原作設定(補完)

□その9
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#82

作成:2015/06/20
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万事屋の玄関扉をそっと開けて物音もたてずに入ってきたのは泥棒……ではなく土方十四郎だった。

彼が泥棒みたいな真似をするのには理由があり、




「………今、なんて言った?」

「だ〜か〜ら〜っ、今度の金曜日は俺達が付き合って一周年記念日なのですっ。どんどんどん、ぱふっぱふっ」

「………はぁぁぁああぁぁああぁぁ…ぁ……っ」

「息吐ききるほどの溜め息つくことねぇだろうがっ!」

「………」

「無言で『何バカなこと言い出したんだこのバカ』っていう目で見るのも止めてくれませんかっ!!」

「記念日って歳でもねーだろーが」

「………5月5日………10月10日………」

「………」(ギクッ)

「両方ドタキャン………他に記念日がねーんだから仕方ねーだろうがぁぁああ!!!」

「………わ、悪かったよ………」

「だから、一周年記念日、夜に万事屋、お〜けぇ〜?」

「…努力する」




そんなやりとりをして、一周年記念日当日……は昨日。つまりまたドタキャンしてしまったのだ。

さすがに今回は怒っているだろうと、こっそり忍び込んで様子を窺ってみる。

台所から水音と食器のぶつかる音。玄関には銀時の靴しかなかったので、どうやら当人が片付けをしているようだ。

万事屋集合で記念日となれば、きっと手料理に腕を揮ってくれたに違いない。

その光景を思い浮かべて土方がしょんぼりしていると、声がかけられた。

「いつまでコソコソしてんですかコノヤロー」

土方が居るのを分かっていながら、片付けの手も止めないし振り向きもしない銀時。

ドタキャンの言い訳は必要なかった。仕事以外で約束を破るような奴ではないことは、銀時が一番承知しているのだから。

黙って銀時の後ろに立ち、背中に頬をつけ腹に手を回して抱きつくと、

「腹減った」

そう言った土方の新しい切り替えしに、銀時は思わず吹き出してしまう。

「おまっ、他に言うことはねーのか」

「……おはよう?」

「おはようございます。……じゃねぇわっ!」

笑いながらノリツッコミをしてみせる銀時に、怒ってないようだとほっと息をつく。

安心したら本当にお腹が空いてきた。

万事屋で飯を食べるつもりで出かける準備をしている途中に出動させられてしまったからだ。

「……腹減った」

「もう何にも残ってねーですよ」

銀時が素っ気無くそう言うが、炊飯器からは炊き立てのご飯の匂いがするし、ガス台の鍋では味噌汁が出来上がっている。

土方が申し訳なさそうな顔をして現場から直行するのを見越して、朝食を用意してくれたのだろう。

「だけど優しいてめーは、ご飯炊きなおして、俺の好きなモン作ってくれるんだ」

嬉しそうにそう言った土方に、図星の銀時は小さくため息を付きつつ泡だらけの手を水で洗い流した。

「で? 何が食いたいんですかぁ?」

「土方スペシャル」

「自分で好きなだけ盛れやっ!」

腕の振るいようがないリクエストに銀時は怒鳴ってみるが、土方は肩口に頬をのせたままくすくす笑っている。


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