原作設定(補完)

□その7
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#67

作成:2015/06/02




ネオンが輝く夜の町、かぶき町。

ある店の店内から、客の女をエスコートしてくる男が1人。

女は身体をくねらせて男の腕に擦り寄り言った。

「じゃあ、またね、トシさん」

「はい、お待ちしてます」

男の浮かべた微笑みに、女は満足そうに笑って帰って行く。


女の姿が見えなくなると、男はがっくりと肩を落とし深い溜め息を着いた。

『なんで俺がこんな真似をしなきゃなんねーんだ』

“シックな色のスーツに身を包み、女性客相手に酒と愛想と笑顔を売るホスト。この男は元真選組副長・土方十四郎だった。”

『いやいやいやいや、辞めてねーからっ、潜入捜査だからっ』

我が身の切なさに土方は、自分で考えたナレーションにノリツッコミをしてしまう。



真選組がずっと追い続けていた過激攘夷党の幹部の1人が、この店に勤める同郷の男を弟のように可愛がっているという噂を入手した。

その男の身辺を洗い見張りを付けていたのだがどうも埒が明かないというで、

「そいつと仲良くなって情報を聞き出すのが手っ取り早い。そのためには同僚になるのが一番でさぁ」

そう言って派手なスーツ片手に、土方にウィンクをかます沖田。

「………俺に行けって言うのか」

「イケメンの土方さんなら採用間違いなしでさぁ」

「……褒めて貰って嬉しいがな、俺は、ダメだろ?攘夷志士共にツラの割れてる俺が潜入したって、ダメだろ?」

怒鳴りたいのを我慢して引きつる笑みを浮かべながら諭す土方に、沖田は楽しそうなマジ笑顔を浮かべた。

「奴らが知ってるのは“鬼の副長”の怖い顔だけでさぁ。ホストになるために、土方さんにはこれから女ウケする笑顔をマスターしてもらいやす」

「なっ……だから、なんで俺だよっ」

「確実に任務を遂行するためには、イケメンで優秀な土方さんが適任でさぁ。それじゃあ、笑ってみろ土方ぁ、お前なら笑えるはずだ土方ぁ」

ちっとも褒められてる気がしなかったが、“確実に任務を遂行するため”と言われたら呑むしかなかった。



『………あいつの口車に乗せられただけのような気がする』

対沖田に関しては学習能力のない自分に苦悩しながら、土方がしぶしぶ店内に戻ろうとすると、

「副長さん、転職でもしたの?」

背後からそうかけられた声は、土方にとってもう一つの苦悩の元。

「!!よ、万事屋っ」

「だよね、そのせっかくのイケメン、あそこにいたんじゃもったいないもんね」

場所がかぶき町だけに見つかったら笑われて面倒だと思っていたのだが、銀時は死んだ魚のような目はそのままに無表情だった。

「ち、違う。目をつけてた攘夷志士とかかわりある奴がホストやってて…」

「へえ。でもゴリさんがおめーにそんな仕事させるとは思えねーけど」

「……近藤さんは知らねー」

「…ゴリさんのために単独行動なんだ」

『なんでコイツに必死に言い訳したり、咎められたり、後ろめたくなったりしてんだ』

感情が落ち着かない自分に土方が苛立っていると、銀時は追い討ちをかけるようなことを言い出す。

「じゃあ、ゴリさんに知られたらまずいよなー」

「……何が言いてー」

「んー?そりゃあ、やっぱり口止め料でしょう?」

「…いくら欲しいんだ」

「いやいや。身体で払ってもらおうかな」

「!?」

にたりと笑った銀時に、今までの無表情は土方を不安にさせるための演出だったことに気付いた。

店内の入り口に書かれている“コスプレホストクラブ”の文字に、銀時の目が煌く。



「いいよっ、マヨ美ちゃん、かわいっ!」

「て、ててて、てめぇぇええ!」

本来、女性客が自分で着る用に準備されたセーラー服を着せられた土方が、真っ赤になって短いスカートの裾を引っ張りながら銀時を睨む。

個室で奢りの酒を飲み、恥じ入る土方を眺めて、銀時は非常にご満悦だ。

予想外の銀時の行動に土方は思わず、

「か、身体で払うって、普通はこう……」




「ほら、多串くん…自分で動いてみなよ」

「……っ……てめー……」

「黙ってて欲しいんでしょ?俺を満足させないと、口が滑っちゃうよ?」

「…くそがっ………はっ……あ……」




「って、なるだろうが!なんでこっちだ!!」

そうツッコんでしまったが、銀時はちょっと顔を赤らめてモジモジする。

「…え、多串くん、そっちのほうが良かったの?」

「違うわぁぁああ!!」

自分で言って慌てて否定する土方。何をどう言っても勝てる気がしない。

さっさと酔わせて“支払い”を済ませて追い出そうと考える土方に、銀時がニヤニヤと笑ってとんでもないことを言い出した。

「次は看護婦もいいな〜」

「はぁ!?」

「早く解決してね。じゃねーと、来週また来るから」

「!!?」


にたりとニヤニヤの裏にずっと隠していたが、銀時は実はかなり怒っていた。

女相手に愛想を振りまく土方も、本当はそんなことしたくないくせに近藤のためにならやれる土方も、気に入らないのだ。



斯くして“来訪予告”前日に事件は解決。

「ちっ」

真選組のお手柄報道に、銀時は少し残念だと舌打ちするのだった。





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女装有りエロ有りホスト有り、盛りだくさんだったでしょ?(笑)
漫画で描きたかった(笑)
付き合ってない感じの微妙な話になってるけど…どっちでもいいです。


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