原作設定(補完)

□その8
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#80

作成:2015/06/18
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食堂で遅めの朝食を取り、煙草をふかしながらテレビを見ていた土方。

画面には、アナウンサーが街角で一般人にインタビューをしている。テーマは“あなたの周りのありえない人”。

『友達がぁ、超マヨラーでぇ』

『マヨラーってけっこういるんじゃない?』

『それがぁ、ものすっごいマヨラー。ご飯とマヨネーズ、1対1みたいなぁ』

『うわ、それはすごいねー』

『ご飯もおかずもマヨだらけで真っ黄っきっ!もう一緒に飯食うの気持ちわるぃ、みたいな』

『身体に悪いよって言ってあげればいいのい』

『ムダムダぁ。マヨネーズのすばらしさがわかんないヤツは転んで骨折れろ、とか言ってるし』

「………」

ついさっき真っ黄色の食事を終えた土方が眉間をシワを寄せていると、背後で隊士たちがそそくさと食堂を出て行く気配がする。

触らぬ“鬼”に祟りなし。

“………ちっ………別に気持ち悪がられたって気にしねーよ”

そう思いながら不機嫌な顔でモクモクと煙を作りつつ副長室に戻った土方は、ふと考えてしまう。

“………もしかして、万事屋もそう思ってんのか?”

付き合う前の喧嘩ばかりしていた頃は、口では酷いことを言っていた銀時だが、お互い他人に理解されない味覚の持ち主だったせいか本気の嫌悪を感じたことはなかった。

付き合ってからも、不満そうではあったが土方の身体を心配してるが故、という感じがしてイラついたことはない。

“言っても無駄だから言わないだけか?実は本気で気持ち悪いと思ってるのか!?”

止まらないマイナス思考。



「あれ、土方さん、いらっしゃい」

「おう。………飯まだか?差し入れ買ってきた」

「わあっ、ありがとうございますっ」

新八がまだいるだろう夕方近くを狙ってやってきた土方は、かまぼこ貧乏(板に付いた貧乏)の万事屋では食べられないような高級なお惣菜をいろいろ揃えていた。

万事屋に出入りするようになってだいぶ経つため、夕飯のための飯は炊飯中、一品おかずで寂しい夕食のはずだと予測してきたのだが、的中だったようだ。

「もうすぐご飯は炊けますから、ちょうど良かったです」

「んだぁ、ぱっつぁん、食ってくんですか?おかずないから帰るって言ってませんでしたかぁ?」

リビングのソファでそう毒づいた銀時だったが、分け前が減るというより、土方との時間を邪魔していることへの嫌味だったのだろう。

「ん?そういえばチャイナは?」

「神楽ちゃんはお友達の家にお泊りです。“白飯と塩でも食ってろヨ”とか言ってたけど、こっちのほうが豪華でしたねっ」

「チャイナがいねーんじゃ食いきれねーな」

「大丈夫ですっ!!冷凍してあとでチンして食べますから!」

とことんかまぼこ貧乏な新八だった。

嬉しそうに食事の準備をする新八にまかせて、土方はソファの銀時の隣に座る。

「こんな早い時間に来るなんてどうしたんだ?」

非番の日は万事屋によく来るようになっていた土方。しかし、それはたいがい夜だった。

銀時とイチャイチャしようとしているときに子供たちの顔を見るのは気恥ずかしいせいだ。

「………テレビ見て………」

「お惣菜特集とか?やたら美味そうに見えるんだよなぁ、あれ」

銀時は勝手に解釈して納得したようだが、もちろんそんな番組ではない。

“銀時が俺のマヨネーズ好きをどう思っているのか確かめよう”

そう思って都合の良いタイミングを狙ってやってきたのだ。

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