原作設定(補完)

□その9
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#85  2015/06/24


「じゃあ」

「うん。またな」

玄関でそう別れの言葉を交わし、土方は万事屋を出た。

いつもの態度、変わらぬ素振り。

“土方十四郎らしく”できただろうかと考えながら、階段を下りる。

その足取りは重い。

『今日も引き止めなかったな』

彼とそういう仲になってから、会うのはたいだい万事屋でだった。いつも笑って見送る銀時。

好きだとか付き合おうとか明確な言葉があったわけではないが、少なくとも土方は銀時が好きだったし、銀時もそうなんだと感じる。

だから会っているときはとても幸せなのだが、会う前も、会った後も、土方はえもいわれぬ気持ちになった。

急な仕事で会えなくなったと連絡するときも、久し振りに会えた短い時間が終わって帰るときも、銀時が寂しそうだったことがない。

『仕方ねーよな』、『またな』。そう言って笑う。

放っておいたり置いて行ったりするのは土方の方なのに、いつも置いて行かれている気がした。

誰もいない早朝の道をゆっくり歩きながら、土方はチクチクと痛む胸に眉を寄せる。

こんなことで拗ねたり、こんなに銀時が好きだったり、それを隠しているのが辛い。

そう思ったとき、歩みが止まった。

ぎゅっと目を瞑って手を握り締め、それでも押さえきれずに土方は振り返る。

そして、万事屋の通路の手すりに肘をついている銀時と目が合った。

「!?」

そこに居ると思わなかったので驚く土方に、銀時は嬉しそうに笑い、そのまま手すりに手をかけると2階から道へ飛び降りた。

「ばっ……!」

そんな高さぐらい銀時にはなんてことはないと分かっていても、思わず怒鳴りつけそうになった土方に駆け寄り、

「てめっ、ようやく振り返りやがったなっ。いつもあっさり帰るから全然平気なんだなって銀さん寂しかったんですぅぅ」

そう叫んでぎゅーーっと抱き締めた。

その言葉も触れた肌も熱い。

寂しいけど振り返らなかった土方。

寂しいけど引き止めなかった銀時。

『…なんだ…同じだったんだ…』

嬉しくなった土方は、それでも周りに人がいないことをちゃんと確認してから、銀時を抱き締め返した。





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あれ……思ったよりも膨らまなかった……
ネタメモ的に短いとは思ってたんだけど、短いまま終わってしまったよ。
最後のシーンが書きたいだけの、なんてことない話だからだな(笑)



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