原作設定(補完)
□その6
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#59
作成:2015/05/23
かぶき町の路地裏で銀時は動けなくなっていた。
すぐ横には大通りがある細い路地の、建物の壁にぺたりと背中を付け眉間に皺を寄せている。
つい少し前、大通りを歩いていたら見慣れた制服が集まっているのが見えたので、当然居るだろう奴の姿を探した。
何があったのかは分からないが騒ぎは収まりつつあるのだろう。
山崎と並んで暇そうにしている土方を見つけ、ちょっと驚かせてやろうなんて考えたのが悪かった。
路地裏をぐるっと回って二人の居る場所のすぐ横の道へ忍び寄ったとき、小さい声の会話が聞こえてきた。
「え、明日非番なのにこのあと出かけないんですか?」
「…ああ…」
その内容に、子供っぽいワクワク感はすぐに消えてしまった。
意味が理解できたからだったが、更に二人はそれを決定付けてくれる。
「久し振りの休みですよね。……旦那待ってるんじゃないんですか?」
「……いいんだよ。あいつは俺じゃなくても……誰だって」
土方の怒ってるとも寂しがってるとも言えるような呟きは、山崎を少し赤面させ、銀時を苛立たせた。
『何ですか、今の。まるで銀さんが土方くんを好きじゃねーみてーじゃん』
自分のいないところでそんな愚痴を言われているのが納得できず、銀時は大通りに姿を見せると内心を隠さない声で言った。
「ひ〜じか〜たく〜ん。ちょっとお時間よろしいですかね」
その様子に銀時が何を言いたいのか察したらしい土方は、誤魔化す必要がないと判断してそっぽを向く。
「話すことはねー」
「お前がなくて俺にはあるんですぅ。ジミー、こいつもういいんだろっ、借りてくからっ」
「は、はいっ」
「はい、じゃねぇぇ!おいっ、離せっ!!」
「もちろんですよ、ちゃんと話しましょう」
「そっちの“はなし”じゃ……おいっ!!」
ずるずると銀時に引っ張られている土方を見つめ、山崎は小さく笑う。
「副長は堅いからなぁ…よく見ればバレバレなのに」
人気のない公園の片隅に連れて来られ、険しい顔の銀時を前に知らん振りの土方。
土方としては“怒ってんのは俺だし”という気持ちを態度で表しているのだが、銀時には“うわっ、このツン、可愛いぃぃ!”という風に見えるので無駄な虚勢だ。
銀時は頑張って怖い顔のまま問い詰める。
「で?さっきのは何ですか?」
「何がだよ」
「俺が“誰でもいい”って、何でそんなこと思っちゃったわけ?」
そんな誤解をされるような心当たりは銀時にはなかった。
多忙でころころ予定が変わる土方の休みに、幸い(?)時間の融通が利く(物は言いよう)銀時が全て合わせてきた。
付き合い始めた頃は昼間にデートもしたのだが、最近は土方からの電話が夜に多くなってしまったため、他の奴らと飲みに行くこともしないで待機状態。
外で会って飲んでホテル探しては手間が面倒かと、たいがい万事屋で即イチャイチャがパターンになっていたな、とは思う。
『そりゃあ当初に比べれば甘酸っぱい雰囲気はなくなったかもしんねーが、お疲れの副長さんを心身ともに癒してやろうと全力で誠心誠意込めて気持ち良くしてやろうと頑張ってんだろうがっ!それのどこが不満じゃぁぁああ!!』
銀時がいろいろ思案中で沈黙しているのが耐えられなくなったのか、土方は眉を寄せて吐き捨てた。
「おめーは会ってもいつも…ヤルばっかりじゃねーか。そんなの俺じゃなくていいだろ」
頑張りすぎてしまったらしい。
「…ぐっ…」
銀時が言葉に詰まったのを、土方は肯定の意味と取ったようだ。
やっぱりな、という表情で顔を背けたとき、銀時が叫ぶ。
「…だ……誰のせいだと思ってんですかコノヤローっ!!」
やけくそなその声に、逆ギレかと文句を言ってやろうと思った土方は、顔を真っ赤にしている銀時に言葉を失くす。
しまった、と思ったのに銀時はそのまま一気に心の内をぶちまけた。。
「俺は、お前の顔見て、手でも繋いでいられたらそんでいいんだよっ、ホントはっ!」
言いたくないのに止まらない。
「なのにお前は、見ると“見るな”って言うし(デートなのに)、手繋いだら嫌がるし(デートなのに)、そしたらスルしかねぇじゃんんんん!!(見放題、触り放題)」
全部言っちまった、とがっくりうな垂れる銀時に、土方も少しもじもじしながらもう一つ聞きたかったことを口にした。
「……でもおめー、俺が帰るとき素っ気ねーだろーが…」
「帰る」と言っても「あっそ。じゃーね」と言って見送りもしない銀時も不満だったらしい。
重箱の隅まで穿り返そうとする土方の問いかけに、銀時は苦虫を噛み潰したような顔で答える。もう隠していても意味が無い。
「…引き止めたらお前が困るだろ。それに、見送ったりしたら寂しくなんだろーがっ!」
土方は、1人で寂しがっている銀時の姿を想像して、正直なところを呟いてやると、
「…お前………キモい…」
「お前が言わせたんだぁぁああ!!」
自分でも分かっているのか真っ赤になって叫ぶ銀時は、2人の関係が始まった頃の銀時でなんだか嬉しくなった。
不満だったり照れくさかったり、隠してきた気持ちの裏側にあったのはすべて愛情だったようだ。
辺りに人がいないのを確認してから、ふて腐れる銀時の手を取り顔を見合わせる。
「あとは?何がしてーんだ」
銀時が驚いて照れて嬉しそうに笑った顔が可愛かったので、たまには青臭い恋人同士をやるのも悪くないと思う土方だった。
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…うちの銀さんこんなんばっかりですみません。超ヘタレ。
ヘタレ攻好きなので、私はニヤニヤですよ(笑)
もっとヘタレな会話がこの後にも続いたんですが……
なんとなく繋げなくてカットしてしまいました。
思いついたらくっつけてみます。