原作設定(補完)
□その5
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#50
作成:2015/05/09
1 / 11「明日から出張?」
煙草を吸う土方を見上げ、布団に寝転んだまま銀時は不機嫌そうに聞く。
その理由を知っているので土方は先に宣言した。
「俺一人だから」
近藤と一緒じゃないと知って眉間の皺は取れたものの、近くにいないことに変わりはない。近くにいるからといってそうそう会えはしないのだが。
「いつまで?」
「……二週間」
「げ、そんなに……ん?………10日じゃねーか」
カレンダーを見て皺が戻ってきた。今日は9月27日、翌10月10日にはご丁寧に自らの手で書いた丸がついてる。
やっぱり気付いたかと、思いながら土方はなんでもないような顔をしてみせた。
「たぶん前日には戻れる。大丈夫だ」
「去年も一昨年も似たようなこと言ってませんでしたかぁ?」
「間に合うように努力する」
土方が本気でそう言ってくれてるのは分かっているが、ピロートークとして拗ねておきたい銀時。
土方の腰に腕を回し、擦り寄りながら言った。
「二度あることは三度あるって言うしなぁ」
「三度目の正直もあるだろうが」
「……分かった。間に合わなかったら2倍な」
「あ?」
「1日につき2倍。2日遅れたら3倍だから」
「……何をだ」
「プレゼントのお返し」
「お返しって、てめーが俺に何をくれたよ」
常に金欠の銀時は、行事ごとに一緒にいたがるが、まともなプレゼントを用意してくれたことがない。あるのはいつも…
「じっくりねっとり気持ち良くしてやっただろうが、3回も」
にや〜っと笑った銀時に、5月の誕生日にどんな目にあったのかを思い出した土方は、真っ赤になって枕を顔面に押し付けてやった。
日付が変わる前に、屯所に帰る土方を見送った。
急な出張でバタバタしてるはずなのに、わざわざ会いに来てくれたに違いない。
「じゃあな」
「あれ、いってらっしゃいのちゅーは?」
「あほか」
そう言われるとわかってて銀時はいつもふざけたことを言う。だから玄関扉を開け、そのまま振り返り襟を引いて強引に唇を重ねた。
「……いってくる」
「いってらっしゃい」
結局、銀時の嬉しそうに笑う顔がみたくて土方も誘いに乗ってしまう。
今の感触と土方の悔しそうな顔だけで2週間待てそうだ。
そんな些細な幸せを打ち破ったのは、お昼前にかかってきた電話だった。
朝から仕事のない無駄な時間を過ごしていた銀時は、鳴り響いた電話に『依頼か?』と明るく対応するが、
「旦那、俺でさぁ」
と聞き覚えのありすぎる声にすぐ営業用ボイスを切り替える。
「はいはい。どした?」
「土方さんいますか?」
「あ?いねーよ」
「いるんでしょ、白状してくだせぇ」
「だからいねーって」
「…旦那、怒らねーから……」
「沖田君?」
急に途切れた声に問いかけると、次に受話器の向こうから聞こえてきたのは近藤の声だった。
「万事屋か?本当にトシはそこにいねーか?」
「なんだよ、あんたまで。出張だって昨日のうちに帰ったよ。……帰ってねーのか?」
「………ニュース見たか?」
「あ?」
テレビを付けると、バラエティー番組を放送してるはずの局の画面に、神妙な顔をしたアナウンサーが写っていた。
『…乗客130名を乗せた宇宙船は出航から15分後爆発したのが確認されました…この宇宙船には幕府関係者が乗船していたため、幕府要人を狙ったテロ行為だという見方が……』
宇宙船事故のニュース。
銀時の心臓が大きく跳ねた。なんで近藤がこれを見せたのか。
銀時の様子を察してか、近藤が落ち着いた声で言った。
「それにトシが乗ってた」
「……は……何を……いや、でも、あいつ午後の船だって言ってたぞ」
「……早い時間の船に空席があったからって出かけたんだ。“10日までに帰ってきたい”と言ってな」
「……っ……」
『…脱出は確認されず、生存は絶望的と思われます…』
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