銀時に気付き、含み笑いで言ってやる。

「銀さん、本物の土方さんですよ」

前を歩いていた銀時がぴたりと足を止め、振り返った顔は驚きと疑いを足して二で割ったような表情をしていた。

その目はいつも銀時に戻っていて、恐る恐る聞いてきた。

「……土方くん?……」

「…おう…」

土方が『あれ?』と思っているとぎゅーーっと抱き付かれた。

「土方くんんんんんんっ」

「!???」

意味が分からない土方に、新八が目の前で繰り広げられる知人同士の抱擁に少し照れながら説明してくれる。

「すいません、土方さん」

「?? “本物”……って、俺の偽物が出たのか?」

「それが、土方さんに会えなくて寂しかったせいか、お客さんを何度か土方さんと間違えて抱き付いたりして逃げられちゃったんで、“土方さんじゃない”と思い込むようにしてたんです」

「さ、さささ、寂しかったわけじゃないですぅぅ!」

どもりながら銀時は訂正するが、しっかりと抱き付いて離れないこの様子では説得力がない。

「はいはい」と呆れて新八が部屋に入って行ってしまうと、銀時はさらに甘えるように擦り寄ってきた。

仕事の優先の土方に銀時は怒っても仕方ないと思うのに、寂しさすら我慢して待っていてくれる。

先週会ったときに銀時がしてくれたように、土方はなんとなく頭を撫でてみた。

「…ひひ…」

銀時も自分がそうしてやったことを思い出したのか嬉しそうに笑うので、何度も撫でてやりながら、

『ああ、良かった。やっぱり夢だったんだ』

ホッとして嬉しくなる土方だった。




おまけ

布団の中でも全然離れようとしない銀時をそのままに、土方はふと思い出していた。

「………お前………総悟に何か貰ったか?」

「ん?何かって?」

「…飴、とか…」

「………あー……ちょっと前だけど貰ったな」

「…それだ…」

土方が飴を貰ったとき、銀時の様子を窺うようなことを言っていた。

ということは、銀時も土方と同じように不安な夢を見ていたことになる。

「?」

自分をじっと見つめている土方に、銀時が照れながら首を傾げている。

普段はいつもキリッとしてればいいと思える死んだ魚のような目をした顔も、今日は可愛く見えた。

『別れるって言われるのがあんなに辛いなんて……いつの間にこんなに好きになってたんだろうな……』

『俺に会えて笑って抱き合えばコイツも安心するんだろうか……俺と同じように…』

『もう寂しくなるぐらい待たせないようにする……たぶん……それと総悟からは何も貰わないと誓う!』

銀時をぎゅーっと抱き締めて、仕事優先の自分の日々を反省する土方だった。





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別Verらしく、前半は文章をだいたいそのまま使ってみました。楽チン(笑)
本当は別々の話にするはずだったのに、銀さんVerで沖田を出したら繋がってしまったね。
こういう2人がすげー好きです。
両方ちゃんと書けてよかった〜。


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