原作設定(補完)

□その8
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#78

作成:2015/06/15
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「何…では松村、出川らもきゃつらに捕縛されたと。うぬぬ…おのれ真選組め」

ゴソゴソ

「我ら八留虎三兄弟が今行動を起せば」

カサカサ

「的は真選組の頭脳…鬼の副長こと土方十四郎」



「……っあ〜……よっこいせっ……」

軒下から這い出してあちこちに絡みついた蜘蛛の巣を払うと、脇にがっちり挟んでいた暴れる子猫と、懐から取り出した写真とを見比べる。

「うん、間違いねーな。依頼完了〜」

万事屋の坂田銀時は満足げに笑い、飯の種を肩口に抱えて立ち上がった。

「………しかし、めんどうなこと聞いちまったなぁ………」

猫を追いかけて潜り込んだボロイ神社の軒下で、境内に居る先客の話しを聞いてしまったのだ。

ここしばらく因縁の深い真選組、何かと喧嘩をふっかけてくる鬼の副長。

ターゲットが分かっている物騒な密談を聞いてしまった以上、協力するのも市民の義務なのだが……。

街中で偶然会うといつも不機嫌そうな顔を向けてくる男を思い出し、銀時は一気にテンションが下がった。

『ま、あんまり強そうなやつらじゃなかったし、大丈夫でしょぉぉ。天下のお巡りさんだしねっ』

そんなことより、依頼料を貰ってから食べる久し振りの甘味のほうが大事な銀時だった。



数日後。

ここ数日依頼が続いて懐の暖かい銀時が、団子屋の店先で暇そうに5本目の団子をくわえる。

『久し振りにパチンコでも行くか?でもな、最近あの店、出が悪ぃしなぁ』

そんなことを考えながらぼんやりしていると、聞き覚えのある声が聞こえてきた。

「兄者、あそこの定食屋だ」

「そうか。みてろ、土方め。飯時で気を抜いたところを一気に始末してくれる」

視線を向けると、険しい顔をしたムサイ男が三人、数軒先の定食屋に向かっている。

どうやらあの日、境内に居た男達らしい。

「……ちっ……めんどくせーな…………親父ぃ、金ここに置いておくぞ」

銀時はしぶしぶという顔をして男達を追った。

『違うからね。別にあんなヤロウがどうなっても知ったことじゃねぇよ。あいつらが暴れて店に迷惑かかったら嫌だし?あの定食屋の“宇治銀時丼”が食えなくなるのは困るし?それだけだから』



中略(“第七十五訓 似てる二人は喧嘩する”参照)



健康ランドの前で土方はイライラしながら無駄に煙草をふかす。

せっかく久し振りの非番だったのに、行く先行く先でめざわりな天パと顔を合わせて喧嘩になり、止めに急遽仕事になってしまった。

サウナで2人の喧嘩に巻き込まれた男に見覚えがあるなと思い、写メを真選組に送ってみたら割と活動的な攘夷志士・八留虎兄弟の長男だったと判明する。

そのまま隊士を集め、おそらく近くに潜伏しているだろう弟達を捜索させているところだった。

『ったく、あのヤロウに会うとロクなことにならねーなっ』

あの目障りな白髪頭とニヤケタ顔を思い出すとイラつきが増す。

真選組がずっと追いかけ続け今だ捕まえることができない桂と繋がりがあるようだったり、近藤の仇だと割と真剣に挑んでみたらあっさり負けたり。

係わりを持たなければいいだけなのに、あの目立つナリのおかげで嫌でも目に付いてしまうのだ。

「土方さ〜ん」

沖田が携帯片手に気の抜けた声で近づいてきた。

「弟2人見つけたようでさぁ。なんかぐったり疲れた様子ですぐ捕縛できたらしいんで、もうすぐ連れて来ますぜ」

「…そうか…」

思ったよりも早く片付きそうだ。非番を台無しにされたのだから、オチぐらい気分良く終わらせて欲しい。


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