原作設定(補完)
□その6
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#55
作成:2015/05/19
商店街の福引所。
銀時は福引券を一枚握り締め、商品を一覧を食い入るように見つめていた。
彼の狙いは“二等 チョコパフェ1年分”。
「次の方どうぞ〜。はい一回ね〜」
深呼吸してからガラガラ回すタイプの福引器のレバーを握り締め、精神統一。
係りの人も、次の人も『早くしてくんないかな〜』と思っていたが、銀時にとっては1年分の糖分をかけた真剣勝負である。
『二等、二等!当たれ〜〜〜っ!』
念じてレバーを回し小さい穴から転がり出た玉を見つめ、その途端に係りの人がハンドベルをけたたましく鳴らした。
「大当たり〜!!特賞〜、出ました〜!!」
「へ?」
「温泉二泊三日ペア旅行券です!おめでとうございますっ!!」
「…まじでか…」
公園。
銀時は旅行クーポン券を握り締め、公衆電話を食い入るように見つめていた。
天を仰いだり、足元の土を蹴ったり、かれこれ20分ぐらいこうしている。
大きく深呼吸をすると、ようやく受話器を取った。
“はい、土方”
「俺、だけど」
“なんだ?”
「…あのさ、えっと……その……」
“なんだよ”
「あ〜〜っ……あの、さ。福引で温泉旅行当てたんだけど…一緒に行かねー?」
“温泉?”
「10月の9日なんだけど……」
“…………分かった”
「別に無理にとは………あ?今“分かった”って?」
“行く”
「………ええええぇぇぇ!?」
“なんだ? 断ったほうがいいのか?”
「いやいやいやいやっ!まじでか!?」
“絶対じゃねーぞ。ダメんなるかもしんねー”
「うん!何にもなかったらな!」
電話を切ったあと、両手を上に上げて「やったー!!」と喜ぶ銀時だった。
それを、公園の外、木の隙間から土方は見ていた。
実は、商店街からずっと銀時を追いかけていたのだ。
福引所で真剣な顔をしている銀時に、
『パフェ狙いか?…んなマジになって…貧乏って可哀想』
などと失礼なことを考えながら、どうせ外れてガッカリするだろうから、その後に声をかけてパフェでも奢ってやろうかと思っていた。
そうしたら特賞の大当たり。
最初は喜んでいたのに手続きを済ませた後から、福引前とは違う感じに真剣な顔をして悩み始めた。
“ペア”となれば自分に連絡してくるだろう、と思える程度にはうぬぼれていた土方は、悩んでいる様子に少なからずショックを受ける。
『なんだよ…他に誰か誘いたい奴でもいるのか?』
悩みながら公園に来て、さらに公衆電話の前に立つ銀時……を、ずっと追いかけて見つめていた土方。
決心して受話器を取った銀時に、土方は一瞬不安になったが、同時にポケットの携帯電話(バイブ)が鳴りだす。
『…あ?…』
公衆電話と表示されていたからすぐに通話を押した。
「はい、土方」
“俺、だけど”
銀時をチラリと見て、電話をかけてきてくれたことにホッとし、なぜ悩んでいたのか疑問に思ったが、
“10月の9日なんだけど……”
そう言われて理解した。
『…ああ……あいつの誕生日。だから言うのためらってたのか……バーカっ……』
「分かった」
大喜びしている銀時を見て、土方は小さく笑い背中を向けた。
真選組副長の土方にとって3日間の休みを取るのはけっこう厳しいが、頑張って取ってやろうと思う。
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短っ。でもなんか可愛くね?(笑)
本当はもうちょっと土方が色々考えてる話だったんだけど、
なんか銀さんが嬉しそうなだけで良いな、と縮めました。