原作設定(補完)

□その7
12ページ/14ページ

#68

作成:2015/06/03




真選組屯所・副長室で、土方は通話の終わった携帯電話片手に不機嫌そうな顔をしていた。

電話の相手は銀時。

いつもはしつこいぐらい電話してきたり、顔を見せたりしてはデートに連れ出そうとするのに、6月になったらさっぱり連絡がなくなった。

それどころか、土方から誘っても断りを入れてくる始末。

「悪ぃ、仕事入ってるわ。梅雨の時期はけっこう忙しいんですよ、雨漏りとか雨漏りとか雨漏りとか…」

ついさっきもそう言われて断られたのだ。



『飽きたのか?』

仕事が忙しくてかまってやらなかったからかなと落ち込んでみたり、仕事が忙しいのは承知の上だろうが怒ってみたり。

せっかく朝から非番なのに、雨の中とぼとぼと歩きながら土方は(内面だけ)忙しなく歩いていた。

「土方さん、こんにちは」

「おう」

通りすがりに声をかけられ素っ気無く返事をしてから、土方は慌てて振り返る。

「メガネっ!?」

「新八です」

ちっとも名前を覚えてくれない土方に一応お約束でそう言ってみるが、土方には別に気になることがあるようで難しい顔で聞かれた。

「お前…仕事中じゃねーのか?」

「雨の日はさっぱりですね〜」

よく見れば新八の両手にはレジ袋、スーパーから出てきたばかりのところだったようだ。

『やっぱり嘘か』

念のために確かめてみたら、

「…じゃあ、大将も暇なんだな?」

「………あ」

新八は『しまった』という顔をした。何か口止めされているのだろう。

銀時の嘘が確定したことで眉間に深いシワを刻んだ土方に、

「帰るんだろ、一緒に行くわ」

憮然とした顔で凄まれたら、新八も諦めるしかなかった。

「……まぁ、銀さんもそろそろ観念すべきですしね」



万事屋に戻り、新八が至って普通に帰宅の声をかけると、

「ただいま〜」

「お〜う」

奥から至って普通に返事を返す銀時。

その普通さに、『ついさっき俺には嘘ついたくせに』と土方が余計機嫌を悪くする。

それを分かっていてわざわざ教えてやる新八は、実は面白がっているのかもしれない。

「銀さん、土方さんが来ましたよ」

「ああっ!?ちょっ…新八っ、てめっ…」

文句を言おうとして銀時はそれどころじゃないことに気付いたのか、言葉途中でどたばたと慌てる足音が聞こえる。

土方が新八を追い抜いてずかずかと中に入ると、“デスクの下に隠れようとしたが椅子が邪魔で頭だけ突っ込んでじたばたする図”と化した銀時の尻が見えた。

「………てめ〜。“頭隠して尻隠さず“だろうが」

「いいんですよ。隠したいのは頭なんで」

「?」

新八が台所に向かいながらそう言うので、土方は部屋に入ると服を掴んで銀時を引っ張り出す。

「やめっ、きゃあぁぁ」

ワザとらしい悲鳴を上げて机の下から引きずり出された銀時は、ある一点を除いてはいつも通り元気そうだった。

土方が目を瞬かせてじっと見つめていたのは、1.8倍増(当社比)した銀時の“もっふぁぁああ”とした銀色の髪。

「………パーマかけたのか?」

「天パなのに!?さらに!?なわけねーだろっ!!」

「銀さん、梅雨になるともふもふしてくるんですよ」

ぷぷぷと笑いながらお茶を持ってくる新八を銀時が睨みつけるが、土方はきょとんとした顔で首を傾げる。

「………それだけか?」

「お前にはわかんねーだろっ、さらっさらへあーのお前にはっ!!」

銀時は怒っているが、土方はほっとしていた。

『飽きられたわけじゃねーんだ。なんだ…』

いつもよりもふもふしている髪を見られるのが恥ずかしいらしい銀時を、心の中で『可愛い』と思っているのがバレたらもっと怒られそうだ。

“いつもより”と思って1つ気が付く土方。

「前は雨の日でもこんなんじゃなかったよな?なんでだ?」

「教えねーよ」

土方の問いに銀時がぷいっと顔を背けて素っ気無く答えるが、新八が教えてくれる。

「梅雨だからですよ。雨が続くとどんどんもふもふしてくるんです」

「し〜ん〜ぱ〜ちぃぃいい」

普段のお返しとでも言うように“土方には内緒”と約束させていたことを次々ばらす新八、ばらされた銀時の間に不穏な空気が流れるが、土方の頭の中は別なことでいっぱいだった。

普段のもふもふ、雨の日のもふもふ、梅雨のもふもふ……。

外出の前に屯所で見たニュースでは、明日の天気も雨だった。

さらにもふもふ倍率ドン。

「………今日泊まって行っていいか?」

「帰れぇぇぇええ!!」

何かを期待して可愛く満面の笑みを浮かべる土方に、銀時は涙を流して怒鳴ってやった。



結局泊まって行った土方と、バレちゃったんだからもういいやと開き直ってイチャイチャした銀時だが、翌朝帰るギリギリまで楽しそうに銀時の髪の毛を撫でている可愛い恋人に複雑な気持ちだった。




==============
定番の“もふもふ銀さん”でした。
天パの人が身近にいないんで分からないんですが、
他の作家さんたちが“雨の日になるともふもふ増量”と書いていたので、
「そうなんだ!」と増量させてみました(笑)
触り心地良さそうな銀さんの天パを狙う土方。可愛すぎる(笑)


次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ