原作設定(補完)

□その4
4ページ/10ページ

♯34

作成:2015/04/27




恒例の花見を終えたころから、ずっと忙しくて銀時と会えないでいた土方。

電話ぐらい、と何度も思ったのだが、普段やらないことをやるのには勇気がいる。我慢の限界になったら銀時から掛けてくるだろうと油断してたら、いつの間にか4月末になっていた。

そういえば誕生日を確認する連絡もない。毎年仕事で忙しいと分かっていても、休めないかとしつこくねだってくるのに。

さすがに不安になって、電話をしてみた。時間を置いて何度かかけてみたのに出ない。

万事屋も時間不規則な仕事だが一日出ないとなると心配になり、仕事の合間に訪ねてみた。やっぱり留守だ。

万事屋の大家でもある下のスナックが準備のために開いていたので聞いてみると、

「知り合いから報酬の良い仕事を紹介されたとかでずっと宇宙に行ってるよ」

そう言われ、とりあえず中で餓死してるということはないようだ。

だが、長期で留守にするのに連絡もないなんて思わなかった。……呆れられたかな、と急に不安と寂しさで心がいっぱいになった気がする。



5月5日。

誕生日。近藤たちに屯所で小さな酒宴を開いてもらったが、土方の気分は晴れないままだった。

会えなくても毎年電話で祝ってくれた銀時。もう夜も遅いが、それもなかった。

とぼとぼと風呂から戻ってくると、襖を閉めたとたんに横から伸びてきた腕に抱き締められる。

「多串くんっ、遅くなってごめんっ!!」

銀時の腕、声だった。

「ごめん、ホントごめんっ。連絡もできなくてマジ悪かったっ」

『なんでこいつが謝ってるんだろう…謝るのは俺のほうなのに…』

そう思ったら反応できないでいる土方に、銀時が首をかしげる。

「多串くん?」

「……何……してたんだ……」

「知り合いにすげー報酬の良い仕事紹介されたんだけどよ、多串くんの誕生日と被るからいやだって言ったら……」


++

「一ヶ月?無理っ、多串くんの誕生日とカブるじゃんっ!」

「陸奥さんが報酬弾んでくれるって言ってるんですよっ。僕らの給料と土方さんの誕生日、どっちが大切なんですか!?」

「誕生日!!」

「わかってたけどなっ!!神楽ちゃんっ!!」

「はいヨ〜」

「うわぁっ!離せっ!い〜や〜だ〜〜っ!!」

++



「……というわけで、隙をみてようやく逃げ出してきた。電話もさせねーとか、悪魔だろ、あいつら。金があったって多串くんがいなきゃ意味ねーっての」

「……」

連絡がなかった理由は、分かってみればいつもどおりの彼ららしいものだ。

この一週間、勝手に解釈して、勝手に落ち込んで……そのおかげで、こんなに会いたかったと、好きなんだと思い知らされた。

「? 何?銀さんいなくて寂しかった?」

多串くんは仕事に夢中になると俺のことなんて思い出さないんだろう、そう思っている銀時は、冗談のつもりでそう言った。

反論されても内心ちょっとは寂しがってくれてるといいな、ぐらいのつもりだったのに、

「……うん……」

銀時が見たことも聞いたこともない言葉と表情で土方は答えてくれた。

『ぎゃぁぁぁあああ!!何、この子っ、かわいすぎるんですけどぉぉおお!!』

辛抱たまらんとぎゅーっと抱き締めたら、風呂上りの良い匂いがしてもう一人の銀さんのリミットゲージも限界を超えてしまった。

「……あのさ……ここで続きしちゃダメなら、場所移動しませんか?」




翌朝、神楽たちが帰ってくる心配のない万事屋で、屯所に戻る時間ぎりぎりまでのんびり過ごした。

「いつ戻るんだ?」

「戻らねー。どうせあと一週間ぐらいだし、迎えにくる金がもったいねーから来ねーだろーし」

と言ってたら、玄関のチャイムが鳴り『え!?来たの!?』とドキッとするが、日付時間指定の郵便配達だった。

あて先には“万事屋様方、土方十四郎様”と書かれている。差出人は新八だ。

『誕生日おめでとうございます。プレゼントは届いてると思いますが、それは1日限りのレンタル品になりますので、速やかに返却願います』

という手紙と、宇宙船チケットが同封されてた。消印は一週間前で、銀時が逃げ出す前に発送されていたことになる。

「……見破られてたみてーだぞ」

「ぐぬぬぬぬっ」

一度屯所に戻った土方が、こっそりターミナルまで送ってくれて、銀時は再び仕事に出かけた。




3日後。

「銀さんっ!土方さんから電話だそうです!」

「えっ!?」

宇宙に戻り、いろんな意味でリフレッシュできた銀時がしぶしぶ仕事に励んでいると新八がそう知らせてきた。

先日の手紙には一応連絡先を書いておいたのでそれにかけてきたようなのだが、何かあったのかと銀時だけでなく新八も心配そうにしている。

「多串くん!?どうしたっ?」

「何が?」

「え?…何かあったから電話してきたんじゃねーの?」

「……別に……何もねーけど……電話しちゃわりーのかよ……」

そして採りとめないことを10分ぐらい話して電話は切れた。

「…どうしちゃったんですか、土方さん」

会話の様子から、特になにも用事がないのに土方が電話をかけてきた、というのは分かったがあまりにもらしくない。

新八の問いに、銀時は少し頬を赤くしながら、

「どっかのネジが外れちゃったみたいだね」

と嬉しそうに答えた。





==============
うーん…ありきたり。いつもですけど。




次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ