原作設定(補完)

□その9
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#89  2015/06/28


「…俺たち、もう終わりにしよう…」

「………土方くん?」

「お前、全然真面目に働かねーし、天パだし、スケベだし、マダオだし、甘党だし、天パだし」

「なんで天パだけ2回言った!?」

「もう付き合いきれねーよ。じゃあな」

「土方くぅぅぅんんん!!」



……という夢を見た。

「………ちょ……まじで夢か?なんかすげーリアルだったんですけどぉ……」

布団の上、上体だけ起した銀時は全身にじっとりと汗をかき、居たたまれないほどの焦りに弱々しく呟いた。

正直あの程度のことは言われ慣れている。

言いながらも目は笑っていて『しょうがねーな、こいつは。そんなところも好きだけど』と思っている……んだと、勝手に思い込んできた。

だがさっきの夢は、場所はこの部屋で隊服を着ていて、至極真面目な表情には優しさのかけらも無くて。

「……」

立ち上がり隣の部屋への襖を開けると、神楽がソファでテレビを見ていた。

「おそよーアル」

時計を見ると12時近い。いつも2人を叩き起こす新八が休みなので、平日なのにダラダラしている。

「……神楽ちゃん、昨日の夜さ、うちに居た?」

「居たアル」

「……土方くん、来たりした?」

「来てないアル」

「だよね…」

じゃあやっぱりアレは夢なのだ。

ひとまず安心はしたものの、銀時の心は落ち着かなかった。


そして翌朝。

「銀さん、おはよーござい……あれ、めずらしい、起きてる」

出勤してきた新八がソファに座っている銀時を発見するが、ぐったりと疲れた様子で元気がない。

「どうしたんですか?顔色悪いですよ」

「……別に……」

昨日と同じく夢に現れた土方に、昨日よりさらに酷いことを言われて本気で落ち込んでいることはとても言えない。

『なんですか、コレ、なんなの、コレ。もうずっと会えてないから?普通そういうときは良い夢見せてくれるもんじゃねーの?可愛いとことかエロいとことか、夢に見て会いたくなるのが定番じゃね?…あ…あんなこと言われたら、銀さんのガラスのハートはこなごなですよ……』

思い出すだけで悲しくなってしまう銀時は、あることに気が付いてさらに青ざめる。

『もしかして、あいつの願望が俺に夢を見させてるんじゃ……』

そんな超能力的な現象の可能性を考えるぐらいなら電話をして話をすればいいのに、何度も受話器を上げては下ろすを繰り返すだけのヘタレになってしまっていた。



数日後、とぼとぼと街中を歩いていた銀時は、人混みの間からチラリと土方の姿を見つけて動けなくなってしまう。

それというのも、いつもなら輝いて見える土方が、不機嫌そうに眉間にしわを寄せているからだ。

逃げも隠れも出来ずにいると土方も銀時に気が付き、キッとにらんだかと思うと足早に寄ってきて腕を掴み路地裏に引っ張り込む。

その険しさに本当に別れ話でもされるんじゃないかと焦る銀時。

しかし土方は、銀時の身体を壁に押し付けそのままぎゅーーっと抱きついてきた。

身体をぴたりと付けるとボソボソと呟く。

「……総悟のやつ、いくら言っても仕事さぼりやがって…近藤さんは総悟に甘ぇし、ストーカーばっかで屯所にいねーし……山崎は任務失敗するし……」

そして呆然としている銀時が無反応でいるので、顔をちょっと上げてチラリと見ると拗ねたように言った。

「……ぎゅーってしてくんねーのかよ……」

「…あ、うん……」

銀時が『あれぇ?』と思いながら背中に手を回して抱き締めてやると、土方も満足したようにもう一度身体をくっ付ける。

「……お疲れ…だね……」

「俺はお前に会うの我慢して仕事してんのにあいつら……」

不満爆発しての不機嫌だったらしく、銀時はなんとなく頭を撫でてみた。

「…ふっ……ガキじゃねーよっ…」

そう言いながらも“もっと撫でれ”という感じに擦り寄ってくるので、何度も撫でてやりながら、

『ああ、良かった。やっぱり夢だったんだ』

ホッとして嬉しくなる銀時だった。



おまけ

銀時にハグして気持ちを落ち着かせた土方が屯所に帰って来ると、堂々と昼寝をしている沖田がいた。

「起きろ、何寝てんだ」

そう言っただけで副長室に戻ろうとする土方に、アイマスクを外した沖田が声をかける。

「ずいぶんご機嫌ですねぇ。旦那元気でしたか?」

「……いつもと同じだよ」

「ホントに?何か様子が変だったりしませんでしたか?」

「…?………別に……」

意味が分からないという顔をする土方に、沖田はポケットから飴を取り出して土方に渡した。

「んだ、これ?」

「ビタミンCたっぷりの飴でさぁ。土方さん、顔色と肌荒れが酷いでずぜ。次に旦那に会う前に治しておかないと、嫌われますぜ」

「………そ…そんなことはねーよ………」

そう言いながらも頬に手を当てて確かめた土方は、迂闊にも“総悟から貰った飴”を捨てずにポケットにしまう。

土方の背中を見送って総悟は楽しそうに笑った。




→NEXT 土方篇



==============
おまけなしで終わろうかと思ったんですが、夢のほうにオチがないな、と。
んで、総悟の所為にしてみました。お約束ですしね!

2人のイチャイチャがなんか可愛く書けたんじゃないかと満足です(笑)



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