原作設定(補完)
□その8
11ページ/16ページ
#77
作成:2015/06/12
ファミレスの片隅。
「……うっ……つ……く」
テーブルに突っ伏し肩を震わせて声を漏らす女がいた。
向かいのテーブルや脇を通る人たちが、チラリと視線を向けていく。
それに耐え切れなくなったようで、女の向かいから苛立った声がかけられた。
「……てめー、いい加減にしろよ」
そう冷たく言われ耐え切れなくなった女が、顔を上げ、
「く、くくくっ…ぶははははっ、お、おまっ、ホントおもしれっ」
満面を笑みを浮かべながら腹を抱えている女、坂田銀時♀(通称、銀子)。
向かいの席で眉間にシワを寄せている女、土方十四郎♀(通称、]子)。
さっきまで二人を注目していた人たちは『なんだ、泣いてるんじゃないのか』と興味を失くしたようだ。
「………」
まったくなんでこんなことになったんだ、と始終機嫌の悪い]子をじっくり眺めて、銀子はニヤニヤと笑う。
「蓄積されたマヨ、って、あの身体のどこに蓄積されてたんだろうな」
何を思い出しているのか想像がつくから、]子は無視を決め込む。
見た目は変わっても土方には変わりない。無視されるのは慣れっこなので銀子も気にせず話かけた。
「ま、これでマヨの取りすぎは身体に悪いってわかっただろ。元に戻ったら節制すんだな」
急に説教を始めた銀子を、じろりと睨んで]子も言い返す。
「てめーには言われたくねぇよ。糖分過多ヤロウがっ」
「おまっ、万事屋の経済状況なめんなよ。給料も払えねーのに糖分摂りすぎれるわけねーだろがぁ!」
「いばんなっ、ダメ社長!!」
ギリギリと睨み合い、深い溜め息をついて黙る。いつものやりとりだ。
苛立ちを押さえようと、コーヒーにたっぷりのマヨを入れて飲む]子。
こんな事態になったことへの不安を隠そうとして機嫌の悪くなる土方への対処は、銀時の得意とするところだった。
右手で片肘をつき顎を乗せると、銀子は楽しそうに言った。
「あきらめてねーけど、万が一元に戻れなかったらお前はダイエットだな。じゃねーと腕まわんねぇだろコレ、ぷぷぷ」
確かに銀子の細腕では]子の(良く言えば)豊満なボディを抱き締めることはできなそうだ。
そんな様子を想像して『女相撲みてーだな』と笑う銀子に対し、]子は不機嫌そうな顔のままほんの少し顔を赤らめた。
『別れるって選択肢はねーんだな』
こんな姿になっても嬉しそうに笑って未来を語る銀時が、恥ずかしくて嬉しい土方だった。
ファミレスと出ると、銀時と同じように軽い足取りで前を歩く銀子の背中を見つめながら、]子は思う。
銀子はああ言ったものの、早く元に戻って触れたい触れて欲しい、と。
そんなことを考えた自分に]子が照れていると、足を止めた銀子が振り返り手を差し出した。
「この姿になって良いこと1つあった。女同士なら手ぇ繋いでても変じゃねーよな」
「………変だよ」
「おまっ、普段は絶対繋いでくんないんだから、こんなときぐらいいいんじゃないですかコノヤロー」
「………仕方ねーな」
しぶしぶという顔をしながら]子が手を出すと、銀子がぎゅっと握って嬉しそうに笑う。
初めて繋いだ銀時の手の暖かさに『絶対振り返るんじゃねーぞ』と真っ赤になった顔を隠す土方だった。
==============
ん?『どんな姿になっても土方が好きな銀さんの話』だったはずなのに、
なぜ土方が締める?(笑)
これは漫画で描きたかったんですよ、ホント。
んで、本来の姿Verと豪華二本立てにするつもりだったの。
だからすごい短いですが、けっこう好きな話です。
銀時、銀子、土方、]子と入り乱れてますが、誤字じゃありません(笑)
雰囲気で「銀時のほうが良くね?」と思って書きました。