原作設定(補完)
□その7
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#69
作成:2015/06/04
万事屋の和室、久し振りの逢瀬を堪能した銀時がぺらい布団の中で満足げに呟き、
「はぁ……すっげ気持ちいかった……」
「……ん……」
腕の中で答える土方の身体を抱き締めた。恋人同士の甘いまどろみ。
……というのは、銀時の一方的な思い込みだった。
実際のところ、付き合ってるわけでもなく、惚れた腫れたの甘酸っぱさもなく、身体だけを重ねる関係でしかない。
しかし非番の日には会いに来てくれて、同じ布団で眠り甘えたような仕草をしてくれるから、銀時が淡い期待をしてしまうのも仕方がなかった。
だが現状に満足してしていた銀時に、厳しい現実が突きつけられた。
「…他のやつとやっても同じかな」
ポツリとそう呟く土方に、銀時はショックで背中にいや〜な汗をかきながら心の中で叫ぶ。
『なに言い出しちゃってんのこの子。同じなわけないだろうがぁぁあああ!銀さん、どんだけ愛情いっぱいにちゅーから念入りに愛撫してっと思ってんの?野郎の身体なんて固いだけで触り心地最悪だけど、土方だと思えばこそ(以下、自主規制)だろうがぁぁああ!!』
規制がかけられるほどの葛藤にたっぷり時間をかけたが、それを口に出して土方に伝えることはできない。
土方にとって自分は、後腐れなく気持ち良いことができる相手、でしかないのだ。
「………あ〜〜、かもな………」
自分で出した答えに落ち込みながらしょんぼりとそう答える銀時に、
「ん。今度試してみるわ」
納得顔の土方は、追い討ちをかけるようにそんなことを言ったりする。
ショックの上にショックを重ね、可愛さ余って憎さ百倍。
『た、試す?他のやつと?………こ、この野郎ぉぉおおお』
ガツンと何か言ってやりたかったのだが、悩み事に答えが出た土方が寝入ってしまったので言えなくなった。
手段は一つしかない。
次の土方の非番の日。
屯所から私服で出て行く土方を、変装した銀時がこっそり追跡していた。
『あの子、有言実行、思い立ったら即実行のデキる男だからな』
土方の有能さを表現する言葉も、この件に関しては“頭と尻の軽い子”になってしまう。
そして銀時も、そんな子に振り回される“バカな男”と化していたが、素直な気持ちを告げる勇気が出なかったのだから仕方がない。
案の定、土方は新宿でもそういう出会いを求める男が集まる場所にやってきた。
有象無象な輩の中で、ぽつりと一輪だけ咲く花のように可憐な土方(銀時主観)。
電信柱の陰からそれを見つめた銀時が、
『ぐぬぬぬぬ。大丈夫だよ、あいつが他のヤツとやったって嫌いになんかならねーし、俺の愛のテクニックに勝るやつなんて居るわけないし、心配なんかしてねーよ?』
自分にそう言い聞かせつつも、全身から大量の汗が流れ落ちる。
そうしているうちに土方に、背も高くて身体もがっちりむっちりしててアッチも大きそうな男が声をかけてきた。
『だけど……だけどもし相手がすっげぇぇええテクニシャンだったら?』
そう思ったとき、あんなに流れていた汗が一瞬で引いて、足元から冷たいものが這い上がってくる。
そして土方が男に着いて行こうとしているのが見えたとき、我慢とか耐え忍ぶとかそういう気持ちを詰めた袋の紐がぷつんと切れた。
「やっぱり無理ぃぃいいいい!!!」
二人に駆け寄り、驚いている土方の腕を掴んでから男に向かって、
「悪い、これ俺んだからっ!!!」
謹んでお詫びの言葉を述べると、そのまま土方を連れて逃走する銀時だった。
人通りが少ない場所まで来てから、眉間にシワを寄せて仁王立ちする土方の前で、銀時はしゅんとさせられていた。
「なに邪魔してくれてんだ、てめー」
「…すみません…」
「誰が誰のもんだって、コラァ」
「…すみません…」
紐の切れた袋から飛び出してきたのは、“銀時は土方が大好き”という気持ちだったはずなのに、土方はいつものように怒っている。
『普通はもっと照れたり恥らったりするもんじゃね?なにこの子、マジで怒ってんの?完全に脈なくね?』
自問自答でどんどん落ち込んでいく銀時に、ふんっと鼻を鳴らした土方が言った。
「じゃ、行くぞ」
「え?どこに…」
「やる気満々で来たのにこのまま帰らせる気かよ」
「……お供します」
いつも通りな感じで誘ってくる土方。
その“いつも通り”が嬉しい銀時。
ふかふかのベッドでぐっすり寝ている銀時を、ぎゅーーっと抱き締めた土方は満足そうに笑う。
『こいつも俺のこと大好きなんじゃん。よかった』
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エロのないエロの話(笑)
微妙なエロさでごめんなさい。エロじゃなくて下ネタかな……
銀さんも土方もうちにはあまりないキャラになってますが、いつも通りのオチだったでしょ。
銀さんが1人で悶々と悩んでいるのに、土方だけ両想い気分を満喫してるとか、
超萌えます(笑)