原作設定(補完)
□その6
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#58
作成:2015/05/22
深夜の真選組屯所。
部屋の明かりは消えていてしんと静まり返っているが、庭にも廊下にも隊士が配置されていてどこか物々しい。
土方十四郎も副長室でろうそくの炎で照らされた机をじっと見つめていた。
時計の針の音がやけに大きく聞こえ、時間が経つのがゆっくりと感じられる。
庭で人の気配がしたが、隊士同士が定時の連絡を取り合うためだったようで話し声が聞こえた。
小さく息を付いたとき、背後にふわりと流れる空気を感じたと思った瞬間、首を横に冷たいモノが走る。
触れた指先が赤く染まっていた。
「!……っ……」
「は〜い、土方くん、死亡〜」
のんきな声でそう言った銀時の手には、赤いインクが付けられた筆が握られていて、土方の指についたものはどうやらソレらしい。
「…てめー…早すぎんだろーがっ。ちゃんと回ってきたのかっ」
「ほれ」
銀時から手渡された“通行証”と書かれた紙には、屯所玄関の山崎、食堂の沖田、局長室の近藤のサインが入っている。
偽装されたものではないようだし、第一、コイツなら可能だとは思っていた。
悔しそうな顔で通行証を握り締め、問いかける。
「………何人死んだ?」
「土方くんだけ」
「…見つかってねーのか?」
「うん」
「その格好で?」
「着替えなんか持ってきてないし当然でしょ」
いつもの洋服に白い着流し、銀髪の頭。
暗闇でもかなり目立つ格好のまま平然と答えた銀時に、土方は庭への障子をバーンと開けると笛を思い切り吹いた。
屯所中に鳴り響いた笛の音に、あちこちに散らばっていた隊士たちはぎょっとし慌てて副長室の前に集合する。
「お〜ま〜え〜ら〜っ!!」
お怒りの副長の隣でピラピラと手を振る銀時の姿を見て、彼らは自分達の失態を知るのだった。
実は、これは訓練だった。
特殊警察としての真選組で何か特別なことをしようということになり、屯所の警備、侵入者への対応を、新人隊員中心の実技として企画されたものだ。
どこかの入り口から侵入し、チェックポイントを通って副長室まで向かう侵入者を、発見、捕獲しなくてはならない。
侵入者には得物として筆を持たせ、それで“致命傷”を与えられたら死亡として離脱する。
その侵入者役として任命されたのが万事屋の坂田銀時だ。
当初、侵入者の目的地は当然真選組局長の近藤のところだったのだが、
「それじゃやる気が出ないなぁ」
と言うので、露骨に嫌な顔をして見せたのだが無駄に終わった副長土方のところに変更された。
そして時間の予告もなしにひっそりと始まった訓練は、侵入者に見張りの隊士たちに発見されることなくチェックポイントをクリアされ、副長の首を切られるという形で終了したのだった。
「こんな目立つ格好してる奴に屯所内をうろつき回られても発見すらできねーとか、お前らの目は節穴かぁぁああ!!!」
「そういう土方さんだって殺られてんじゃねーですかぃ」
土方の首に残った赤いインクに沖田がそうツッコむが、隊士たちは『これ以上副長を怒らせるのは止めてくださいぃぃ』と内心懇願するほど、土方の怒りは凄まじい。
土方の逆鱗、銀時の健闘には理由があった。
「え〜、5日もやんの?メンドくさ〜い」
土方と2人で訓練のスケジュール、計画などを話し合う席で、銀時は予定一覧を見てうんざりと声を上げる。
無視して話を続けようとする土方に、テーブルに両肘をついて銀時がおねだりポーズ。
「何かご褒美が欲しいなぁ」
「………依頼料UPなら近藤さんに……」
「銀さんのやる気スイッチはそんなもんじゃ入らないですぅ」
「……じゃあ、何がいいんだ」
しぶしぶ聞いてやる土方に、銀時はにやりと笑ってとんでもないことを言い出す。
「土方のところまで辿りつけたら、初日のご褒美に……口でやって欲しいなぁ」
その意味を尋ねるほどウブでもカマトトでもないし、銀時との関係も浅いものではない土方は顔を真っ赤にして怒鳴った。
「!!!…んで、それが初日だよ!そんなもん普通は最後に………あ…」
「んじゃ、ソレは最後でいいよ♪」
土方の失言に、銀時は嬉々として承諾。
初日はひざまくら、2日目にバレンタインチョコ、3日目に土方からちゅー、4日目に一緒にお風呂、5日目にフ○ラ。
そんな馬鹿な褒美があるかと激怒していいと思うのだが、最初に出鼻を挫かれてしまったのと、隊士たちを信用したいという気持ちがあったので全て呑んでしまった。
常に死んだ魚のような目をしたちゃらんぽらん男でもその実力は認めているから、たぶん2、3日は負け戦になる覚悟はしていた。
覚悟はしていたが……。
「じゃあね、明日もよろしく〜」
そう言って帰っていった銀時の笑顔ときたら、眩しくて太陽すらも目を逸らしてしまうほどだ。
実に恐ろしきは銀時の実力と欲望なり。
「お前ら!俺のために頑張れぇぇぇぇえええ!!」
2人の秘密の契約を知らない隊士たちに懇願する土方だった。
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アホでちょいエロな話……アホなだけ?(笑)
結果どうなったかは、ご想像におまかせします。
最初の銀さんが出てくるまでの演出を漫画で描きたかった。
……絶対無理だけど。