原作設定(補完)

□その5
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#47

作成:2015/05/06




夜、少し遅い時間に土方は万事屋へやってきた。

前もって連絡してあったのでチャイムを鳴らさず黙って中に入ると、テレビの音がいつもより遠くで聞こえる。

そんなときは和室でコタツに入ってるはずだ。

上着とマフラーを外してソファーにかけ和室へ向かうと、コタツから振り返った銀時が迎えてくれる。

「いらっしゃ〜い」

コタツに入ると不精になることを土方は身を持って知っていたので、玄関まで出迎えないことに文句は言わない。

テーブルに盛られたものを見つめながら土方もコタツに入った。

「なんだ、みかんか?」

疑問符が付いていたのはサイズがすごく小さかったからだ。

ピンポン玉ぐらいの橙色の実が山になっている。

「ババアが客からごっさ貰ったの押し付けられた。小さいけど甘くて美味いんだわ、これが」

そう言って丁度剥き終わったみかんを土方に渡した。

屯所ではあまり食べる機会がないため好きとも言えないが、せっかくなので受け取る。

実の一つづつでは小さすぎるので、半分に割ってまとめて口に入れると、酸味がまったくなくて甘さだけが広がる。

「な?うめーだろ」

「うん」

「早く食わないと痛むっつーから、好きなだけ食え」

土方の前にごろごろっと転がして寄越したので、それを手に取った。

外の皮も柔らかく薄くてすぐに剥けるが、その小ささになんとなく笑ってしまう。

小さくてもちゃんと白い筋が残っているのでそれをちまちま取り、食べたらやっぱり美味しいが二口でなくなってしまった。

もう一つ手に取ろうとして、ふと銀時の手元に目をやる。

ごつい手が器用にみかんの皮を剥いて白い筋を取るのを見つめ、終わったところで、

「ん」

と手を出してみたら、銀時はそれを手に乗せてくれた。

二口で食べる。美味い。

銀時がまた剥く。

土方が手を出す。

銀時渡す。

土方食べる。

銀時剥く。

土方手を出す。

銀時渡す。

土方食べる。

……



「自分で剥いて食えやぁぁ!椀子そばじゃねーんだよっ」

さすがに怒られた。

仕方ないので自分で剥き始めるが、銀時が剥いているみかんをチラリと見て、自分のみかんを見る。

「?」

同じみかんのはずなのに、なぜか違って見えて首を傾げる。

もう一度銀時を見たら丁度剥き終わったところだった。

「……テレビ他になんかやってないのか?」

「ん?」

土方に言われ、銀時はリモコンでチャンネルを変えてはみるが、見てない連続ドラマとかニュースだったので元のチャンネルに戻す。

「これでいいんじゃね?ほかのは見てな……」

答えてるのに興味なさそうな土方に、銀時は自分の前に置いてあるみかんを見たら、剥き終わってたはずなのに筋が残っていた。

土方を見ると、きれいに剥いたみかんを、四等分にしてゆっくり食べている。

『このやろう』

「……ひ〜じ〜か〜た〜く〜ん?」

銀時が怒ってるようなので、

「……だって……お前が剥いてるやつのほうが美味そうだし……」

と、正直に答えたのだが、銀時にはちょっと拗ねてるデレ仕草に見えたようだ。

『か、可愛っ』

所詮土方にメロメロのヘタレマダオな銀時なので、黙って次のみかんを剥いてやる。

が、素直に思い通りになるのは悔しいので、剥いたみかんを半分に割り、

「あ〜ん」

と土方の口元に差し出してみた。

いつもなら無視されるか照れ隠しに睨まれたりするのだが、よほどみかんが気に入ったのか、土方はそれをぱくりと食べた。

『………可愛いぃぃいいい!!』

悶絶する銀時。

結局その日、土方が飽きるまで“みかん剥きまっすぃ〜ん”になる銀時だった。





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季節外れのみかんネタ。
コタツでみかんはド定番。
でも土方が可愛いので許してね?
……銀さんが、可愛いと言ってるんだから、可愛いの!(笑)
ホントはオチに、神楽がコタツの向こう側にいて、
バカップルがうざがられる、はずだった。
でも土方お泊まりだからね、神楽居ないね!

私もみかんは小さいのが好きです。
でも高くなったよね…みかん…


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